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第12話 家宅捜索

「い、意外と大きなお家ね」

 放課後、校門で待ち構えていた生徒会長と三人を連れて我が家の目の前まで来ていた。

「興様、言われたとおり私たちの荷物は理沙さんの家へ運んでおきました」

「そうか、ありがとな」

 昼休みに二人に生徒会長が我が家へ家宅捜索に来ると話すとすぐ様、八恵が携帯で以前理沙の荷物を運ばせた人たちを呼んで既に準備は完了していた。

 あとはボロがでないように話を合わせるだけだ。

「いえいえ、私興様のお役に立てるのなら何だっていたしますわ。それより……あの生徒会長さん、何故このようなことをなさるのでしょう? こんな確認だけなら他の者にやらせれば良いではないですか」

 わざわざ生徒会の長がやって来ることはないのではと、八恵は疑いの目を向ける。

「確かに……でも今は同居してることがバレないようにするのが先決だな」

 気にはなるがそんかこと後からでも調べられる。

「ですわね。折角の私と興様の愛の巣が壊されるわけにはいきません」

「我が家を愛の巣にした覚えはないが頑張ってくれ」




***




「使われていない部屋が多いわね。こんなにたくさんあるのに勿体無い」

 家を一通り回って、リビングへと集まると生徒会長さんはそんな感想を漏らした。

「親父が海外に主張して一人暮らしになりましたし、使う必要ありませんから」

 八恵、理沙の部屋がなくなった今では家具が置かれているのはリビングと興の部屋だけだ。

 それ故にこの外から見ても無駄にでかい家の中はとてつもなく広く感じられる。

 開放感があっても心地よいのだがたまに寂しくなってしまうのが玉に(きず)だ。

「何か隠したりしていませんよね?」

「何か、といいますと?」

「同居をしている証拠です。私が来る前に何処かへ隠してやり過ごそうとしているのではないか、と聞いているんです」

 やはりこの人は鋭い。

 しかし、この家に隠しているというのは間違いだ。まさか隣の里沙の家に怪しまれそうな物全てを運び出しているとは夢にも思うまい。

「また疑うんですか。そんなに俺が信用なりませんか? これは親父の受け売りですが上に立つ者なら人を信じられないとやっていけませんよ」

 部下を信用しない上司は信用されないように、それは痛いしっぺ返しとなるだろう。

「貴方に言われなくとも心配ありません。それに私は人が信じられないのではなく、ただ貴方を信じていないだけです。きちんと信じられる人とそうでない人は区別していますので」

 そんな辛辣な言葉で二人の間には火花が散り、嫌な空気が充満しだした。

「ま、まぁまぁ。お二人さん。ここは少し空気を変えようじゃあ〜ないですか。実はここに興のアルバムがあります。これに何か面白いのはないか探してみようではあ〜りませんか」

 ここで場を和ませるために友和は自信満々に背中から黄色いファイルを目立つように頭の上に乗せた。

「おまっ! それ何処か、持ってきた?」

「なんか本棚の裏にあったぜ。お前のことだから八恵ちゃんに見つからないように隠したんだけど忘れたってパターンだろ? 残念ながらその程度は俺を欺くことはできないぜ」

 言っていることは少しはカッコ良く聞こえるが、どうせ部屋中探しまくったんだろうな〜とその光景を思い浮かべると友和のウザい態度への怒りは煙のように消えていった。

「友和さん友和さん友和さん。ぜひ、そのアルバムを私に見せてください。私の知らない興様のあんな姿やこんか姿をこの目に焼き付けなくてはっ!」

「その言い方やめいっ! でも別に見るのは構わねーなら渡してやれ友和」

「お、おぅ……」

 八恵の必死すぎるお願いに戸惑いを示していた友和だったが、その興の一言で落ち着きを取り戻し、アルバムをそっと八恵に渡した。

「幼い興様……これもこれで可愛らしい」

 このアルバムは親父が撮ってくれたもので、それほど上手く撮れてはいないがその写真の多さからどれほど思っているのかが見て取れる。

 産まれた時から最新のものは春休みに公園へ遊びに行ったものだ。

「あら、この公園って……」

 興味ないかと思ったら横でこっそり見ていた生徒会長が驚いた声を上げた。

「それがどうかしましたか? 何か親父の思い出の場所とかでそこにはよく連れて行かれるんですよ。まあ、俺にとっても思い出の場所なんですけどね」

 八恵のことだけは記憶にないがこの公園のことはよく覚えている。

「そう……確かこの近くだったわね」

「はい。生徒会長もこの公園を知ってるんですね」

「ええ、思い出の場所なの。でも、これ以上居ても時間の無駄ね。帰らせてもらうわ」

 アルバムを八恵から拝借して少し戻って何かを確かめると、急に玄関へと一直線へと進んだと思ったら視線がある一点に集中してその足は止められた。

「ん? どうしたんです?」

「貴方のお母さんって病気で亡くなっているわよね」

「え、ええ……。俺が物心つく前に他界してますけど」

「へぇ、ならあれは一体誰の下着なのかしら」

 彼女が指を差す方には洗濯物が干されてあり、その中には女物の下着が堂々とぶら下がっていた。

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