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第43話 決勝戦

 決勝戦に駒を進めたのは赤石 晴奈と白露愛華。どちらも一年生ながらも他を圧倒するプレイングで難なく決勝戦へと勝ち進んだ。

 今期の女子テニス部はこの二人を筆頭に更に盛り上げを見せるのではないかと言われている。

 それ故に今回の大会はそれ程大きなものでもないのに注目度が高く、遠くから視察に来ている者もちらほらと見受けられる。それだけ彼女たちが凄いプレイヤーであるということだ。

 二人は因縁の相手であり、これまでに何度も対決してきて戦績は五分。この一戦によって何かが変わるわけではないがライバルとして両者負けを譲る気はないという緊迫した空気を放ちながらテニスネットを挟んで握手を交わす。

「お姉様、やはりここまで勝ち進みましたのね。あのような男と付き合っているせいで腕が鈍ってしまっているのではないかと心配でしたが要らぬ心配でしたわね」

「別に。それよりそのお姉様ってのいい加減やめて」

「あら、恥ずかしがる必要はありませんわ。それよりもお姉様、あの殿方が見えないようですけど何かあったのかしら? 最近、物騒だと聞きますし何か事件に巻き込まれていないと良いのですけれど」

「あいつに何かしたの?」

「さて、どうでしょう? それよりもお姉様、この試合勝者が負けた方に何でも言うことを聞かせるというのはどうでしょう。きっと面白いですわ」

「それが目的か……。別に良いよ。どうせ私が勝つから」

 長い握手を終え、両者定位置に立つ。

 サーブ権は愛華。

 綺麗なフォームでトスを上げ、流れるように強烈なサーブを放った。




「はぁはぁ……間に合ったか。試合はどうなってる?」

「遅いよお兄ちゃん。一体、今まで何処で何やってたの?」

「悪い少しトラブルに巻き込まれてな。それで試合は?」

「それがあまり調子が良くないみたいで……」

 不安そうに観戦する理沙。

 スコアボードを見てみるとお互い一セットを取って、今は愛華の方がリードしているという状況。

「相手が相手だからな。そう簡単にはいかないだろうさ」

 晴奈はスロースターで本領が発揮されるまでに時間がかかる。残り二セットを奪うにはどうにかして本調子にならなければ難しそうだ。

「いや、何冷静に分析してるのお兄ちゃん。ここは応援してあげるところでしょ。そのために私たち来てるんだから」

「それはそうだが……」

 正直、応援にあまり良い思い出はない。それは確かにされる側は嬉しい。何度か理沙が応援に来てくれた時はかなり助けられたが問題はする側だ。

 理沙みたいに知り合いとして来てくれる分には気楽で良いが部活内では声を張らないと先輩たちに何かと文句を言われる。今回は俺も知り合いとして来ているがあの晴奈だと応援を鬱陶しがる可能性が高い。もしも無視でもされたらショックで立ち直れないかもしれない。

「もう焦れったいな〜」

 痺れを切らした華蓮は頰が膨らむまでたっぷりと空気を吸いんだ。

「勝ったらお兄ちゃんが何でも言うこと聞いてくれるみたいだから頑張って〜〜〜‼︎」

 流石は元アイドル。他の声援をかき消すほどの声量で無責任発言をした。我が妹ながらとんでもないことをしてくれる。

 晴奈はチラリとこちらに視線をやると顔を確認して、それからすぐに目の前の試合に集中する。

「お、おい何を勝手なこと言ってるんだ。それにそんなことであの晴奈がやる気になるわけ……」

 晴奈のサーブ。

 トスはいつもより高く上げられ、手元が狂ったかに見えたが次の瞬間には際どいコースに鋭いサーブが突き刺さっていた。

「お兄ちゃん、これは覚悟した方が良いかもね」

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