表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/67

第23話 褐色肌の後輩

 放課後、今日は珍しく一人で帰ることになった。

 いつもなら皆と一緒でワイワイと帰るので少し寂しい。

 それに誰も理由を教えてくれなかったのが気になる。友和も何故か何も言ってくれなかったし。

「さて、どうするかな」

 近くにあるゲームセンターにでも行こうか?

 しかし、残念ながら財布の中身はスッカラカン。

 なら本屋で立ち読みを……と歩きながら頭をフル回転させていると道を阻むように目の前に褐色肌で金髪の美少女が立っていたので横からすり抜けようとするが移動してまたもや通せんぼしてくる。

 それを繰り返して何度かにこれはスルーはできないと諦めてその道を阻んでくる美少女と顔を合わせた。

「俺に何か用?」

 その短い金髪はピンク色のヘアピンで左右に分かれており、特に目がいったのは胸部分のボタンが開けられていてよく見える谷間だ。多分、俺が今まで会ってきた奴の誰よりもデカイ。

赤石(あかいし) (とおる)っていう名前に聞き覚えはある?」

「ん〜と、何処かで聞いたような……」

 だけど俺とどんな関係だったのかまでは全く思い出せない。

「ちゃんと思い出して」

「いや何か俺も気になってきたからちゃんと思い出すけどさ〜、お前って誰? 一年生だよな」

 三年は赤、二年は黄色、一年は緑色と学年ごとに上履きの色で差別化されているがこの娘は体育館で何度か見たことがあり、その時に緑色の上履きを履いていたので一年ということは間違いない。

 言い訳をさせてもらうと決して疚しいことはなく、友和がこの学園で可愛い女子生徒を探すということをしているのに付き合わされた時に彼女が上位に位置付けられていたから印象が深かったというだけに過ぎない。残念ながらその見た目から夏芽さんの顔が連想されるので優勝には至らなかったが。

「思い出したら教えるからサッサと思い出して」

「そんな横暴な……」

 いきなり言われても忘れたことを思い出すというのは至難の技だ。しかもヒントが名前だけとなるとかなり難易度が高いように思える。それにもし子供の頃のことだったら絶対に思い出せない自信がある。

「ん〜、やっぱり思い出せん」

「話にならない」

 呆れてしまって帰ろうとするが一方的すぎて意味が不明だ。せめて名前だけでも聞こうと止めに入る。

「おい待てよ。金髪野郎……ん? 金髪ってもしかして南風中の王子か」

 俺が通っていた中学校からさほど遠くないところにある南風中学校。

 そこでエースをやっていたのが南風中の王子という異名を持つ長髪で金髪の男こそが質問にあった赤石 徹だったのをようやく思い出した。

「やっと思い出したの。遅過ぎ、兄貴がこんなのに負けたなんて嘘みたい」

「兄貴……ってお前あいつの妹なのか!」

 そうとしか考えられない。

 しかし妹が戻ってきて、今度は昔の知り合いの妹と出会うことになるなんて妹続きだな。

「そう、あんた昔は兄貴と同じテニスやってたんでしょ?」

「今は見ての通りの帰宅部だけどね」

 確かに中学の時はがっつりテニスをやっていたが今では日々を無事に送るだけで精一杯だ。

「へえ、でもルールは忘れてないでしょ。ちょっとついて来て」

 することもないし、あいつの妹となると急に興味が湧いてきたので言われるがままに彼女の後を追って行くことにした。




***




「あの女、興様に対してあんな口の聞き方……失礼にほどがあります」

「制服の着こなしがなってないな。ちゃんとボタンをつけるよう注意せねばな」

「興くん、大丈夫かな?」

 電信柱の影から興と金髪美少女とのやり取りを見ていた者が三人。

「あ〜れ、そんなとこで固まって何してるんの?」

 そんな三人に声をかけたのは学校が終わってすぐに駆けつけてきた華蓮だった。

「む、華蓮帰りか? 実はあの後輩がいきなり話しかけてきてな、放課後に興と喋りたいから邪魔しないでくれと言われたんだ」

 それは魅雨だけでなく友和にも伝えられ、興は一人悲しく帰る結果になったのだ。

「私は何も言われなかった。妹なのに」

「学校が違うからな。必要ないと思われたんだろう」

「華蓮ちゃん中学生だからね〜」

 興と二人っきりで話したいのなら華蓮を無視して早めに会えばいいのだ。

「ふ〜ん、でもあの人ってお兄ちゃんとどんな関係なの? 幼馴染の里沙ちゃんなら知ってるよね?」

「う、ううん知らない。何処かで似たような人とは会った気がするけどあの人は男の人だったから……」

 だけど、やはり似ているが確信がないのでそれ以上は何も言わない。

「にゃるほど。それにしてもあの金髪ちゃん。デカイですな」

 遠目でも分かるあれが富士山級なのには流石の華蓮も呆気に取られて見入ってしまった。

「デカイわね」

「確かに大きいな」

「……完全に負けた」

 胸に手を当てる里沙は一気にどんより気分になった。

「里沙ちゃん落ち着いて。とりあえず、追いかけるよ」

 華蓮の指示によって三人は立ち上がり、二人の後を追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