侯爵令嬢の一世一代の賭け事
「王家に嫁ぐのは嫌です。」
初めて言った大きな我儘がコレだけだと思います。
王家と縁がない侯爵家は我が家だけというのも理解はしています。
だから、嫌なのです。
二日前に、第一王子と顔を合わせました。
光が当たる度に煌めく銀髪、次期王だと確定するルビーのような紅い目・・・。
作り物で有るような整った顔。
以上です。
何故かって?「アルドリッヒだ。」と鈴のような声で名乗っただけで40分以上静寂空間に居たのです。
紅茶や焼き菓子に互いに手を付けず。いえ、付けれないというほうが正解でしょうか。
紅い瞳が此方をジーッと見ているのです。
この空間に耐えられなかった私は、「失礼します。」と逃げた。
ええ、逃げました。彼を精工に作られた人形だと思ってしまったのです。
人間味を感じませんでした。
だから、父上にこう伝えました。「王家に嫁ぐのは嫌です。」と・・・。
ええ、父の姉である叔母の公爵夫人にも聞こえるように・・・。
呆気にとられた父はナイフとフォークを床の上に落とすほど動揺したみたいです。
当然でしょう。早めの反抗期なのかと疑われましたが、転生者である私は今年で42歳です。ええ、ロゼリアに生まれ変わった時の年齢も足してです。
ロゼリア・フィーネ・ライオネル 今年で5歳になります。
赤ん坊の時に明りの魔法と冷風・暖房の魔法を使っていた事もあります。
全部、無意識なんですけどね・・・。
まぁ、昔のことは置いておきましょう。
今は、交渉できるように交渉する事です。
「あの子の何処がダメなの。」
公爵夫人が聞いてきました。
「私は愛されそうにありません。」
携帯恋愛ビジュアルノベルの中の一つに私と同じ名前の悪役令嬢が出てきたと思います。
二つ名が「人形使い」。王子を傀儡のように扱うと表現される描写が大量にあった。
ええ、王子の方が人形に徹していたのです。結果、男爵令嬢と結婚するんでしたっけ?
ええ、ザマァが確定しているのです。なら、早めに逃げさせてもらいたいのです。
「私の旦那が仲介役をします。ルードリッヒ王と賭けましょう。」
その一言を侯爵夫人が発すると、何事もなかったように食事会が終わった。
王様と賭けするなんて・・・。と思っていなかったから。
「契約書もらってきたわよ。」
ロゼリア・フィーネ・ライオネル
20歳になるまでにアルドリッヒが婚約破棄を行った場合、ルードリッヒ・アルフレッド・カーマインは王を辞し、ビクトール・フレッド・カーマイン王子に王座を譲る。
そして、アルドリッヒ・ロイド・カーマインは平民となる。
王子と名乗れば反逆罪で捕らえ、処刑する。
ルードリッヒ・アルフレッド・カーマイン
えーっと、私に利益がありませんけど?しかもビクトールは三男のはずです。
叔母様にも利益がありません。
「利益がないと思ってますね。あなたの利益は王家に嫁がなくていい。コレだけです。」
「おばさまの利益は?」
「直接、小言を言われなくなる位ですね。質素な生活をしてると金を使えと言ってくるのです。国民を何と思ってらっしゃるのか。そんな王を引き下ろすことができるのです。」
「あと、あなたはこれを読んでおきなさい。」
アルドリッヒ・ロイド・カーマインとロゼリア・フィーネ・ライオネルの婚約を破棄する。
「これだけの書類ですか?」
「ええ、二人のサインが書かれたら私の所に飛んでくるようにしてあるわ。」
「飛んでくるのですか?」
ニッコリと返された。冗談だろうと思った。
「この書類は王子様に渡しておくわ。貴方には必要ないものだから。」
そこから学園に入学するまでが地獄でした。
マナーや言葉遣い、文字や計算など簡単なのはここまで・・・。
月に一回あの王子様に会うこと。1時間ほど互いに沈黙しているのである。
王家のメイドがやってくるまでそれが続くのだ。
