Episode7:家族を大事にしろ。弱い者は助けてやれ。人生は短い。日々、何人もが亡くなっていく。とにかく、無駄な時間を過ごすなよ
今日はヘイ・クリスチャン! 出張版だ!
ダラスにあるボクシングジム! そことのコラボだぜ!
『ハイ! みんな! 調子はどうだい! 俺はブリブリ元気さ! クリスチャンだぜ!』
『カレンよ! 世はレボリューションを求めている!』
『よ~し、カレン、俺たちが今どこにいるか教えてくれ!』
『元世界チャンピンのレジー・タピアがトレーナーとして威張っているボクシングジム!』
『おおい! 盛大にネタバレするなぁ! でもブリブリいいぜ!』
『はっはっは! ノリがイイ奴らで今日は楽しめそうだ!』
レジー・タピア。薬物の前科があるボクサーにして世界チャンピオンになった男。
俺よりも背丈が小さいから正直舐めた態度をとってもいいと思ったが、彼が喋りだすとどこか迫力のある覇気に押されそうになる。
『レジーはこの番組をご家族と観ていると聞くぜ?』
『あぁ、息子たちに教えて貰ってなぁ。全米で流行っているなんていうものだから、どんなものかと思ったら……なるほど。雰囲気が良い奴らで楽しめそうだ』
『息子さんたちもこのジムにいるのかな?』
『いや、ここにはいない。ボクサーでもない。あ、でも、こんな映像関係の仕事をしているヤツもいるぞ。この番組は映像の見せ方も上手いっていうからさ、どんなふうに撮影しているのか見てくれって頼まれたよ』
いや、大した編集してねぇよ。撮ったものに童貞インポ野郎がペペッとやるだけだ。
『おい! ディレクター! イーサン! 褒められているぜ!』
まぁ。優しさで振ってやるか。
『ふん』
奴はクールぶって腕を組み、偉そうにカメラに映ってみせた。
振るんじゃなかった。マジで後悔したぜ。一生チェリーのままでいろ。この野郎。
『ねぇねぇ! レジー! 私ってばレジーのドキュメンタリー番組をみたのだけど、番組最後に家族に吐き捨てた、あの名台詞をここでもやっちゃてぇ!』
いや、吐き捨てたって失礼だろテメェ。
あとセレブかもしれないが、俳優でもない男にそんなリクエストをするなよ……
『家族を大事にしろ。弱い者は助けてやれ。人生は短い。日々、何人もが亡くなっていく。とにかく、無駄な時間を過ごすなよ』
ノるなよ。しかも急にメッチャ真顔で再現するなよ。
『よ~し、カレン、今日紹介する商品をだしてくれ!』
俺はいい加減に呆れたのでさっさといつもの流れを始めることにした。
『今日はどんな汗でも驚くほどの速さで拭き取れるタオルよ!』
何だそりゃ? 看板文句の胡散臭さにも程があるだろう?
『レジー。クリスチャン。貴方たちに汗をしっかりかいて貰うから、今からスパークリングして頂戴』
はぁ!? 聞いてねぇぞ!?
『お、おい。たしかにエクササイズをするみたいなことは聞いたが、元世界チャンピオンのボクサーとスパークリングをするとは聞いてないぞ!?』
『はっはっは! 本気でやるわけがないだろう! 安心してグローブをはめてくれ!』
俺は周囲が大爆笑する空気に飲まれるままリングにあがった。
どうするっていうのだ?
俺は退魔士としてひと通りの訓練は受けてきた。
俺がその気になれば、この男と壮絶な殴り合いなんてできるのだろうが……
『あはは♡ どうしたの♡ クリスチャン♡ そんなクネクネダンスなんかして♡』
できない。この番組は全米の一般人がみているのだ。変なマネなんか……
俺は全米に対して気を使ったが為に汗まみれになった。
そして例のタオルでひと拭き。
『うぉっ!? 何だ!? コレは!? なんか触感が気持ちいいぞ!?』
いや実は普通のタオルなのだが、いつも俺はそんなオーバーリアクションで商品を紹介する。
『確かにクリスチャンが言うとそんな気がするな! はっはっは!』
レジーは余裕ありげに無難なコメントを残す。
俺だけが必死じゃねぇか。
何だか辱めの目にあった気がしたが、今日1日で俺は何とも言えない充実感を得た。
そういうことにしよう。そういうことにしないとやってらねぇよ。
『ねぇねぇ! クリスチャン! 今日の収録が全米で話題になっているわよ!』
コイツもすっかりスター気取りになりやがって。
『セラ・ローレンから番組にでたい! ってリプライがとんできたわ!』
何?
何だと!?
やるじゃねぇか!! 俺たち!!
本作の真骨頂にやってきました。
僕が書いていて楽しいです(笑)次号もお楽しみに(笑)




