Episode1:ホー・ホーキンって誰やねん!?
ダラスにあるアメリカン・ダイナー「アフターヌーンティー」の片隅。
夜はバーになるこの店でいつものようにストレートの効いた酒を何杯も飲む男がいる。
こう言ったらちったぁサマになるだろうか?
俺、クリスチャン・ジョンソンは退魔士として全米を駆け巡っては魔獣や魔人退治に精をだす。しばらく長期休暇が貰えるということで地元に帰って好物のアルコールを飲んでは物想いに耽る。
この国には色んなヤツがいて色んな生き方があるけど、俺はこんな生き方で満足だ。
物心ついた時から俺は退魔士となっていた。ウィルのジジィにそういう力があるのだと教えられて訓練を受けた。その頃から学校は転々としていたし、大人になっても表面で安い仕事を請け負っている。本業のほうで何倍も稼いでいるからな。何杯だっていけるワケだ。
「チョット。いいかな。そこのオッサン」
「あ?」
俺がカッコよくキメ台詞を胸の内で連発してきたところ、明らかに俺よりもオッサンなオッサンに話しかけられた。いや、オッサンじゃねぇよ。まだ20代だっつーの。
「お前さんが強い退魔士だっていうのはよく知っている者だ。長期休暇に入ったっているのも知っている。このあとの仕事で一緒にやる者にもなる。挨拶をしようと思ってだな」
「誰だ? 可愛くねぇ女じゃなきゃ俺は一緒に飲みたくねぇぞ?」
アジア系のオッサンだ。いや、爺さんと言ったほうがいいか。だいぶ老獪な気がする。
「まぁ。そう言うな。ウィルのほうからも後で電話があるだろう。私はホー・ホーキンだ。ドラゴニアのOGを務める」
「ホー・ホーキン? 今は生きてない筈だぞ? ちゃんと本名を名乗りやがれ。ジジィ」
ドラゴニア。それは都市伝説にも謳われる魔術集団だ。ロスのリトル・トーキョーに拠点を置き活動する組織だが、それが全米退魔士の世界に名を轟かすことはない。
ホー・ホーキンは巨大な魔人と戦って散ったと聞く。俺がこのダラスで生を授かった時と時を同じくしての話だ。
「俺はいま丁度いい感じで酔っている。変なことを言えば、その頭をカチ割るぞ? なぁ?」
「ふふふ、だから挨拶だけで来たと言っている。ここで私のカンフーを披露してもいいものだが、ホー・ホーキンが実は生きていて健在だったと騒がれてはたまったものじゃない」
どうも只者じゃないのは確かだ。なんか胡散臭いが。
俺は溜息をついてグラスの中身を空っぽにしてやった。
「このあと、ウィルのジジィから詳しいことを聞いてやる。ただの冷やかしできたのならば、俺はテメェと一切口を聞かねぇからな」
俺はそう言って店をでることに。
店にあるテレビに映るのは野球選手のトッド・ステアーズが見事3者連続三振をやってのけた場面だ。まったくよ、変な野郎が絡まなきゃ楽しく野球を観られたっていうのにな。俺はそのまま家路を辿る――




