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第50話 前途多難

 中庭をパワースポットと言ったのには理由がある。ここなら人が集まり、周囲が校舎なので調査する際に生徒たちから彼女の存在を知らしめることができる。

 琴陵は自分から話しかけて友達を作っていくタイプではない。むしろ友達を作るという行為に嫌悪感を抱いているようだった。

 なので彼女から友達を作るようにするのではなく、あちらから話しかけてくれるように仕向けることにした。

 まずは彼女の存在を知ってもらうことから始める。まだ転校してきたばかりなので知らない者の方が多い。こうして中庭で調査をして気になった女子生徒が「何をしているの?」と話しかけてきて、それから自然と話すようになりーーというのが理想的だ。

 しかし、どうやら琴陵が放つ話しかけるオーラは相当なものでそのような展開になることはなかった。

「それで、調査の方はどうなんだ?」

 中庭の銅像付近で何やら作業をしている琴陵に問うと彼女は首を横に振った。

「駄目。人が多いせいで集中できないし、力が微弱過ぎるせいか調査は難航してる」

 それもそうでしょうな。

 何せこの学園にパワースポットなぞ存在しないのだから。

 予想外なのは意外とそれらしいアイテムを揃えて調査をしているというところだ。先生にはバレないようにしているので今のところそれに関して注意されてはいないようだが、それも時間の問題だろう。

「そうか……まあ、微弱ってことは問題が起こることはないんだろ? だったらそこまで調査する必要はないだろ。せっかくの昼休みをそうして潰すのは勿体ないぞ」

 正直、今回の作戦は失敗だ。

 こうなったら同じ趣味の人を探す他ない。この学園にパワースポットに興味があるという奴が一人くらいいても良いはず。

 流石に琴陵でも同じ趣味を持つ相手になら心を開いてくれると信じる他ない。

「このまま放置しておくのは危険。せめてこのパワースポットが人に害があるのかそうじゃないのかだけでも確認しておかないと」

 専門家(自称)としての意地なのか、こちらの言い分に耳を傾けてくれる気はなさそうだ。

 いっそのことパワースポットの件は嘘だと打ちあけようかと思ったその時だった。

「何していますの?」

 まさか作戦通りに釣れたのかと振り返るが、その声の正体はつい最近転校してきた少し危ないお嬢様である。

「何だ、お前か。どうしたんだよこんな所で」

「お姉様を探していたら中庭で何やら如何わしいことを企んでいそうな殿方が見えたので注意をしようかと思いまして」

「別にお前が心配しなくても何も問題ないって。他に用事がないならお帰り願いたいんだがーー」

「いえ……その、貴方にはお姉様が家で普段どうしているかを聞きにきたの。流石にお姉様はガードが固くて聞き出せないですから」

「だから俺から聞きだそうってか。悪いけど俺が話したってバレたら後が怖いから黙秘権を行使させてもらう」

 余計なことを口走る可能性があるのでお口はチャックすること。それが唯一無二の最善の手だ。

「へぇ〜、その方と密会していたことを報告させていただきますけど」

「密会って……こいつは訳あって俺の家に居候してる奴だ。他の連中も知ってるから報告されても痛くもかゆくもないぞ」

「あら、そうでしたの。ですが、あまり一人を贔屓しているとお姉様が嫉妬してしまいますわよ」

「あいつが? それはないだろ」

 あの無愛想で八恵とは正反対の晴奈さんが嫉妬をするだなんてこのお嬢様は面白いことを言う。

「私の方がお姉様のことを熟知していますのよ。まあ、その辺はこれ以上触れないことしておきますわ」

「そうだ、お前も転校生だよな。こいつもお前と同じ時期に転校したんだが、転校生のよしみで仲良くしてやってくれないか?」

 同じ境遇の者ならではの会話で弾み、信頼感が生まれるのではと期待したのだがそれは秒で打ち砕かれる。

「残念ですが私はお姉様を追いかけーーお供するのに忙しいですから遠慮させていただきますわ。それに既に私を慕う臣下たちもいますので」

「臣下?」

「ええ。どうやら私のファンクラブが設立されているみたいですの。正直、全く興味がないのですけどお姉様のファンクラブを設立するのは良いかもしれないですわ」

「そいつは気の毒に……。って、あれ琴陵は?」

 つい先程までここで作業をしていたはずなのに彼女の姿がここにはない。まるで神隠しにあったようだが、一部始終を見ていた白露は淡々と状況を説明する。

「あの方でしたら私と貴方が話している最中に校舎の方に戻って行きましたわよ」

「あいつ……」

 こちらの気も知らないで……。ともかく、これは本格的に軌道修正をしなくてはいけないようだ。

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