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イエナイ〜揺れるルナちゃんと、付箋が繋いだ物語〜

作者: 双葉
掲載日:2025/12/23

「神様お願いします!」

そう祈ってクラスが書かれた紙を見たら…

「愛莉!私たち一緒のクラスだよ!2ー3だって」

そう言って来たのは、親友のくるみ。

「もう運命だって!」

私たちは、幼稚園からの大親友で、小1から中1まで、ずっと同じクラスなんだ。そして中2も同じクラスだったことが判明した。私は、ルンルン気分で、教室に入った。


キーンコーンカーンコーン

チャイムがなって席に着いた。

「今日からこの2ー3の担任山本です」

そう言ったのは優しそうな女の先生。担任も良さそうな先生で良かった。

「それでは一人一人簡単に自己紹介してもらいます」

私の番が来た。

「姫川愛莉です。好きな食べ物はスイーツです。これからよろしくお願いします」

自己紹介が終わり、他の人の自己紹介をぼーっと聞いていると…

「小林大輝です。好きなアーティストは『Yesterday night』です」

私は耳を疑った。Yesterday nightって私の大好きなバンド!しかも隣の席。そしたら、筆箱にファンクラブ限定のマスコットが着いていた。

「えっ、嘘……!」

思わず声が出そうになって、慌てて口を押さえた。

隣の席の小林くんの筆箱でゆらゆら揺れているのは、間違いなく『Yesterday night』――通称イエナイのファンクラブ限定マスコット「ルナちゃん」。

(これ、超激レアのやつじゃん! 持ってる人、初めて見た……!)

興奮を抑えきれずにチラチラと隣を見ていたら、視線に気づいたのか、小林くんが「ん?」という顔でこっちを向いた。

「……あ、ごめん! そのマスコット、もしかしてイエナイの?」

勇気を出して小声で話しかけると、小林くんは少し驚いたように目を丸くして、それからパッと表情を明るくした。

「そう! よくわかったね。もしかして、姫川さんも好きなの?」

「大好き! 去年のライブも行ったし、ファンクラブも入ってるよ!」

「マジで!? 俺の周り、あんまり詳しい人いなくて……嬉しいな」

小林くんがはにかむように笑う。

その笑顔が、窓から差し込む春の光に照らされて、なんだかドキッとするくらい眩しかった。

「ねえねえ、愛莉何話してるのー?」

後ろの席からくるみが身を乗り出して、ニヤニヤしながら覗き込んでくる。

「くるみ! 聞いてよ、小林くんもイエナイ好きなんだって!」

「へぇー! じゃあ、趣味の合う友達ができて良かったじゃん。……あ、でも、隣の席で盛り上がりすぎて先生に怒られないようにね?」

くるみにからかわれて、私と小林くんは顔を見合わせて笑ってしまった。

大親友と同じクラスになれただけでも「神様ありがとう!」って思ってたのに、隣の席に同じ趣味の男の子がいるなんて。

今年のクラス替え、本当に「運命」かもしれない……!


先生の喋り声が教室に響く。今は私の一番嫌いな数学の時間。居眠りしようと思ったその瞬間、隣から付箋が机に貼られた。その付箋に書いてある文字を読むと、「今日のライブ配信、一緒にリアタイしない?」

驚いて隣を見ると、小林くんは口角を少しだけ上げている。

(えっ、今日の20時からの公式生配信のこと!?)

私も慌ててシャーペンを握り、自分のノートの端っこに小さく返事を書いた。それをそっと切り取って、先生の目を盗みながら彼の机の端に置く。

『もちろん!チャット欄で会おうよ。ユーザー名教えて!』

小林くんは受け取ると、少し考えてからまたサラサラと文字を書き、私の机に戻してきた。

『「ダイキ」でやってる。姫川さんは?』

『私は「アイリ」だよ。見つけたらスタンプ送るね!』

そんなやり取りをしていると、後ろから「コソコソしすぎー!」と、くるみが叩いてくる。振り返ると、くるみが口パクで「楽しそうじゃん?」と茶化してくる。

顔が熱くなるのが自分でもわかった。

大嫌いな数学の公式が、今はなんだか音符みたいに楽しげに見える。

ふと横を見ると、小林くんが大切そうに筆箱のルナちゃんに触れていた。


もう少しで始まる…今は19時55分 ライブ配信も楽しみだけど、小林くんと一緒にリアタイできると思うと心がワクワクする。

いよいよ20時。スマホの画面を見つめる手にも、自然と力が入っちゃう。

通知が届いた瞬間、心臓が跳ねた。

『Yesterday night 緊急生配信!〜新曲発表&重大告知〜』

画面が切り替わり、メンバーの姿が映し出される。それと同時に、ものすごいスピードで流れていくチャット欄。

私は必死に、その中から「ダイキ」という名前を探した。

(いた……!)

