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第39話 恐ろしい愛

「他校の生徒に告白された⁉︎」

 突然の衝撃的な条件。

 その理由を聞くと興の知らないうちに告白され断っても何度も現れては再度告白してくる他校の生徒が原因らしい。

「練習試合する時があって、その時にボコボコのがきっかけだって言ってた」

「それで俺に偽の彼氏役を頼んだわけか。でもそこまでする必要あるか?」

「凄いしつこくてこれは最後の手段」

 何とも複雑な気分ではあるが晴奈をここまで追い詰めるとは相当ヤバイ相手であるというのは聞いているうちに容易に想像がついた。

 そいつを野放しにしているとこの家にまで押し寄せてくるかもしれない。まあ、そうでなくても断る理由などない。

「それで引き受けてくれるの?」

「あいつの監視を頼むためとか関係なしにそれくらい協力してやるよ。可愛い後輩が困ってるなら助けるのが先輩の役目だ」

 帰宅部で後輩らしい後輩がおらず、こうして後輩に頼られるのが初めてなせいか興のテンションは急激に上がっている。

「あっそ。じゃあ、明日は部活ないからその時に詳しく説明するから」

 それだけ言い残すと勢い良く扉を閉めてしまった。もう少し話し合ってどうやって諦めさせるか作戦を決めたいところだが今日はもう遅い。

 翌日はいつもより早起きして里沙たちに気づかれないように登校しがてら続きの

「それで、彼氏役をするのは良いけどそいつをどうやって騙す気だ?」

「別に。普通に彼氏だって言って黙らせる」

「まあ、それが普通だな。正直何かを求められても困る」

 演技力が求められるような作戦だとまず活躍できないと自負している。何せ演劇ではあまりにも台詞が読めなすぎて木の役にされた程なのだから。

「じゃあ、今日の放課後に校門前に集合。公園で例の奴と待ち合わせしてるからそこで彼氏役ちゃんと果たしてよ。あんまり期待とかしてないけど」

 相変わらずて厳しいお言葉。

 目的地である公園は学園からそう遠くない場所にあり、ここからの景色が良いことからカップルが集まる公園である。

 そのストーカーになりかねないという他校の生徒が指定してきたとのことで完全にその気があるのが伺える。

 先に到着し、二人で待っていると唐突に例の他校の生徒が現れた。

「お姉様! 会いたかったですわ」

 金髪の髪を横で束ね、ドリルのようにグルグルとしているひと昔前のお嬢様ヘアの少女が晴奈の豊満な胸に飛び込んだ。

「お、女の子⁉︎」

 そういえば一言も異性から告白されたなどとは言っていなかった。練習試合も女子同士でやるのが普通だし、今更問いただすわけにもいかない。

「何ですの貴方? 汚らわしい男子がお姉様に近づいてこないでくださる?」

 こちらを道端に転がる掃き溜めを見るような目で睨みつけてくる。

「こいつ、私の彼氏だから」

 このままでは彼女のペースに飲み込まれてしまうと晴奈は早々に作戦を開始させる。

「……お、お姉様ったらご冗談を。こんなそこら辺にいる男なんかお姉様には似合いませんわ」

 流れるように俺をディスるお嬢様。そして否定する間もなく話は進められる。

「冗談じゃないから。だからこれ以上関わらないで」

 突き放すような一言。

 その一言が効いたのか彼女はショックのせいか一瞬時が止まったかと錯覚する程見事に固まりるがどうにか言葉を振り絞る。

「お姉様がそう仰るなら……ですが忘れないでください。私はいつでもお姉様の味方ですから」

 振り絞った後はトボトボと公園を去った。

「随分と大人しく引き下がったな。あの様子だともう少し」

「どうでもいい。それじゃあ、私は帰るから」

 あれだけ慕ってくれていた者を一瞬で突き放したのに変わらぬ様相で我が家へと帰っていった。

 時間も時間だし、買い物でもしようとしたところ公園の出入り口で待ち構えいた晴奈に付きまとっていた少女に釘を刺される。

「お姉様があのようなことを仰るなんてあり得ませんわ。何かただならぬ事情があってのこと。それを突き止めるまで貴方を監視しますからそのつもりでいてくださいませ」

 それだけ言い残すと晴奈をお姉様と慕い、少し……いや大いに変わった少女は街の中へと消えていった。

「末恐ろしいな」

 結局、解決とはいかず更なる問題を抱えてしまったかのように思えるが今日はとりあえず我が家に帰ることにした。

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