表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/67

第4話 対面

「なるほど、これならソファで起こる痛みはなくなるな」

「はい。それに暖かくても心地良いでしょ?」

「まぁ、これ俺のベッドだからな」

 この青い布団も数年前から使っている俺の物であって何故か八恵が隣で一緒に横になっている。

 一人用の物なので結構狭く、壁へ壁へと近づいて距離をとったがそれほど大差がなく、八恵の呼吸がここまで聞こえる。

「はい。いい匂いがします」

 背中側にいる八恵は布団に顔をうずめてその匂いを存分に味わうためにスーハースーハーを繰り返していた。

 道理でここまで呼吸が聞こえる訳だ。

「いやいやいや、おかしいだろ? なんで二人で同じベッド使ってるんだよ」

 住む所がないから仕方なく我が家に泊まるのを許してはいるが、こうなるとは思わなかった。

「ソファで寝ると色々と良くないと聞きました。やはり、疲れをとるにはベッドが一番なのです。そしてベッドはこの一つしかないのですからこうして一緒に寝るのは自然の摂理と言えなくもないですわね」

 自然の摂理ではないとして、まずこの状況は流石にまずい。

「やっぱり俺、ソファで寝るよ。ここだと眠れない」

 何回かあれの感触が背中に伝わってて、もうすぐいつも寝る時間帯なのに目が冴えてしまっている。

「そんな……私、興様がいないと眠れません」

 この流れ…またこちらがOKを出すまで粘ってくるパターンだ。

 意地になっても睡眠時間が削られるだけと何となく予想ができた興は仕方なく八恵が望むようにすることにした。

「はぁ〜、分かった分かった。なら寝るまでここにいるからその顔やめてくれ」

 一度やられたが、やはり男子というのは女子の上目遣いなどに弱く自分も例外ではないも気づいたのだ。

 ずっとそれをやられると色々と困る。

「ふふっ。やはりお優しいところは変わっていませんね。それでこそ興様です」

 馬鹿にされているのか褒められているのか微妙だったが寝るまで他愛のない話をした。

 過去についてあえて聞かなかったのは少し怖かったからだ。

 小学生の時の記憶も朧気で自分が何かとんでもない事をしでかしたのではという不安がある。

 だが、そんなの杞憂だと言い聞かせてふと静かになった八恵を見るとぐっすりと眠っている姿があった。

 起きている時とはまた違う魅力があったがそれに惑わされることはない。

「さて、俺も寝るか」

 興はゆっくりと、音を立てず、ベッドから降りて一階へと向かった。




***




 一人暮らしの朝は早い。

 父親がいた時でも起きる時間帯は変わりはしないので興にとってはいつも通りの起床時間だが……。

 しかし、ソファで寝たせいで身体中が痛みながら台所へと向かうとそこには興が通う月日学園の制服の上に白いエプロンをつけた八恵が立っていた。

「おはようございます興様。昨日は良く眠れました?」

「あ、ああ……でも何でここに?」

 てっきり、俺のベッドで眠っていると思っていたのに。

「勿論、興様のお弁当をつくるためです。こうしてお泊まりさてもらって何もしないというのは心苦しいですので」

「別にそんな気を使わなくてもいいのに。でも俺として助かるな」

 弁当をつくると眠気で授業に集中出来ないことが多々あった。

 それだけが理由ではないが、とにかく朝の仕事が減って余裕が出来たのでとてもありがたい。

「今さっき出来たましたのでこれを持って行ってください。中身は開けてからのお楽しみです」

 弁当箱は家にあった物を使ったらしくいつもの青い弁当箱、八恵自身のは持参の物でピンク色の弁当箱、興のと比べると少し小さめだ。

「おお、ありがとな。それじゃあ朝ごはんは俺がつくるよ。弁当つくって疲れただろ?」

「ありがとうございます。では遠慮なく、休ませてもらいます」

 八恵はエプロンを脱いでテレビが見られる位置にあるテーブルに着いた。

 つくるといっても朝はパン派なので、あとは目玉焼きだけ。

 これならあまり時間が掛からず、余裕をもって登校ができるのでいつもこれだ。

「やはり、興様がつくると一味違いますわね。愛の味がします」

「ただ卵を焼いただけだけどな」

 あと塩コショウとかそれの味しかしないはずだ。

 愛などという調味料を入れた覚えはない。

「よし、そろそろ行くか。初日から遅刻はまずいだろ?」

 朝食を食べ終えるといつも家を出る時間になっていてすぐに後片付けを済ませる。

「はい。ですが、私まだ学校への行き道を完全に覚えていないので案内してくれますか?」

「どうせ、同じ家に住んでるだから別々に行く訳ないだろ」

「流石、興様」

 馬鹿でかい我が家の扉にガキを掛け、いざ月日学園へ行こうとすると幼馴染がいつもの様に待っていてくれたがその笑みは威圧感というか覇気に似た何が含まれていて自然と背筋が凍りついた。

「興くん、その人だあれ?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