Episode4:バスってミステリアス!
『ハイ! みんな! 調子はどうだい! 俺はブリブリ元気さ! クリスチャンだぜ!』
『…………………………』
『え~と、カレン、今日紹介する商品をだしてくれ」
スッと無口の少女が画面の横に消える。そして掃除機を持ってきて帰ってくる。
『お~う! イケてる感じの掃除機じゃねぇか! なぁ! カレン!』
『…………………………』
『ま……まぁ……使ってみようか? うわっ!! すごい吸引力!?』
こうしてテレビに映る俺と彼女がなんか滑稽にみえるそうだ。
それで俺の冠番組「ヘイ! クリスチャン!」は瞬く間に全米の巷へと広がった。
「おい。ジジィよ。通販番組のMCを俺にさせて正気か?」
『でも、ノリノリじゃないか。満更嫌でもないのだろう?』
「うん、まぁ……悪い気はしねぇよ……悪い気はしねぇけど……ほら、俺って退魔士だろ? なんかコレで大スターになって退魔士としての自分を捨ててしまうかもしれねぇと思ってさ。そしたら蒐集家のみんなにも合わせる顏がなくなるだろう」
『お前にしては現実的だな。だけど心配するな。蒐集家メンバーはみんな「ヘイ! クリスチャン!」でワイワイしまくって大繁盛さ』
蒐集家とは俺とジジィが所属している極秘組織だ。メンバー全員が退魔士だが、その顔を隠して生きている。全米各地で魔獣や魔人を極秘で消滅させる活動に勤しむ。この俺ですらジジィ以外のメンバーを知らない。でも、全米に9人いるという情報は持っている。
もっとも、退魔士の組織は蒐集家だけじゃない。都市伝説で語られるようなドラゴニアやイルミナティ紛いの怪しい奴らもたくさんいると言うのだから。
あ、そういやぁジジィに聞かなきゃいけないことがあった。
「ヘイ! クリスチャン! の収録の前日だったかなぁ。ホー・ホーキンを名乗るオヤジとバーで出会った。アンタの名前をだして得意げに色々話してきたぜ?」
『ホーキンって……ははは……そんなバカな。小説にでてくる架空のキャラだろ? 変なオカルトマニアが話しかけてきただろ? ははは……はは……はぁ』
やっぱりそうか。妙なオヤジだと思ったのは思ったが、杞憂に過ぎなかったか。
でも、俺が妙だと思ってやまないのにはちゃんと理由がある。
「よろしく」
「あー」
「頑張ろう」
「…………」
通販場組で一緒になるカレンって女子がとにかく根暗だ。
「…………………………」
収録中もオフレコも何一つ喋らない。いや、全く何も言わないワケじゃないが、言っても「うん」「いや」「わかった」など一言の返事ぐらいだ。表情も乏しい。ときどきドジを踏むこともあり、意外とお転婆さんに感じる一面もある。でも、だからって謝ることもしない。
まぁ、それで番組がウケているっていうのだから、気にしても仕方ないのか。
俺は好物のドライフルーツとウィスキーを口にして洗面所に向かう。
何かを見落としている気がした。
気がつけばベッドのなかで眠る。
その晩、俺は不思議な夢をみた――




