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第10話 役割分担

「う〜ん、あれ? 俺、なんでこんなところで寝てるんだ?」

 ソファの上で、しかもご丁寧に布団までかけられている。

 思い出そうにも頭が痛くてどうにもならない。

「興様、お目覚めになられましたか。ちょうどいいところですわ。私たち、これからどうするか話し合いをしていたところですの」

 ソファから起き上がり、テーブルの方へと目を向けるとそこにはパジャマ姿の八恵と里沙の姿があった。

 八恵は髪と同じオレンジ色の水玉模様のもので、袖などには白いフリフリがついていて清楚さが際立っている。

 一方、里沙はピンク色のストライプが目立つもので、いかにも女の子といった感じだ。

「これから? 別にそんなの考えなくも……」

「興くん。興くんがそんなのだとまた同じ過ちを繰り返さないために計画する必要があるんだよ」

 何のことかサッパリだが何故かその言葉には説得力があり、仕方なく興はそれに従うことにした。

「そ、そうか。で、俺が寝てる間に何か決まったのか?」

 いつから寝てしまったのかも記憶にないが感覚的には一時間かそこらは寝ていた気がするので大体は決まっているのだろう。

「うん、とりあえず朝ごはんは八恵さんがつくって夕飯は私がつくるこにしたの」

 八恵の料理はあの弁当で証明されているし、里沙に至ってはお母さん級でどちらにも問題はない。

「ふ〜ん。じゃあ俺は昼は購買で何か買うようにするけどお前らはどうする?」

「え? 興くん弁当じゃないの? 前は自分でつくってきてたのに」

「あの時は今回と違って親父が早く帰ってくる予定だったから料理の腕が鈍らないようにするためにしてたけど一年、二年も弁当つくるのはキツイんだよ」

 朝早く起きなくちゃあいけないし、親父が帰ってきたら帰ってきたでその分つくる量が増える。

 あの親父が料理などできるはずもないので朝ごはんも夕飯は全部俺がつくらなくてはいけなかった。

 それで授業中は眠くなってしまうのだ。

 だから二年生になったら手間暇がかからない購買で買うことに決めていたのだ。

「でも、購買で毎回買ってたらお金かかっちゃうから私たちが交代でつくってあげようか?」

「いや、いいよ。金は親父が送ってくれるし、お前らに迷惑かけたくない。その分、朝ごはんと夕飯は期待してるぜ」

「うん、わかった。じゃあ興くんは買い出しをよろしくね。洗濯は私たちがやっておくから」

「おいおい。それじゃあ俺の仕事が少な過ぎるだろ。せめて洗濯くらいさせてくれよ」

「興くん。おじさんと二人きりで生活してたし、華蓮ちゃんはここ最近忙しくてこの家に泊まったりしてないから忘れてるかもだけど、女の子には見られたくない物があるんだよ」

 そう、下着だ。

 年頃の男が同い年の女子の下着を洗濯をするのは流石にまずい。

 なので洗濯は任せてくれと言っているのだ。

「わ、わかった。洗濯は二人に任せるけど俺に何か手伝えることがあったら遠慮なく言えよ。どうせ暇してるんだからさ」

 部活は友和と同じ帰宅部。帰りにゲーセンに寄ったりしてるだけで、これといって用事がないから逆に時間を無駄にしないために手伝いたいくらいだ。

「うん、ありがとう。じゃあ、全部決まったことだし興くんはお風呂入ってきたら? 私たちは夕飯の準備してるから」

 少し遅めになってしまったが、台所を見たところもうすぐ完成のようだ。

「お風呂……。ああ、そういえば入ってないな。でもお風呂……。何か引っかかるな」

 思い出そうとしてもやっぱり頭痛がするので手でそれを押さえつけながらブツブツと言いながら風呂場へと向かうのを確認して、ようやく八恵が口を開いた。

「どうしてあの事を言わないのかしら? 私には教えてくれたじゃない。なら、興様にと話してみては? あの方ならきっと受け入れてくれるはずですわ」

「う……うん。それはわかってるんだけど、やっぱ怖くて…」

「今の関係が壊れてしまうのが、ですか? しかし、いつかは知られる事実なのですよ。ならば理沙さんが直接興様に言うのが道理ではありませんか?」

 その真実がどれだけ彼の心を動揺させるものであっても本人が言わなくてはいけない、と里沙も知っているのだがまだ行動に移せるほど理解はできていない。

「そう……なんだけど。ごめんね。やっぱり私怖いの。興くんは興くんなのに、まるで別人になっちゃうみたいで」

 勿論、天坂 興が別人になることなどあり得ないが理沙にはとても遠い存在になってしまういそうで全てを打ち明けるための決心がつかない。

「分かりましたわ。私も無理強いはしません。ですが、後悔だけはしないようにしてください」

 こうして女同士で大事な話をしている中で興は今だに風呂で頭を抱えてて、あの事を思い出そうとしていた。

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