表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/67

第42話 閉じ込められたんだが……

 目を開けるとそこは倉庫だった。

 周囲に人の気配はなく、今は誰も使っていないのか薄暗い。

「ここは……何処だ?」

 今日は晴奈の試合を応援しに来たはず。それで……思い出した!

 背後から何かしら硬いもので殴られて気絶してしまったのだ。犯人は言うまでもないがまさかこんな強行手段に打って出くるとは思いもよらなかった。

 ここから出ようにも扉は固く閉ざされており、必死に叩いて助けを呼んでも反応はない。

 無論、スマホは没収されていて理沙たちに連絡することもできない。本格的に俺をここに監禁しようという意思が感じられる。

 でも、俺をここに閉じ込めてあのお嬢様は何をしようと言うのだろうか?

 時間が経てば理沙たちが心配して探しに来てくれるだろうがここでジッと待っていてはあのお嬢様の思惑通りになりそうだ。それはなんとも屈辱なのでどうにかして抜け出してあのお嬢様の鼻を明かしてやりたいところではあるが一人でこの倉庫から抜け出すのは難しい。

 倉庫の中にはテニスで使われるネットやボールなどしかなく、脱出に役立ちそうなものは見当たらない。これが脱出ゲームなら脱出に必要なものやヒントが発見できるのだがこれは現実だ。

「それにしてもこれは参ったな……」

 自由奔放な父親を持ったせいで十数年の人生でそれなりの体験をしてきたが監禁されるというのは流石に初めての体験であるが戸惑っていても仕方がないというのは経験上、理解できる。

 とにかく、気持ちを落ち着かせるためにテニスボールを手に取る。

 その感触は知っている。三年間、嫌というほど投げてきたのだから当然といえば当然だ。

 上の方に窓はあるが鉄格子のせいでボールで割って脱出というのは無理そうだ。ならば何故、ボールを手に取ったかというと単純に暇だからである。

 この状況的に脱出が困難というのは素人でもわかる。あのお嬢様が高笑う顔がチラつくが別に脱出しないと命を失うとかではないし、晴奈はキッパリと断ったのだから彼女を困らせるようなことはしないと思う……多分。

 だから急ぐ必要はないと扉にボールを投げ、一人キャッチボールをしながら助けを待つことにした。

 しばらくすると外が騒がしくなってきた。どうやらこの音を聞きつけて誰かが駆けつけてくれたらしい。

 鍵を持って来てくれたその人のおかげで固く閉ざされていた扉は開かれる。

「だ、大丈夫⁉︎」

 扉が開かれ、真っ先に入ってきたのはつい最近、実習生として我がクラスに訪れた嘉納 美由。彼女は興の初恋相手であり、突然のことに思考が停止してしまう。

「えっと……嘉納先生? 何でここに?」

「何でってそれはこっちのセリフだよ。私はテニス部の試合があるからその応援に来たんだけど、倉庫から不審な音が聞こえるって生徒から聞いて来たら閉じ込められてるんだもの」

「ちょっと色々ありまして。でも問題はありませんから」

「問題ないって……でも、これはーー」

「いや、ただ単に俺がここで昼寝してたらそれを知らない人が閉めちゃっただけですよ。それじゃあ、俺も応援に行きますからこれで」

 時間的に今頃決勝戦をしているはずだ。番狂わせがなければあの二人の対決ということになるが、俺がいないことを利用してあのお嬢様が何をしでかしたが気になる。

 助けてもらっておいて申し訳ないと思いながらも興はテニスコートに向けて走り出す。

 その後ろ姿を見つめながら嘉納は怪訝な顔を浮かるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