Episode5:だからホー・ホーキンって誰やねん!?
ここは戦場? あっちこっちで爆発音がする。
俺は迷彩服を着ていた。匍匐前進をしながら武器を構える。
俺はいっとき「経験の為に」と米兵になっていた時がある。戦地への派遣はなかった。
だからコレが夢だと分かるのに時間はかからなかった。
顔をあげる。
そこに巨大な人の顏をした化け物が鼻息を荒くしてこの地を荒らしていた。
「なんだこりゃ」
その巨大な顏に見覚えがあった。
アイツだ。バーで俺に話しかけてきたアジア系のオヤジ。
『ホォ~~~!!! ホォ~~~ギィイイイン!!!』
野郎は変な唸り声をあげて鼻から隕石のような砲弾を発射し続ける……
「ウォォォオオオォォオオォオ!!!」
ウィルのジジィが空に舞い上がるような大飛翔をしてホーキンの顏をした化け物へ突撃する。俺は何が何だか分からないままに叫ぶ。
「ジジィイイイィィィイイィィイィッ!!!」
はっ!
俺が目を覚ましたのは自宅じゃなくてスタジオだった。
「どうした? クリスチャン? 冷や汗をかいているぞ?」
心配そうにデビーが俺の顔を覗きこむ。
「いや、大丈夫だ。多分。あはは。ははは」
「寝不足か? 夜遊びはほどほどにしろよ」
「いや、夜遊びなんかできねぇよ。今の俺はこのアメリカである意味スターだからな」
「じゃあプレッシャーから寝てねぇってやつか? 子守歌を歌いに家にいってやろうか?」
「いらねぇよ。むさくるしくて仕方ねぇ。やってくれるならセラ・ローレ……おっと何でもねぇよ。そういやぁカレンは今日も来ないのか?」
カレンはここ3日ぐらいスタジオに来ていなかった。
まぁ~これほど全米で話題になって気が気でなくなるのは無理もない。
まだ彼女は17歳の女の子だ。
ワイルドで逞しい俺だってこの頃は変な夢をみるようになった。
まだ大人にもなっていない大人しい女の子にこの仕事は重すぎたのだろう。
まったく、コレで学校にいけなくなって生きていかなきゃいけないってなったら、可哀想にも程があるだろう。
傍に居ても何も話す事なんてなかったのに。
なんでこんなに心配しちゃうのだろうか。
俺はカメラをしっかりと見て、いつもの決まり文句を言ってみせる。
「ハイ! みんな! 調子はどうだい! 俺はブリブリ元気さ! クリスチャンだぜ! 今日もカレンはいないけど、元気にやっていこうぜ!」
「カット」
「何で?」
「カレンの話はするなってデビーが言っただろう。オッサン」
「このチビが! まだカレンが辞めたって決めたワケじゃあないだろうが!」
「はぁ……何とか言ってくれよ。デビー」
「あぁ……その……お前の気持ちは分かるよ。だけど、ここで彼女が番組に出ていない事を主張し続けたら、彼女にとってソレがダメージになることが分かるか? クリスチャン」
「だから辞めたってワケじゃないだろうが!!! アイツが辞めたってなってからアイツのことをなくせよ!!!」
俺はそのまま椅子を蹴り飛ばす。
あれ? 何で俺ってこんなに熱くなっているの?
そんなことを胸に秘めたままスタジオを出ようとすると見たいと思っていた顏がそこにあった。
「カレン!」
「クリスチャン……デビィ……イーサン……勝手に休んでごめんなさい」
「あぁ~このコの父親やでも祖父でもないが、身内の者だ。ゴンノスケ・ミヨシだ」
「アンタは!?」
「ん? 何か?」
俺はカレンの真横につくこの男のことを覚えていた。
「ホー・ホーキンだろ!!! 何しに来た!!!」
ただでさえ静まりがちなスタジオがこれまでになく静まりかえった。




