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第32話 そうだ、映画館に行こう

 魅雨姉との時間は終わり、次は妹である華蓮だが……。

「さて、お兄ちゃん。随分待たされた気がするけど魅雨ちゃんとのデートが終わって早々悪いけど久しぶりに妹を楽しませるチャンスが来たんだから私を満足させてね」

 どうやら休ませてくれる気はないらしい。

「満足か……でも一通りやった気するんだよな。遊園地行って、買い物して……」

「それはお兄ちゃんだけでしょ! 私は遊園地なんて行ってないし、買い物だってロクに行けてないんだから」

 アイドルである妹は騒動が起こらないように仕事以外では外に出ないようにしている。家ではなく、事務所の紹介で借りたアパートで住んでいたのはその為だ。

「そうだったなごめん。じゃあ、何処に行く?」

 今回のプランは八恵が発足したもので興は何処に行くかは全く考えていなかった。男としてそれはどうなのかと言われそうだがこの場合は被害者なので勘弁してあげてほしい。

「買い物はまた今度行くとして今日は映画を見に行きたいな。私が好きなドラマの映画が今日から公開なんだ〜」

「映画か……。そういえばあのビルの最上階にあったな」

 それに一通りと言ったが映画を忘れていた。お金は余分にたくさん持って来ているから二人分なら問題ない。ついでにポップコーンも買うくらいの余裕はある。

「早く行こお兄ちゃん。いい席取られちゃうよ」

「あ、おい華蓮走るなよ転ぶぞ」

 どうやらそのドラマが相当楽しみだったのか言うことも聞かず走って行った。




***




「面白かったね、お兄ちゃん」

 映画を見終えて少し休憩するために近くの喫茶店に入った。

 遠慮がない我が妹は大量に勝手に注文をしたが俺はコーヒーだけにしておいた。

「あ、ああ……」

 内容が兄に恋した妹が振り向かせる為に頑張るというものでなければ素直に楽しませただろう。

「そうだ、お兄ちゃんこの際だから聞くけどあの四人の中で誰が好きなの?」

「い、いきなりなんだよ」

 この場合の四人は我が家に住み着いているあの四人なんだろうけど、あの映画の後に聞かれると返答に困る。

「だってあの家に住んでるのお兄ちゃん以外全員美少女なんだよ。一人くらい好きな人いるでしょ」

 友和みたいなこと言い出した。そんなことを言うと華蓮は怒るんだろうけど。

「別にいないって。皆家族みたいなもんなんだからさ」

「ふーん、お兄ちゃんらしね。でも妹ポジションは誰にも渡さないよ」

「誰も欲しがらないよそんなポジション」

「じゃあさ、じゃあさ、もし私が妹じゃなかったらどう?」

「どうって言われてもな」

 華蓮は生まれた時から妹で、妹じゃなかったらなんて想像がつかない。

「アイドルで年下だよ? 何とも思わないの? もしかしてお兄ちゃん、そっち系……」

「それはない。全面否定させてもらう」

 それも友和にも言われた。「お前、そんな羨まけしからぬ状況になっている何故喜ばないもしかして……」と。

「あはは、そうだよねお兄ちゃんはお父さん似だから女の子の方が好きだよね」

「いや、親父は関係ないし俺が女好きみたいに言うのはやめろ」

 というか親父に似てるだなんて吐き気がする。コーヒーと一緒に飲み込むが気持ち悪さは一向に収まらない。

「じゃあ好きになったことって一度もないの?」

「いや、昔はいたよ。でも物心がつくにつれて親父みたいになりたくないって思い始めてな。今じゃあ好きって何なのかよく分からなくなってきた」

「そんなの直感だよ。見た目とかじゃなくて中身を知ってその人と一緒と思ったら好きなの」

「そんなもんかな〜」

「そんなもんだよ」

 と言われてもやっぱりピンとこない。好きを知るには誰かを好きにならないと分からないかもしれない。

「とにかく帰ろお兄ちゃん。明日も忙しいんでしょ」

「まあな」

 明日は理沙と晴奈だ。

 晴奈の場合は予定が決まっているが理沙はどうしよう。いくら幼馴染でもいい加減なものではいけない。かといってまた任せるのは男としてどうだろう?

 何か考えないと、でも何処がいいか見当がつかない。いや、一箇所だけある。理沙が行きたいと思っているかどうかは別として俺が理沙と行きたい場所が。

 そうと決まれば後は明日に備えるだけだ。コーヒーを飲み干し店を出る。

「お兄ちゃん、なんだか嬉しそうだね」

「明日の予定が決まったからな」

「じゃあ、今度私とデートする時の予定もお兄ちゃんが決めてね」

「妹とデートする兄ってどうよ?」

「いいんじゃない。私は好きだよ」

 その好きはどっちの好きなのか。本当の好きを知らない俺は分からなかった。

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