第16章
気が付けば二人で抱き合う様に寝ていた。勿論、裸ですが(笑)
今は何時くらいなんだろ?
時間も解らないぐらい『愛し合った』のでまだウトウトしてしまう。
それにしても土方さんは私と初めて身を重ねた仲なのに、ずっと前から付き合ってる感じがした。
長い髪がいつもは結んでいるけど結んでいない。そんな土方さんもカッコ良くて見とれてしまう。
「おはよう、疲れてないか?」
えっ起こしてしまった?
「うん……少し眠ったから大丈夫かな」
お互い顔を見合わせ何故か笑ってしまった。自然で居れる。凄く落ち着く。
「俺だけの愛美……。」
髪を撫でながら土方さんは私に確認するように言った。
「私はトシさんしか考えられない……。心も身体も全部……。」
「なぁ愛美。俺と恋仲になってくれ」
「……はい。」
そんな言葉を聞けて涙がポロポロと出てきた。
「泣くなよ……。こっちに来いよ」
ぎゅっと安心できるように優しく抱き締めてくれた。
「嬉しくて……トシさんの彼女になったとか幸せ過ぎて……」
暫く彼の胸で泣いてしまった。
「愛美、俺が……」
どうしたんだろ?何を言いかけたのか何となくわかった。
「消えたくない……。ここにずっと居たい。トシさんと一緒に居たい。」
私から切り出した。お互いに目が合って同じ事を思ってるんだろなって……。
そう思うと寂しくなる。
「でも、もし来世と言うものがあるなら俺、絶対に愛美を探してみせる。」
また泣きそうな言葉を……。
私は小さな小指を出して
「指切り……ね」
そう言って約束をした。
巡り会うとか本当にあるなら信じたい。
そんなおとぎ話みたいな事ってあるのかな?
二人でクスッと笑い幸せな時間が過ぎた。
タイムスリップも運命だったのかもしれない。この二人は会わなくてはいけなかったのかもしれない。
「もうボチボチ着物を着ないとまた誰か来るぞ(笑)」
「うん。あっ!」
しまった!トシさんに背中を向けてしまった!タトゥーが見られてしまった!
と言っても英語なので読めないだろな
「メリケンの文字なのか?」
意外にも特に普通に聞かれ内心ホッとした。
「そう、何て書いてるかナイショ」
「教えろよ!俺、本当は……」
あっそうか、天皇派と幕府派は考えが違うから幕府派は鎖国の考えだから英語は使えないのかな?
「意味は『天使の笑顔』でエンジェルスマイル」
「天使の笑顔か……。愛美そのものだな」
花魁の姉さん達にも墨の入っている人もいるのかな?
「えんじぇるすまいる」
なんか土方さんが少し可愛く見えた。
本当はいろんな言葉とか教えてあげたくても『新撰組』として歴史に消えてしまったら大変なので、これ以上は言わなかった。
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夕食は私の足を気遣ってもらい部屋で食事をとることにした。
齋藤さんが膳を持って来てくれ
「愛美さん、ずいぶん腫れてますね……。気がきかなくてすみません。」
「齋藤さんが謝る事ないですよ。私の不注意だったし……それに食事も作ってくれてありがとうございます」
チラッと齋藤さんが私を見て急いで部屋から出て行った。
「???」
何でなんだろ?
「俺が付けた首筋に気付いたな♪」
えっ!マジ?キスマークですか?
