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愛しのグラビアアイドル

作者: ENO
掲載日:2026/02/27

挿絵(By みてみん)

1990年代の地方都市の空気は、いつもより少し濁っていた。

コンビニの雑誌コーナーで僕は彼女を見つけた。

雑誌の名前も忘れた。

週刊か月刊かも覚えていない。

ただ、ページを捲った瞬間、呼吸が止まった。


垂れ目気味の笑顔。

細い、細いウエストから膨らむヒップ。

健康的で力強い太腿。

そして、水色のビキニのトップを圧迫する、

あまりに巨大な胸。グラビアのキャプションには、彼女の名前が小さく印字されていた。

デビューしたばかりのマイナーなアイドルだとすぐにわかった。

情報はほとんどない。

テレビに出ることも稀だ。

それでも彼女は僕の理想の、年上の「お姉さん」そのものだった。


夜、布団の中で彼女のグラビアページを懐中電灯で照らす日々が続いた。

溜息しか出ない。

ドキドキが収まらず、眠れない。知りたいのに知れない。

そのモヤモヤが、僕をある夢へと導いた。


夢の中では、彼女は言葉を発しない。

ただ、雑誌で見たポーズ、そして雑誌には載っていない、僕だけが望むポーズを次々に取って見せた。僕は近づき、震える手で彼女の肩に触れた。

彼女は微笑み、僕を抱き寄せた。


初めてのキス。

柔らかい唇。

そして僕の手は、自然と彼女の胸へと向かった。


水着の上から触れたその感触は、想像を絶していた。

柔らかさというより、それは生きた温もりを持つ流体だった。

掌に収まりきらない膨らみは、押せば弾力で押し返し、手を離せば優雅な重みで元の形へと戻っていく。

先端の硬さが掌の下で転がるたび、僕の腹の底が熱く攣った。

それは、生命そのものの豊穣だった。


彼女は僕をベッドに導き、上から覗き込む。

そして、ゆっくりと腰を下ろした。


結合の瞬間、無数の粘膜が僕を包み込んだ。

それは濡れた絹でも、温かい蜜でもない。

もっと能動的で、貪欲な感触だった。

まるで無数の小さな口が、一斉に僕を吸い、舐め、歓迎しているようだ。

腰から背骨を伝って脳天へと抜ける、蕩けるような快楽。

現実では味わったことのない、官能の渦。

僕はあっという間に爆発し、現実の布団の上で、冷や汗をかきながら目を覚ました。


それからは、毎夜のように夢の中で彼女と会った。

現実は色褪せ、夢こそが僕の真実になった。


そんなある日、学校で噂が流れた。

教育実習の先生が来る、と。

僕は興味なく教室の窓の外を見ていた。

ドアが開き、担任が新しい先生を紹介した。


「みなさん、こちらが教育実習の佐藤先生です」


僕は顔を上げた。

そして、全身の血液が逆流するのを感じた。


彼女だった。


グラビアよりも、夢の中よりも、ずっとずっと美しい。

垂れ目気味の笑顔はそのままで、しかしそこには印刷物にはない生命の輝きがあった。

スーツの下の身体のラインは、僕が知っているそれだった。


「はじめまして」

彼女は言った。

目が一瞬、僕と合った。


「でも…どこかで会ったような気もするわね」


彼女は、ほんの少しだけ、僕だけに見えるような微笑みを浮かべた。


数週間後。

放課後の保健室。

カーテンが閉め切られたベッドの上で、僕は彼女と抱き合っていた。

現実の肌の感触。

現実の吐息の温もり。

現実の彼女の重み。


夢よりも、百倍気持ちよかった。


「どうして…」

僕は喘ぎながら聞いた。

「どうして僕に会いに来てくれたの?」


彼女は僕の上で動きを止め、俯きかけるようにして僕を見下ろした。

その目は、グラビアの笑顔の時とは違い、どこか寂しげだった。


「あのグラビアの中、ずっと孤独だったの。誰も覚えてくれない、マイナーなアイドルだから。でもね、たった一人、熱心に私を見つめてくれる男の子がいるって、夢の中で知ったの。その想いが、とっても心強くて」


彼女の指が、僕の頬を撫でる。


「夢の中だけじゃ、物足りなくなっちゃった。会いたくなっちゃった。だから…つい、飛び出してきちゃった」


僕は言葉を失い、ただ彼女を抱きしめた。

彼女もまた、僕にキスを返した。


僕らは何度も抱き合い、そして、永遠に続くと思えるほど長く、深くキスをし続けた。

現実の保健室のベッドの上で、1990年代の夕焼けが窓を赤く染める中で。

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