『ダイキ:待機!楽しみすぎる!』

見つけた瞬間、思わずニヤけてしまう。

『アイリ:きたー!ダイキくん、ルナちゃんのスタンプ送るね!』

するとすぐに、ダイキくんから返信が来た。

『ダイキ:アイリさん見つけた!ルナちゃんスタンプお揃いだね(笑)』

学校では「姫川さん」「小林くん」って呼び合ってるのに、画面越しだと「アイリさん」「ダイキくん」っていう呼び方になるのが、なんだか特別で、秘密の共有をしているみたいでドキドキする。

配信中、新曲のメロディが流れると、私たちはチャット欄で感想を言い合った。

「ここのギターソロかっこよくない?」

「分かる、ここの歌詞も泣けるよねー」

自分の隣にはいないはずなのに、一緒に音楽を聴いているような不思議な感覚。 

「そして…秋に全国ツアー決定しました!」

心の中は絶対行くぞ!と大騒ぎしていた。

配信は無事終わり私はベッドで寝た。


次の日教室に入ると小林くんが「おはよう」っと言ってくれた。私も「小林くん、おはよう」と返すと

「名前で呼んでいいよ」

と言った。

戸惑いながらも

「大輝くん…?」と言ってみると

「呼び捨てでいいって」

と笑っていた。

「私のことも愛莉って呼んでいいよ!」

「わかった!愛莉。」

自分で言ったことなのにドキッとした。


今日も授業中付箋が机に貼られた。

『眠そうだね。』

『だってつまんないじゃん』

『それな笑 あのさ…嫌じゃなければ秋のライブ一緒に行かない?』

「えっ」思わず声を出してしまった。

「姫川どうしたー」

「何でもありません…」

隣を見ると大輝が笑っていた。


休み時間「一緒にライブ行きたい!」と大輝に言ったらめっちゃ喜んでくれた。その後、くるみに

「めっちゃ楽しそうじゃん」

とからかわれた。

「もうっくるみったら…!」

顔が赤いのを隠すようにくるみの方肩を叩いた。


今日は、くるみと、大輝と一緒に帰った。

「そういえば連絡先聞いてなかったね」

大輝がそう言った。たしかにしてなかったと思い、無事連絡先を交換した。


家に帰り、ベッドに飛び込んで、さっき追加されたばかりの『大輝』という名前を何度も見つめる。意味もなくトーク画面を開いては、キーボードを打たずに閉じて。ただの連絡先なのに、世界で一番大切な宝物を手に入れたような気分だった。

「ああ、私、本当に彼のことが好きなんだ…」

通知が鳴った。びっくりしてベットから飛び起きると、よろしくと書いてあるイエナイのスタンプが送られてきた。私もとっさにスタンプを返すと

『愛莉と行けること楽しみにしてるよ』

なんて送ってきた。うれしさとドキドキのあまりベットの上を転がった。


今日はいよいよライブの抽選の日だ。私のスマホで2人分応募することになっていた。私は神様に祈りながら、応募ボタンを押した。


秋の全国ツアー、最終日の東京公演。大輝と二人で約束した、一番行きたいステージ。

抽選結果が表示されるまでの数秒間が、まるで永遠みたいに長く感じる。心臓の音が耳元まで届きそうなくらい、ドクドクと速くなっていった。

(……あ。)

