第48話 呪いの客
収納のスキルをやり出してから益々繁盛。
いやそんな物じゃない。
バッタ屋の外には300人を超える人が列を作っていた。
ゲイリック王子かスェインよ、早く来い。
お前らのためにスキル屋を始めたんだぞ。
「次の人」
「体の調子を見て貰えると聞いてきました。スキルは別に良いんです」
変わった客だ。
手間を掛けてはいられない。
単体の病気診察、そんなサービスやってませんという時間が惜しい。
かなり切羽詰まった感じだからな。
ちゃちゃっと終わらせよう。
「魔力共鳴画像診断」
わお、呪いだ。
「どうですか」
「症状は?」
「怠い。違う。力が入らない。これも違う思ったような力が入らない」
「ええとデバフみたいな感じですか」
「そうそれ」
衰弱の呪いか。
いい物を手に入れた。
小技としては使えそうだ。
俺は呪いを解いてやった。
「どうです」
患者はピョンピョン飛び跳ねると嬉しそうに笑った。
「やった元に戻っている。あんた名医だな。どこの医者でも駄目だったのに」
「大銀貨1枚払ったら帰ってくれ。忙しいからな」
「済まない。この店を宣伝しておくよ」
宣伝は嬉しくない。
だが、呪いの患者は嬉しい。
呪いのレパートリーが増えるのは良い事だ。
300人を超えると呪い持ちがふたりぐらい来てもおかしくない。
今日二人目の呪い持ち。
「どんな症状?」
「夜中、不思議な音が聞こえるんです」
「それはどんな?」
「人が話している声だったり、ピシっていう音です。主人は聞こえないと言って不気味がられています。このままじゃ離婚なんです」
「魔力共鳴画像診断」
うん、呪いだね。
知っている魔力回路だ。
分身にも付けている魔術。
聞く魔術だ。
これは呪いではなく耳が良くなる祝福だな。
確かに原因が分からないと不気味だろうな。
昼間は他の音がうるさいので気にならないのだろう。
このスキルは傾聴という名前を付けて、パッシブではなく任意に発動できるアクティブに魔力回路を変更した。
「何か聞こえづらくなったんですが」
「普通に戻ったんですよ。数日間暮らしてみて違和感があるようならまた来て下さい」
「はい」
また来た時には、傾聴スキルを付与してやるつもりだ。
リスト更新と。
呪いは。
永遠睡眠。
掻痒。
激痛。
時限爆弾。
抵抗。
衰弱。
だな。
スキルは。
身体強化。
回復。
結界。
生水。
病気治療。
千里眼。
収納。
警告音。
傾聴。
だな。
だいぶ増えた。
最近、魔力操作の魔法もどき関連の技を開発してないな。
恰好良い技とかほしいな。
掌打すると衝撃波で相手が吹っ飛ぶような爽快なやつ。
魔力を濃くしても爆発はしない。
爆発の呪いはあるけど、爆発の呪いを埋め込むと、こっちも被害を受ける。
指向性のある爆発みたいなのがベストだ。
いや、衝撃波って音だよな。
なら、音を立てる魔術で出せるだろう。
魔力ポンプに音を出す魔力波を盛大に出させる。
爆発音がして、バッタ屋の壁が揺れた。
「何事?!」
バッタ屋が飛び込んできた。
「魔術の実験」
「そんな物騒な物を室内でやるな」
「人体をぶっ飛ばせる威力だと思うんだけどな。パンチぐらいの威力」
「人間の素のパンチで壁はあんなに揺れない」
「まあ、身体強化を使った魔法ぐらいの威力かな」
「もうやるなよ。お願いだから」
「ああ、次はモンスターで実験だ」
「夕暮れまで客を捌いたらな」
傾聴スキルがあれば夜戦も楽だ。
もっとも100メール圏内なら、流体把握で手に取るように分かる。
夜の森は不気味ではない。
月明かりが美しい。
「ぐぎゃ」
ロマンチックな雰囲気がゴブリンで台無しだ。
「衝撃波」
おっ、けっこう飛んだな。
ふっとばされたゴブリンはピクリとも動かない。
内臓破裂か。
それにしてもこの技はうるさい。
駄目だ。
ボツにしよう。
音がしないのができないものか。
ああ、念動で殴れば良いのか。
「衝撃打」
樹に向かってやってみた。
つまらん技だ。
何で格好良くないのかな。
ああ漫画とかだと効果線が入っているからな。
擬音とかも雰囲気を盛り上げる。
それに種が念動だと分かっているといくら演出を凝っても虚しい。
魔力がそういう力にならないかな。
やりたいことリストに加えるか。
死者蘇生、クリア。
インテリジェンスアイテム作成、未達成。
変身、半分。
霧化、半分。
魔力掌打、未達成。
こんな感じだな。
ファントムがカリーナからのオルゴールの返礼品を持ってきた。
小さい二枚貝の中に香が入った匂い袋だ。
デートの時には身に付けよう。




