第17話 死魔法解禁
「ファントム、仮面を被って姿を現せ」
「へい」
ファントムが銀色の仮面を被って姿を現す。
そして、火球魔法を連発する。
生徒の魔力は枯渇して誰も攻撃する者はいない。
ファントムだけが淡々と火球魔法を撃ち続けている。
オークの上位種が現れ始めた。
戦士系統の上位種は良いが、オークマジシャンとかオークアーチャーとかは強敵だ。
撃ち合いになるからな。
くそっ、一体何匹いるんだ。
ファントムの無限砲台戦法も限界が近い。
「あれって、前にオークのスタンピードを止めたファントム」
「なんでそんな人物がいるんだ」
「なんにせよ助かった」
「安心するのはまだ早い」
ファントムの噂が広まるのは良いが、死を使っている現場を見られるのは不味い。
ああ、もう。
国軍の街道の巡回はどうなっているんだ。
王都が近いんだぞ。
まだ、ファントムはオークの死骸を収納魔法で回収する余裕がある。
あるが、おそらくあと10分で限界が来る。
加速度的にオークの数が増えているからだ。
「こんな所で死ねるかぁ」
聞き覚えのある声だと思ったらプリンクだ。
取り巻きを連れて逃げるのが見えた。
その時にオークが野営地を迂回してプリンクを追うのが見えた。
半分ぐらいそっちに行ったような気がする。
プリンクナイス。
死ぬなら追って行ったオークの大軍と相打ちになってくれ。
少し楽になった。
10分だったタイムリミットが30分になったかな。
でも依然としてオークは増え続けている。
もう、2000は超えたと思う。
その時、矢がファントムの額を貫いた。
えっ、ファントムは消えている。
隠蔽魔法を使ったのだな。
割れた仮面と矢が残されているから、おそらく顔がばれないように姿を隠した。
だが限界が近いのはその通りだ。
死魔法を晒すのとファントムの命では、ファントムの命の方が重要だ。
死魔法を晒すとファントムへの追及が始まる。
ああ、何でこんなことを悩まなきゃならないのか。
もうどうにでもなれ。
「死、死竜巻」
死の領域を前面に展開。
高濃度魔力の竜巻を作り始めた。
魔力感知で見てる奴は、巨大な魔力の竜巻とそれに魔力の循環で繋がっている俺が見えるだろう。
枯渇してからだいぶ経つからそのぐらいの魔法を使えるようにはなっているはずだ。
竜巻が見えたら大迫力になったぐらいで、俺は前進させ始めた。
高濃度の魔力の竜巻はオークの大軍を飲み込んで死に至らしめた。
街道がオークの死骸で舗装される。
俺は少しずつ歩き始めた。
ファントムが俺の前にいて、オークの死骸を収納する。
死竜巻は200メートルぐらい先だ。
このぐらいならオークアーチャーの強弓から放たれた矢も余裕で避けられる。
流体把握も展開しているし。
もうこうなれば単純作業だ。
技を維持しながら、ゆっくりと進んでいくだけで良い。
生徒達が騒ぎ始めた。
「魔力感知を使ってみろよ。凄いぜ」
「あれっ、巨大な魔法の竜巻がある。あれって何?」
「ライド君から伸びているように見えるんだけど」
「ライド君はさすが順位戦1位」
「馬鹿、そんな規模じゃないだろ。これは国を落とすレベルだぞ」
遂に知られたな。
まあ、時間の問題だった。
「ライド君、先生は許せませんよ。こんな戦略規模の魔法を発動できるなんて」
「サマンサ先生、いま忙しいんですが」
「会話する余裕があるじゃありませんか。それにオークの死骸の回収も」
「うがぁ、何でこう上手く行かないんだ。くそっ、誰を呪えば良い」
「まあ、落ち着いて。こいうことができるのを知られるのが不本意だったんですよね」
「ああ、そうだ」
「微力ながら先生も守りますよ。学園にいる間は権力とかもろもろの雑音から守ってあげます」
「期待はしませんが、お願いします」
「ええ、任せて下さい」
確かに学園にいる間はそんなに心配する必要はないのかもな。
戦争に駆り出される可能性も無きにしも非ずだけど。
「平凡な学園生活は送れないな」
「ところで竜巻の魔法は何なんですか?」
「死竜巻と言いまして、死魔法で竜巻を作ってます」
「死魔法だけでも伝説の魔法じゃないですか。さらに上位のオリジナル秘匿魔法とは素晴らしいですね」
「どうやら、オークはここから湧いて出たようです」
木々がなぎ倒され森の中に道が続いている。
この先にオークの王国があるのかな。
よく今まで発見されなかったものだ。
前のオークのスタンピードは前兆だったのだろう。
森の道を辿ると、洞穴に出た。
「ダンジョンですね。とりあえず今回のスタンピードは終りのようです。これからは冒険者が定期的に狩るのでスタンピードは起こさないでしょう」
「ダンジョンコアを拝みたくないですか」
「見たい。それはもう見たいです。学園に研究用資料として寄付してくれたら、どんなお願いも聞いちゃいます」
「ではやりますか」
スタンピードからダンジョンアタックに変更だ。
死も解禁されたしサクサク行こう。