画面に現れたのは、カラフルな背景に躍る文字。

『チケットをご用意いたしました!』

「やった……! やったぁ!!」

自分の部屋なのに、思わず叫んで飛び上がってしまった。

すぐに震える指で大輝にLINEを送る。

『大輝! 当たったよ! ライブ、行ける!!』

送信した瞬間に既読がついた。彼もきっと、スマホを握りしめて待っていたんだ。

『マジで!? 愛莉、すごすぎる!』

『俺、今めちゃくちゃニヤけてる。当日、最高に楽しもうな』

画面越しの言葉なのに、大輝のあの眩しい笑顔がすぐそばにあるみたいに感じられて、胸の奥がじんわりと熱くなった。


次の日の朝。

教室に入ると、席に座っていた大輝と目が合った。

彼は私を見つけると、周りのみんなには内緒だよ、というみたいに人差し指を口に当てて、それから小さくガッツポーズをした。

私も同じようにガッツポーズを返して、自分の席に着く。

すると、後ろから「おはよー!」とくるみの声が響いた。

「なに二人でアイコンタクトしちゃってんの?」

「あ、くるみ! ライブ、当たったんだよ!」

「わかってるって。愛莉の顔見れば、神様が味方してくれたなーってすぐ分かったもん」

くるみはそう言って、私と大輝を交互に見てニヤニヤしている。

「良かったね、愛莉。……でも、ライブの日までに、もっと仲良くなっちゃったりして?」

「もう、くるみったら……!」

いつものセリフを言いながら、私はこっそり隣の大輝を見た。

大輝も少し照れたようにルナちゃんのマスコットをいじっている。


それから私たちは、ライブ当日をもっと特別にするために、二人で相談しておそろいのグッズをたくさん買った。

届いたばかりのロゴTシャツを自分の体に当ててみては、鏡の前でニヤけてしまう。

(これ、大輝とおそろいなんだ……)

そう思うだけで体が熱くなる。


「好き」っていう気持ちを自覚してから、大輝の何気ない言葉ひとつひとつにドキドキしている自分がいる。

連絡先のアイコンに届く「おやすみ」のメッセージ。

授業中に回ってくる、ちょっとした落書きの付箋。

廊下ですれ違う時に、ふっと目が合ってこぼれる笑顔。

今まで当たり前だった学校生活が、彼という存在がいるだけで、まるでイエナイのアップテンポな曲みたいに、キラキラと輝いていた。

「神様、本当にありがとう」

クラス替えの日に祈ったあの願いは、想像もしていなかった最高の形で叶い続けている。

カレンダーに書かれたライブの日の丸印を見つめながら、私はまだ見ぬ秋の景色に、期待と少しの緊張を膨らませていた。



ついに迎えたライブ当日。同じTシャツとタオルをかけた人であふれかえっていた。

「はぐれないようにね」

と差し伸べてくれた手をうんっと頷きながらギュッと握った。

一緒に記念写真も撮ってライブ会場に入った。ライブが始まると、夢のような世界だった。パワフルな歌声に響く楽器の音。ペンライトを振って一緒に歌って最高の時間を過ごした。


最高の時間は、あっという間に過ぎていく。

アンコールが終わり、会場が明るくなっても、まだ魔法が解けないようなふわふわした気持ちのまま、私たちは夜風が吹く外へと出た。

「……本当に、最高だったね」

駅へ向かう並木道。ライブの余韻で少し枯れた声で大輝が言う。

「うん。一生忘れない。神様にお願いして、本当に良かった」

私がそう答えると、大輝が急に立ち止まった。

街灯の光が、彼の少し真剣な表情を照らしている。

「あのさ、愛莉。神様のおかげだけじゃないと思うんだ」

「え……?」

「俺、愛莉が隣の席で、イエナイが好きだってわかった時、すごく嬉しかった。だから勇気出したんだ……ライブに誘ったのも、今日おそろいのグッズを付けたのも、全部……」

大輝が私の目をまっすぐに見つめる。

「愛莉のことが、好きだからだよ」

その言葉が、ライブのどの曲よりも強く、私の胸に響いた。

私の心の中にあった「好き」という気持ちが、今、確信に変わる。

「……私も。私も、大輝のことが大好きだよ」

私は大輝に抱きしめられた。体が離れると、

「愛莉、俺と付き合ってください」

そう、目を見て言った。

「よろしくお願いします」

私たちは、夜の涼しいかぜに吹かれながら、手をつないで歩き出した。


ここまで読んでくれてありがとうございます!まだ中学生なので、下手なところもあったと思いますが、とにかく感謝m(_ _)mです!

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