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第6話 学校案内

「今日からこの学校に通いことになりました、虹咲 八恵と申します。皆様、仲良くしてくださいね」

 お辞儀をして、顔を上げると同時にニッコリと笑顔を浮かべると教室は一気に騒がしくなった。

「うぉぉ、すげぇ美人だ!」

「お人形さんみた〜い」

 自己紹介が終わるとクラスのみんな(主に男)が喜びの声をあげるが、二人だけは唖然としていた。

「まさか俺らのクラスに転校してくるとは……」

 里沙と一緒のクラスのが続くのといい、どうやら本当に何かの呪いにかかっているのかもしれない。

「え〜と、じゃあ虹咲さんは空いてる席に座って」

 空いてる席、つまりは俺の後ろだ。

 昨日、始業式が終わった後にクジ引きで席が決められ窓側の後ろから二番目というなかなか高物件の場所を獲得し前には友和、右隣には理沙というこれまた奇跡的な形になったのだが後ろは何故か空いていた。

「興様、学校でもよろしくですわ」

「あれ? 何々、興と虹咲さんってお知り合いなの?」

 それを聞いた友和が態とらしく挙手して質問すると、八恵はこれまた笑顔でこう答えた。

「はい。私、興様の許嫁です♡」

 直後、男子生徒からの殺気がこもった視線が興に集まったのは言うまでもない。




***




 昼休み。

 先生から知り合いならちょうどいい、ということで八恵にこの学校の案内を任された。

 教室にいても男子からの怒りと嫉妬が充満しているのでとても居づらいので快く引き受けてこうしている訳だが……。

「どうしてお前らまでついてくるんだよ」

 ついて来いだなんて一言も言ってないのに、あたかもそれも当たり前のように里沙と友和は一緒に案内の手伝いをすると言って聞かない。

「イイじゃん、イイじゃん。俺はお前の親友として虹咲ちゃんとお近づきになりたいんだからさ〜。それとも、俺らがいたらはまずかった?」

「いや、そうじゃないけど……」

 別に友和は問題ない。

 八恵が許嫁だと知ってもそれを面白がるだけで、他の男子生徒のように嫉妬をしたりはしない。

 問題は里沙の方だ。

 このクラスに八恵が転校してきてから口数が減ってきて何処か不気味なのだ。

「なら問題ねえよな! よ〜し、となれば案内だ案内。俺らは一年もこの学校にお世話になってる、いわゆるプロだからな。ドーンと任せてくれてちょ!」

 なら俺も里沙もプロってことになるが……とツッコミ気力も今はない。

「あら、頼もしいですわ友和さん」

「そう? なら早速行くぞ興。飯食う時間がなくなっちまう」

「お、おお」

 俺たちは早足で廊下を歩き、校内の探索を始めた。



***




「ここが特別館。理科室とか美術室とかがあるけど美術部とかの奴らが良く来るだけで俺らみたいな帰宅部とは縁遠い場所だな」

 実際、この特別館に入ったのなんて片手で数えられる程度だ。

「未開の地という訳ですわね」

「いや、美術部の奴らが使ってるんだから未開ではないだろ」

 それに美術部の奴らに失礼だ、と言いたいが実は昔俺もそんなことを思ったことがあるのでそれ以上何も言わなかった。

「そんでもってここが中央館。コンピューター室とか視聴覚室とかがあるのがここ。本館とかよりちょっと小さいけど結構来ることが多い所なんだ」

「コンピューター……私、機械音痴なのですけど大丈夫かしら?」

「基本的なことしかしないから大丈夫だろ」

 それに使う機会なんて滅多にない。いくら機械音痴でも平気なはずだ。

「で、ここが本館……という教室がある所で全ての科の奴らが集まってる所。ぶっちゃけ、ここが一番使うとこだから自分の教室が何処か覚えてれば問題ないんだけどね」

「なるほど、では今までの案内のことは全て無駄だったのですね」

 なんだよその終わり方。まるで最後の問題が解けた人は百万点です、みないな乗りじゃないか。

「よし、じゃあそろそろ飯にしよう。今日は中庭で食べようぜ」

「中庭……、行ってみたいです!」

 目を輝かせて八恵は興奮しているがそこまで大層な所ではないので過剰な期待はやめてほしいが興にとって他に選択肢はない。

「俺はその方が助かる」

 あの教室では箸が進まなさそうだし、八恵を連れて戻ったら更に誤解は深まってしまうだろうから。

「じゃあ、俺が皆の弁当持ってくるから興は場所取りしといてくれ」

「おう。一応鞄ごと持って来てくれ」

 クラスの皆を疑っている訳ではないが念には念をだ。

「学校案内ありがとうございました。とっても面白かったです」

「礼なら友和に言ってくれよ。俺なんて何もしてなかったし」

 そこから友和が帰ってくるまで会話はなかったが何故か八恵はニコニコとしており、里沙は神妙な顔つきで興を見つめ続けていた。

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