好きな食べ物は?とか好きな本は?など交流を果たそうとするが、紅い目がジーっと見てくるだけ。
私はどうするべきなのか理解できなかった。
12歳のころから王妃教育が追加された。少しは難しくはなったが、王子との時間よりましだった。
そして、王宮で普通に話す王子がいた。
人見知りではない。叔母の言葉に信ぴょう性を得た。
次の顔合わせの時になぜ私には話してくれないのですか?と問いかけたが、いつもの結果に終わった。
15歳に成るぐらいに学園の招待状が届く。気が重かった。
なるべく、王子に顔合わせない学科を選んだ。
顔を合わせる可能性があるのは魔法科ぐらいだろう。
半年間ほんとに顔を合わせることはなかった。ほかの生徒が王子のうわさをしているくらいだ。
いえ、私も巻き込まれているんですけど・・・。王子の剣術と私の魔術どちらが強いかと言う話題で・・・。
結果でいえば私が勝ちました。魔法も使いましたが、剣で・・・。
身体強化・運動神経強化のバフ魔法を使いました。
一撃で勝てると思っていたのでしょう。剣先を砕きました。人形のような顔から焦りも感じなかったので返す刀で根本の方から砕きました。
砕いた瞬間に立会人から勝負ありと止められましたけど・・・。
そこからの二つ名が「ゴリラ」だの「魔女」だの不名誉なものばかりです。味方であるはずの魔法科からもそう呼ばれています。
ですので、学園側に卒業試験を受けさせてもらいました。
結果は簡単です。三年後の卒業式当日まで顔を出さなくていいと認可されました。
そこから冒険者として活動してました。
いえ、課外活動の時はさすがに学園に居ましたけど・・・。
それ以外は普通に狩りをしてましたね。マジックバックの魔法を作った時には大量に持ち帰り過ぎてギルドをパンクさせたほどです。 いい思い出です。
で、卒業式の2週間前にある前夜祭の時まで進めますね。
案の定、男爵令嬢を階段から突き落としただの、数々の嫌がらせを・・・。うんたらかんたら。無駄に話が長い。で案の定、契約書にサインして渡してきた。サインしろと偉そうに言ってる。
サインしたのです。そしたら契約書がスッと消えたのです。
「では、失礼します。」
「謝罪しろ。」
「ちなみに、私があなたを頬を打ったですわよね。どのぐらいの威力で打ったのでしょう?」
「全力ですわ。」
「そう。」
魔術で全身鉄の鎧を生成して、もちろん中身も鉄だ。
「全力でねぇ・・・。」
頬の部分を打った。首が弾け飛び、壁に穴が開いている。
「なら、なぜ生きているのかしら?」
令嬢は失禁してた。喧嘩売った相手が化け物だったから。
「階段から突き落としたら殺してしまいますからやらないですけど。髪を燃やされたでしたっけ?」
彼女の腰まである髪を全部、燃やした。毛根から・・・。
「私ならこれぐらいします。」
「狼藉者だとらえろ!」
王子は叫びますが、誰も反応しません。当然です。
階段から突き落とした。あたりから、彼女と王子の後ろで彼女の記憶が流れているからです。
階段から突き落としたは2段ぐらいから自分でこけてました。その後も出てくる出てくる自作自演・・・。これが勝利を確信した人の慢心だと卒業前に魅せられているのです。
使った魔法ですか?幻影魔法と心理魔法を使った再現VTRでしたっけ。まぁ、魔法科にいても誰も知らない魔法が何個か在りますし問題ありませんね。
「王子様が相手になってくれるのですか?いえ、あなたは平民に落とされるのでしたわね。」
王子様がその言葉に何を言ってるんだ?という顔をしてます。
「ああ、気にしないでください。賭けは私の勝ちですので。」
そう言って私は前夜祭を後にした。
そして、今。私は卒業式の筆頭としてあいさつをしている。
禿頭の令嬢と元王子は見当たらない。ここは貴族の為の学校なのです。
恋愛系のザマァ系でギャンブルって無いよねーって思って書きました。