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第14話 公園にて

「はぁ……、なんでこうなったの」

 家を出たのはいいが行く当てがなく、思い出の詰まった公園のベンチに座って魅雨はため息をついた。

 そんな時、見覚えのある男性がこちらに気づいて近づいて来た。

「あれ、生徒会長」

「天坂……くん。まさかここで君と出会うなんて、今日は色々とある日だな」

「はは、本当にそうですね。それにしても生徒会長はどうしてこんな時間にこんな所にいるんですか?」

 優等生だから生徒会の仕事が終わったらずっと勉強をしているイメージだったので興は目を丸くして驚いた。

「生徒会長はやめてくれない? もう知れた仲だろう。それとここにいるのは別に大した理由はないさ。それに君だってこんな時間に公園に何の用かな?」

「え、ええと。実は理沙の家に運んだ荷物を元に戻すからって追い出されちゃったんですよ。それでアルバムにあった写真のことを思い出してここに寄ったんです」

「成る程、なら私と同じだな。いや、一緒にするのは良くないか。私は追い出されたのではなく自分から出たんだから」

「自分から? ……ああ! 家出ってことですか。俺も何回もしましたよ」

「な、何回もするものなのか? 家出というものは」

 これが人生初となる家出なので一般的には頻繁に起こっている現象だと誤解してしまった。

「いえ、そうじゃないですけど俺の場合は親父が親父でしたからね。自由気ままで、俺が何しても叱ってくれなかったから本当は俺のこと嫌いなんじゃないか、って中学の時は自暴自棄になってました」

 不良になったわけではないが、反抗期になって今思い出すと恥ずかしいほど突っ張っていた。

「そ、そうなのか……。君はそんな親父さんを憎んでいるのか?」

 私の母さんのように、と思ったがそれは愚問だった。

「中学の時は確かに憎んでいました。でも今は違います。俺の為に一生懸命働いてくれてるし、俺に何も言わないのは自由に生きていてほしいという願いの表れだと気づけましたから」

 それは理沙の手助けがあってこそ気づけたことだがその気づきのお陰で興はあの剽軽(ひょうきん)な親父と仲良くやっていけている。

「ふぅん。それで君のお父さんはどんな人なの? ちょっと興味が湧いてきた」

「一言で言うならやっぱり自由奔放とか自由気ままとか、とにかく自由な人なんですよ。俺が一人暮らしすることになったのも急に海外行くとか言い出したからですから」

 それだけではない。

 興が子供の時からいきなり「京都へ行く」だとか「車で日本一周してくる」とかそれ以上のことも言っていた。

「ふぅん。そんな人なんだ」

「あ! でも悪い意味じゃないですよ。なんというか勉強よりも大事なことを教えくれる道徳の先生みたいな感じで。生徒会長……じゃなくて織原先輩のお父さんってどんな感じですか?」

 つい慣れで生徒会長と呼ぼうとしたら途端にジト目になったので瞬時に変えるといつもの澄まし顔に戻ってくれた。

「私、物心がついた時から離婚してたから会ったことがないの」

「す、すいません。そうとは知らなかったので……」

 自分も母親が早くに亡くなっているからいない悲しさを知っている分、より一層申し訳ない気持ちになる。

「別に構わないわよ。それにしても大丈夫なの? あの二人が君の帰りを待っているかもしれないわよ」

 特に要注意人物がいることは一回見て会っただけで知っているし、彼女がこんな機会を見逃すはずかないと魅雨は予感している。

「うっ……、そう言われると急に悪寒が。やな予感がするんで俺はこれで」

 どうしてか、自分の部屋が漁られている気がしてならない。その不安から興はすぐに立ち上がって来た道を引き返して行った。

「ええ、暗いから気をつけて帰ってね」

 こうしてまた一人になると魅雨はまたため息をついた。

「これからどうしよう」

 今更家に帰れないし、急に泊めてくれるような友達は一人二人いるにはいるが親経由で場所が特定されて結局は我が家へと逆戻りだ。

 だからといって制服のまま飛び出してきたのでホテルに泊まるわけにもいかない。

 そんな風に頭を回転させているとガラの悪い同世代の男三人が囲むような形で立っていた。

「なあ、お前月日学園の生徒だろ? 暇なら俺らと遊ばない?」

「いいえ、私は貴方たちとは違って暇ではないので他を当たってください」

 真ん中のリーダー格らしき男が話しかけてきたが魅雨は冷静に対応する。

 それが彼の怒りを買ったらしく、顔色が豹変して掴みかかろうとするがそれは横から入ってきた手に阻まれた。

「すいません。俺の知り合いが迷惑かけました〜」

 そしてその男は魅雨の手を握り、そのまま公園を後にした。

「え? 天坂くん⁉︎」

 街灯に照らされ、魅雨はようやくガラ悪い男たちをあしらったのは帰ったはずの興だと気がついた。

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