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第65話 告げられた真実

 ライブが終わると黒いスーツにサングラスという一見怪しげな姿の女性が靴を鳴らしてこちらに近づいてきた。

「お久しぶりですねお兄さん」

 黒髪を後ろで束ねるその人はスラッとしていてモデルのような歩き方をしているが彼女は華蓮のマネージャー、瀬和 真澄さんだ。

「瀬和さん。いつも華蓮がお世話になってます」

 変装して何度かライブを見に行った時に顔見知りなり、華蓮の状況を教えてくれていた。

「いえ。こちらも大事な妹さんを長い間、預かり申し訳ありませんでした。ですが、これも最後ですから」

「引退すること瀬和さんも聞いてたんですね」

「ええ。活動を休止することになった頃からそう決めていたみたいです。私としては彼女はまだ上を目指せる存在ですから。しかし、個人の意見は尊重しなくてはいけません。我々大人の我儘に彼女を付き合わすことはできないので引退を了承しました」

 俺は素人だからどうかは瀬和さんが言うのだから華蓮はアイドルとしての才能があったのだろう。実際、ライブがあればチケットは即日完売、色んな番組に引っ張りだこだった。

 素人目から見てもこれからもっと人気が出るだろうと思っていた。事情を知らない人たちからしたら何故引退をするのだと驚くことだろう。

「引退の理由とかって聞きました?」

「家庭の事情と気持ちの問題としか。てっきりそちらの方が詳しく聞いているかと思ってましたけど」

「正直、あいつの考えてることはサッパリですよ。とはいえ、あいつには何不自由なく暮らしてほしくて。ほら、瀬和さん知ってるでしょ」

 俺たちの家庭事情は複雑だ。一言では語りきれないほどに。というか口にしたくない。

 我が妹に家のことをさせていないのは俺みたいな気苦労をさせたくないからだ。

「ええ。お兄さんが華蓮のために頑張っているのは知っていますとも。それよりも早く華蓮のところに行ってあげたらどうですか? あ、ちなみにもう着替え終えてるのでラッキースケベはありませんからがっかりしないでくださいね」

「期待してないですよ」

 妹の裸を見たいと思う兄などいるはずもないだろ……いないよな。

 ともかく、最後のライブを終えた妹を労うため楽屋へと向かう。いつものより小さなものであったが華蓮はやり切った顔をしていた。

「どうだったお兄ちゃん。お兄ちゃんのためだけラストライブ。興奮したでしょ?」

「ああ、最高だったよ。引退するのが惜しいくらいにな」

「それを言われると弱いけど、私の意思は固いよ。しっかりとやることは決めてるんだから」

「へ〜、そいつは初耳だ。まあ、何であろうと俺は応援するから頑張れよ」

 やりたいことを全力でやった者は強い。

 華蓮は特にそれで結果を出している。まだ色んな可能性が秘められているだろうし、それを見つけるのも面白いだろう。

「うん。それと最後に返事を聞かせてくれない?」

「返事?」

「言ったでしょ愛してるって。それについての返事をまだ聞いてないんだけど」

 ライブの最後に言い放ったあの言葉。無論、覚えてはいるがまさか返事を要求されるとは思わなかったのでしどろもどろになりながらも期待の眼差しに必死に無難な答えを絞り出す。

「え、えっともちろん俺も愛してるぞ。兄として」

「はぁ〜……私はそんな灰色の答えは求めてないよ。私のことを妹としてじゃなくて一人の女としてどう思ってるの?」

「いや、そもそもお前は俺の妹なんだしそんな目で見たことないよ」

 それこそ俺がシスコンでない限りーー。

「じゃあ、私が妹じゃなかったら?」

「は? いや、そんなそもそも論を言われても……」

「そもそも論じゃないよ」

 そう言って楽屋に入ってきたのは幼馴染の里沙である。

「どうして里沙がここに?」

「それはこれから大事なことをするからだよ」

 少し間をあけ、里沙は勇気を振り絞りその言葉を口にする。

「興くん。私、幼馴染じゃなくて妹みたい」

「そして私が幼馴染になるわけだねお兄ちゃん」

「ま、待ってくれ! 話が急すぎるつまりどういうことだ?」

 理解が追いついていない興に華蓮は優しくそれまで隠していた事実を口にするのであった。

「つまりは私たち、入れ替わってたんだよ。赤ん坊の時にね」

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