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第27話 遊園地

 三連休一日目。

 軽く朝食を済ませて、本題へと入る。

「では、興様。僭越ながら私から昨日決めた順番を発表致しますわ」

 そんな改まって言うほどのものではないが、空気読んで黙って聞いてやることにした。

「まずは一日目は話し合いの結果、私ということになりましたわ。許嫁として当たり前の結果ですが私は嬉しくて嬉しくてぐっすり八時間眠れましたわ」

 そこは眠れたんだ。

 まあ、夜更かしはお肌の天敵と言うし、悪いことではないんだけども。

「さて二日目は魅雨さん、華蓮さんです」

 明らかに自分の番が終わったから手抜きをしている感満々なのだが話が長くなるよりかはいい。

「そして三日目は里沙さん、晴奈さんとなりましたが何か質問などはありますか?」

「いや、ない。何処か行くならその都度教えくれりゃあ問題ねえ」

 泊まりというわけではないのだろうからそう準備することもないし、ただ俺は言われるがままについて行けばいいだけだ。

「なら説明は終了ですわ。興様、早速行きましょう」

 自分の番なのでテンションの高い八恵は袖をグイグイを引っ張ってくるが俺は動かない。

「行きましょうって、何処に?」

「もちろん、デートの定番遊園地ですわ」

 誰もがこれが興が勝手な行動をした罰だということは忘れていた。




***




「おお、結構デカイな」

 レインボーランド。

 名前から察してもらえたと思うが、ここは虹咲グループが経営している遊園地だ。

 しかし、珍しいことに貸し切りとかではなくちゃんと俺ら以外にも客がいる。

「珍しいな。お前のことなら貸し切りにしてワイワイやるかと思ったんだが」

 おじさんに頼めばそれくらいできてしまうはずなのだが今日に限ってそれはしないらしい。

「こうゆう所は待つのも醍醐味なのです。お喋りしたり、少しずつ前に行くにつれてドキドキして出番が回ってきた時の喜びは並んだ分、格別でしょう」

 運動をして喉がカラカラになった時の水が美味しいように苦労した後に得たものは何物にも代え難いのだ。

「なるほど……たしかにそれも一理あるな。それで今日は何に乗るつもりなんだ?」

 このレインボーランドのアトラクションは三十二もあり、種類も豊富で今日一日で全てを回ることは無理だからいくつかに絞らないといけないが。

「それについてご心配なく。事前に予約してありますので並ぶことなく乗れますわ」

「さっきの熱弁は一体……」

 まあ、ぶっちゃけ並ぶのは面倒だし、それはそれで助かった。

 そして腑に落ちないまま俺は八恵に連れられ、あるアトラクションの目の前に到着した。

「お化け屋敷か。定番中の定番だな」

 入り口の手前なのに中から女性の悲鳴が聞こえて、その黒い布で覆われたアトラクションは不気味さを際立たせている。

「さあ、入りましょう興様。ここは物凄く怖いとテレビでも紹介されていましたわ」

「そ、そうか。でも腕を組む必要はあるのか?」

 気にしていないようだが胸が当たって、俺はそれが気になって気になって仕方ない。

「大ありですわ! もし何かが襲ってきたら興様に守ってもらう為にこうするのが一番なのです。それに、これなら迷子になりません」

「で、でもなぁ……」

 大抵、お化け屋敷にはカップルが集まる傾向にあるわけでここも例外ではない。むしろ、三連休ということだけあって結構な数がいて逆に腕を組んでない方が浮いてしまう。

 しかし、だからといってこの状況は心臓に悪い。

「八恵! こうしよう。これなら問題ないだろ」

 俺はスルリと腕を抜いて代わりに手を握った。これならいつでも助けられるし、迷子になることだってない。

「あ……はい」

「じゃあ早く行こうぜ。せっかく遊園地来たんだから楽しまないとな」

 八恵は初めて興の方から手を握ってくれたことを嬉しく思い、顔を赤らめながらお化け屋敷へと入っていった。

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