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第26話 順番決め

「また別の女を連れて来るだなんて興は意外とプレイボーイだな。それで今度は誰を連れて来るつもりなんだ?」

 どうやらあの試合は見られていたらしく、我が家へ帰ると全員がリビングの机に座っていて今はお叱りを受けている真っ最中だ。

「魅雨姉、そんなに怒るなよ。もうここはシェアハウスみたいなもんなんだから仲間が増えたと思えばいいんだよ。な! 晴奈」

 男は俺だけだが友和のように疚しい気持ちなどはないし、決して自分と同じような境遇にある後輩を可哀想に思ったからではない。

 勝負に負けて、男として約束を守っているだけに過ぎない。

「うん。私は部活あるし、そんなに気にしなくていいから」

 と、ここに集められることになった発端である晴奈は片足を椅子に乗せて座るという格好で興味なさそうに答えた。

「へ、へぇー下の名前で呼ぶなんて昨日会ったばかりなのに仲がいいんだな」

 口の端をヒクヒクさせ複雑な表情をする魅雨は、私の時はあれだけ下の名前で呼び合うのには苦労したのに……と顔で訴えるがそれは興には一切伝わらない。

「ま、初めての後輩だから仲良くしたいなーとは思ってるけど下の名前で呼んじゃダメか?」

 普通、先輩は後輩を下の名前で呼ぶものだろうに。

「別に私はいいよ。赤石なんて呼びにくいでしょ? それと私はあんたのこと先輩とか思ってないから」

 一緒に住むからといって態度は変わらず強気な晴奈はまだ一度も俺のことを先輩と呼んでくれたことがない。

「そんな冷たいこと言うなよ。また今度テニスしようぜ。なんか久しぶりにやったら面白かったし」

 結果は散々だったが久しぶりにいい汗をかけた。たまにああいう時間も必要だな。

「ならあんたもテニス部に入ればいいじゃない。うちのテニス部、たまに男女混合で試合するから」

「いや〜、ここに住む奴らが増えたから俺が家主としてちゃんしないといけないから部活をしてる暇ない気がするんだよな〜」

「で、本音は何?」

「練習がめんどくさい。それと二年生だから部活に入りにくい」

 中学の時とは違い、うちの高校のテニス部はガチ勢ばっかだから誘われてもお断りする。

「興くん練習嫌いだっからね。でも家の事なら気にする事ないのに」

 この中で一番まともで一番仕事量が多いであろう里沙はそっとつぶやく。

「親父があんなんだから俺がしっかりしないといけないんだよ。それに部活するよりお前らと一緒にいる方が楽しいからな」

 流れで言っちゃったけどこれ後後恥ずかしくなって布団で一人で悶えるパターンのやつだこれ。

「ふぅん、ならお兄ちゃん。晴奈ちゃんみたいに私の言うこと聞いてくれる?」

「は? あれは晴奈が試合に勝ったからでお前は関係ないだろ」

「そんなこと言っていいのお兄ちゃん。言うこと聞かないと私たちストライク起こしちゃうよ」

「野球でもする気か!」

 残念ながらこの人数ではバレーくらしいかできないぞ。

「間違えたストライキだった。これでお兄ちゃんは私たちに従わなくてはいけない」

「何それ……本気で言ってんのか?」

 我が妹ながら末恐ろしいことを。

 それはつまり朝ごはんや夕ご飯はもちろん、掃除に洗濯などの諸々のことを押し付けるということじゃないか。

「興が悪い。私たちに何も相談せずに勝手に決めるから。これはその罰と思って」

「はぁ……わかったよ。どうせ何言っても聞いてそうにないからな」

 特に魅雨姉はここは譲る気はないらしく、本当にストライキを起こしそうだ。ここは大人しく要求を呑むとしよう。

「それじゃあまず私ですわね。明日から三連休ですからゆっくり楽しみましょう興様」

 チャンスとばかりに八恵か腕にしがみつこうしたのでそれを華麗にかわて、自分の部屋へと向かう。

「はいはい、そういう順番とかはお前らで勝手に決めてくれ」

 どうせ三連休が潰れるのは確定しているのだから順番がどうだろうと俺にとっては全く関係ないのだ。

「あ〜、興様……。仕方ありませんわ。順番はこちら側で決めてしまいましょう。三人だからすぐに決まるとは思いますけど」

「え⁉︎ それだと私入ってないよね八恵ちゃん。妹からお兄ちゃんを取り上げる権利はいくら許嫁の八恵ちゃんにもないよー」

「そ、そうじゃったな…では四人として早速順番を決めようではないか」

 どうやら八恵は華蓮が苦手らしく、いつもより覇気がないままこの場を仕切る。

 が、突然もう一人の参加者が。

「私もそれ入れてよ。あの人とは一緒に兄貴の見舞いに行く約束してるからさ」

 これで五人。

 簡単に思われた順番決めは八恵たちを悩ませた。

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