もう土方さんもコッソリ意地悪して子供っぽい(笑)
今まで『鬼三』のイメージから非番の日に土方さんの全てを知ったら仕事の時は『鬼』で居なくてはいけない事とか今日は色々と土方さんを知った。
でも明日からは『鬼』に戻るのかと思うと少しがっかりな気分になった。
「いただきます」
今日は齋藤さんの夕食で警戒しながら一口パクっと『ロシアンルーレット』の気分で食べてみた。
里芋とイカの煮付け……。
意外にも美味しかった。
大根の味噌田楽がけ、これも普通に味付けされていた。
「なんか自分で食事を作るより作って貰った方が美味しいね♪」
「今日は齋藤が作った筈だったけど……」
「たぶん、井上さんが私が作ってるレシピを伝授したんじゃないかな?」
「なぁ『れしぴ』って意味は?」
「レシピ?料理を作る手順を伝授したのかな?って感じ」
「なるほど……。愛美が気付かないと思うけど未来にはこんな時代と違う言葉を使うとか興味深いなぁ」
土方さんは柔軟性な所もあって良い物は取り入れる所もあって時代が違う人だったら……と思った。
「これも美味しいね!」
ワカメとキュウリの酢の物、前までは本当に『酢』って感じだったけど愛美が酢に加える調味料を教えていた。
全然、美味しく完食した。
「ご馳走さまでした」
「愛美が来てから色々と変わって本当に良い意味で良かったよ。愛美は良い嫁になるな」
えっ!土方さん……/////////。
『嫁』なんて恥ずかしいんですが!
「愛美ちゃーん」
『スパーン』
ビックリした!
いきなり襖を開けながら総司が遊びにきた。あっ、トシさんがまた鬼になる?
「総司……愛美の方は大丈夫だ。それよりいつも言ってるけど襖を開ける前に一声かけろ。お前の頭が心配だ」
「昼間みたいな事を見てしまうからですかぁ~」
総司ったら土方さんにいつも、チャラけて返事するの。
「あ~愛美ちゃんの首筋にエッチなの付いてるぅ~(笑)」
「総司、そう言う事だから」
冷静に土方さんが答えた。
ちょっと調子が違うので総司も楽しくなかったのか
「副長、愛美ちゃんを泣かしたりしてはダメですよ!僕が泣いてる所を見付けたら僕が愛美ちゃんを口説きますからね」
「総司が思うほど中途半端な気持ちじゃないから、その心配はない。」
土方さん、凄い発言して……。
その言葉を聞いた私も安心し思わず微笑んで総司に
「総司、心配してくれてありがとう。初めて周りの人も知らなくて孤独だった私に優しくしてくれた事も凄く感謝してるよ。でも……やり過ぎた事もあったけど(笑)トシさんに泣かされたら慰めてね」
「僕はいつでも待ってるよ!」
「コラッ!総司は部屋に戻れ」
いつも土方さんに総司は怒らせるような話し方をするのでヒヤヒヤするけど仲が良いんだなって思った。
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今日は雲1つない満月で凄く星がいっぱいに散らばっていた。
「なんだ?珍しいか?」
「うん。私の時代の星はこんなに見えなくて……。空気も違うし鎖国も廃止になり異国に負けないぐらいに日本は文化も物も優れた国になったけど……。空がこんなに綺麗じゃなくて……。」
空を見上げ少しホームシックになった私の顔を見て
「寂しいか?愛美とその時代に一緒に戻れたら一番いいな……。」
コクンと黙って表現で返事をした。
後ろから土方さんが抱き締めてくれた。
不安感も寂しさも全て取り除いてくれた。
「足の薬、替えたらボチボチ寝ようか?」
「うん。お願いします。」
少し腫れが引いてきてるけどまだ無理は出来ないかな。
「よし。出来た!しめすぎてないか?大丈夫か?」
「うん大丈夫。ありがとう」
そう言うと土方さんが布団に運んでくれた。その横に初めてじゃないけど私が寝る前に初めて隣に寝転び、腕枕をしてくれた。
知らない時に抱き枕の様に私と寝ていたらしいけど初めての気分でドキドキと心臓の音が聞こえているのか?と思うほどドキドキしていた。
「愛美は本当に顔に出るよな。けどそれが可愛くて惚れたんだ」
腕枕をしてくれ土方さんの心臓もドキドキと鳴っていた。
おやすみのキスをして夢の中に入っていった。