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第8話 お引越し

「ふぅ、ちょっと買い過ぎたな」

 あの後、無事に授業に間に合って放課後になると興はスーパーへ買い出しに行っていて今はその帰りで両手にはパンパンに膨らんだビニール袋がある。

「それにしても大丈夫かなぁ。あいつ、また変なことしてなきゃいいけど」

 そんな期待をしつつも我が家へ到着すると案の定、そこには何故か大きなトラックがあった。

「な、なんだこれ?」

 側面を見てみると『虹咲グループ』と書かれてあるのだがその荷台には何も乗っておらず、空っぽのままだ。

「あら、興様。思ったよりお早いお帰りで」

 トラックの影からひょっこり現れたのは先ほど見た証拠物からしてこの事態を引き起こした張本人。

「お早いお帰りで、じゃねーよ。なんだよこの騒ぎ。あ! そうか、お前の荷物が届いたのか」

 あの時はキャリーバッグだけで生活に必要な家具(特にベッドとか)は一切持って来ていなかったが、これはそれらを持って来る為のものなのだろう。

「はい。ベッドなど必要な物を取り寄せたのですわ。それとついでに今は里沙さんのお荷物をこちらへ移動させているところです」

「は?」

 突然のことで自分でもこれはないわ、という間抜けな声が出てしまった。

「いえ、ですから里沙さんのお荷物をこちらへ移動させているところです」

「聞こえてたよ! 俺が聞きたいのは何で里沙の荷物をこっちに移させてるのかって話だ。もしかしてお前……」

 そんなの質問しなくたって誰でも分かる。

「はい。里沙さんもこの家で一緒に過ごすことになりました」

 引っ越しだ。

 八恵同様に里沙も無駄にデカイ我が家へ引っ越して来たのだ。

「マ、マジか……」

「マジです」

 八恵の行動力に呆気にとられていると我が家から荷物を運んでくれた業者の方々が出て来て、トラックに乗り込むとすぐに何処かへ言ってしまう。

 その後、タイミングを見計らったかのように我が家へ引っ越して来たらしい幼馴染が申し訳なさそうな顔で出てきて、こちらへと近づいてきた。

「ご、ごめんね興くん。いきなり引っ越して来るだなんて迷惑だよね。でも、興くんが一緒なら心強いから……」

 どうやら黙ってこんなことをしたのに引け目を感じているらしいが、興は別のところでイラついた。

「もういいからそんな顔するな。どうせ部屋は捨てるほどあるんだし、今更一人や二人増えたって変わりはしねーよ」

 イラついたのは理沙が申し訳なさそうな顔をしているからだ。

 別にそれで怒りはしないが里沙のそんな顔、見なくない。どうせなら笑った顔が見たい。

「流石、興様。太っ腹ですわ。では私はお荷物を整理して行きますのでお先に」

 そう言うとそそくさと自分の部屋へと戻って行った。

「はぁ……、なんかあいつが来てから俺の周りが騒がしくなってきている気がするんだがこれは気のせいか?」

「興くんは優しいから周りに人が集まるんだよ」

「そういうもんかな〜。ってか、俺って優しいか?」

 確かに、友達は多い方だが自分がどんな性格かと聞かれても優しいとは答えられないし、別に特別なことなどしていなきのだが。

「うん。自覚してないだけでとっても優しいよ。だからこれからもよろしくね興くん」

「ああ。八恵を一人で相手にするには疲れてたところだ。よろしく頼むぜ」

「そう? 八恵さん、とっても面白い人だよ。私たちお友達になったんだから」

「そうか、それは良かった。ならこれからの生活も何とかなりそうだな」

 今日の昼休みでは犬猿の仲なのではと思っていたが、どうやら要らぬ心配だったようだ。

 女子というのは良く分からん。

「うん。お母さんが出かけてから不安だったけど今日から楽しくなりそう」

「ああ、そうだな」

 幼馴染の里沙が加わってまた騒がしくなったが、一人よりはマシだ。

 だが俺は異性と暮らすということを全く理解していないことを思い知ることになるのだった。

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