Episode8:私は自由の象徴
遂にその日がやって来た。
この日の為に俺は何千何万……いや何億とヨウチューブで彼女のMVを聴きまくった。
ニューヨークからダラスまでプライベートジェットのひとっ飛びでやってきた。
ニューヨークから世界に誇る歌姫。
セラ・ローレン。
『クリスチャン、お~い、クリスチャンってば!』
『はっ! すまん! ボーとしていたぜ!』
『もうっ! あがり症なのだから! 今日もブリブリいかないと!』
『ハイ! みんな! 調子はどうだい! 俺はブリブリ元気さ! クリスチャンだぜ!』
『カレンよ! 世はレボリューションを求めている!』
『今日は俺たちのスタジオにジャンボなゲストがきたぜ! カレン紹介ヨロシクゥ!!』
俺がそうコールすると急にカレンが2、3歩前にでてきて歌いだす。
適当なところで終わると思ったら、なかなか終わらない。
しかも上手くないし。むしろスゲェ音痴だ。
『いい加減にしろ! オメェ!』
本気じゃないけど俺はたまたま手に持っていたピコピコハンマーで相棒の頭を叩いた。
カレンは『ピエ~ン』と変な泣き声をだす。
おい。コレは台本になかっただろ?
俺がツッコミ入れなかったら、一体どうするつもりだったのよ?
『うふふ♡ 実物でみると思っていた以上に面白い人たちね♡』
やっとセラにカメラが向けられた。
『ははは、あまりに酷い余興ですまなかった』
『いいえ。面白かったわよ?』
『セラは気持ちが優しいなぁ』
『ねぇ? 1つ聞いていい?』
『カレン、何?』
『私って歌手になれるかな?』
なれるワケねぇだろ。あんな音痴で。真顔で聞くなよ。
『ええ。きっとなれると思うわ。頑張って』
俺は苦笑いする彼女をみて我慢ならなかった。
『よ~し、カレン、今日紹介する商品をだしてくれ!』
今回もいい加減に呆れたのでさっさといつもの流れを始める。
『今日はヤルキ・マンマン・グローブよ!』
彼女はそう言って真っ赤なボクシンググローブをどこからともなくスッと取り出す。
いや、場違いすぎるだろうが。前回の放送で紹介しろよ。この商品。
『コレを嵌めることでね、やる気が漲ってくるの! ライブの直前でやる気をなくしたら是非コレをその両手に嵌めて頂戴!』
『いや、邪魔になって仕方ないだろうが! マイクも握れないし! 握れたとしても、セラがライブでコレを身に着けている違和感がハンパねぇよ!』
『チョット! 蛇足なんか入れないで! クリスチャン! レジーがセラにこれを嵌めて欲しい! ってオススメしてきた究極の逸品よ!』
いや、何を勧めているの!? あのオヤジ!?
『あぁ~セラ、すまない。でも、商品としては確かな物だろうから俺が代わりに嵌めるよ』
セラはもう苦笑いどころでない冷めた顏をみせていた。
マジで申し訳ねぇ……もう涙がでてきそうだ……
『ちょっと待ったぁ!!』
そこで後ろから男の大声がした。
『セラ!! 君にどうしても伝えたいことがある!!』
真っ赤な薔薇の花束を持った男。
それは俺が愛してやまないメジャーリーガー。トッド・ステアーズだ。
『君の両親は俺のことを認めないと言った。確かに……君のような名家で生まれたセレブに俺のような男は不釣り合いかもしれない。そう思って一旦は諦めたさ……でも、それでも俺はこの花束に想いをこめるぐらいに我慢ができなかった……俺だって相当今じゃ稼いでいるのにって思ってさ!』
えっ……待って……どういう展開? 俺はセラもトッドも大好きだけど、2人は交際をしていたということ? えっ……嬉しいような……嬉しくないような……もう、なんだか頭の中がゴチャゴチャになるぐらい衝撃的なのだけど!?
『トッド……』
彼女はソファーから立ち上がってトッドに歩み寄る。
『ちょっと待ったぁ!!!』
またもスタジオの後ろから大声が。でも、これは聞き馴染みのある声。
『セラ!!! 君にどうしても伝えたいことがある!!!』
俺たちが振り向いたところに立っているのは真っ黒な薔薇の花束を持ったイーサン。
『俺の家族や両親は俺が君の歌を好きで愛してやまないことを「男らしくないから止めろ」と言ってきて仕方がなかった。でも、君はいつだって俺に嘘偽りのない愛の言葉をイヤホン越しに伝えてくれた。俺たちは愛し合った。ベッドの中じゃないけど俺の脳味噌の中で』
サイコパスだろ。誰かコイツをぶっ飛ばせ。
『イーサン、私の歌を聴いてくれていたのね。ありがとう。でも、何ていうか……その……今はファンの貴方にファンサービスをしてあげられる場合じゃないの』
『どうしてだ!! どうして認めてくれない!! 俺たちはこんなにも狂おしいぐらいに愛し合っているのに!?』
イーサンがステージ上へドンドン迫ってくる。
カレンが「嵌めて! お願い!」と小声で例のグローブをセラに手渡す。
そこからセラのパンチで童貞サイコパス野郎がKOされるまで10秒もない。
そこで急に彼女の曲のイントロが流れだす。
トッドからの花束を受け取った彼女はそのなかに仕込まれたマイクを取りだす。そして例のグローブを嵌めたまま歌を歌いだした。
いや、あの、これ、何なの?
全てが終わってイーサンも何事もなかったかのように立ち上がる
カメラに向かってセラとトッドから婚約発表を2人のそれぞれがする。
毎度のことだが、デビーもイーサンもそういった事を俺には一切教えてくれない。何でも俺が現場であたふたする姿がとても楽しいからだとか。そしてそれは今、全米でこの番組が流行っている理由でもあるのだと言う。
帰り道、俺はトボトボとウィスキーを片手に家を目指した。
今回の収録はさぞバズることだろう。
あのセラ・ローレンとトッド・ステアーズが婚約発表をかます番組になるのだからな。
俺のことも全米にきっと知れ渡ることだろう。
帽子を深く被り、分厚いマスクに色の濃いサングラスを身につけ歩く。よりこんな毎日を過ごすことになるのだろう。
「もしもし。ウィル」
『おお、どうした?』
「そろそろいいか?」
『何を? 今回の収録もだいぶ盛り上がったみたいじゃないか』
「ああ、俺が何者であるのか忘れてしまうぐらいになぁ」
『やめたいのか?』
「!?」
俺が言おうとしていたことをジジィが先に言ってきた。
そこでスマホが急に落ちた。
「あれ?」
街灯も次々と消える。
真っ暗な世界。
俺の向かう先に銃を構えた男が立っていた。銃口は俺に向けられている。
「アンタは眩しい男だ」
「お前……」
「薄々気づいていたか?」
「何に?」
「俺が童貞であることに酷くコンプレックスを持っていることに」
「えっと」
だいぶ前からそう思っていたのですけど?
はい(笑)本作1番の見せ場だったと思います(笑)
アメリカになろうのオールスターでハチャメチャに暴れました(笑)
でも、この話が退魔士の話であることを忘れちゃないのです……が結局オチが(笑)
あと2話で終わります。くだらないかもしれないけど、そのくだらないで最後まで走りきります(*´ω`)b




