表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

プロローグ

プロローグ 無音の呼吸

 由美は目を覚ました。朝の光が窓から差し込み、部屋を照らしているが、いつもとは違う冷たさが感じられた。心臓が速く鼓動し、体が少し震えているのに気づいた。何もかもが、少しずつ、何かが違う。それを、由美ははっきりと感じていた。


 身体を起こすと、頭が軽くくらくらとした。まるで、このまま倒れてしまうんじゃないかというような感覚。それが一瞬だけ、脳裏をよぎる。由美は深呼吸をしてみたが、息がうまく吸えない。胸のあたりに重いものがのしかかっている。


 何だろう、この感じ…。


 彼女はゆっくりと目を閉じ、静かな朝の音に耳を傾ける。遠くで犬が鳴く音、車が通り過ぎる音、風の音。しかし、その音すべてが無機質で、冷たく響いているように思えた。


 「私、もう長くないのかもしれない」

 そんな思いがふっと浮かんだとき、由美は驚いたように自分の心を叱った。そんなことを考えるなんて、まだ早すぎる。でも、なぜかその予感は消えなかった。まるで、死というものが、誰かに告げられるように、彼女の体にしっかりと刻まれているような感覚。


 部屋の隅で、浩一が寝ている姿が見える。まるで何も知らずに、穏やかな眠りに沈んでいる。その姿が、由美にはどこか遠くに感じられた。彼が目を覚ますと、またいつも通りの生活が始まる。しかし、この静かな時間は、もう二度と戻ってこないのだろう。


 由美はふと、心の中で自分に問いかけた。


 「私がいなくなった後、浩一はどうするのだろう?」

 その問いに答えることができなかった。何もわからない。ただ、そう感じた。


 その時、由美はひとつの決意を固めた。自分が残すもの、それは何だろう。もし本当に死が近いのなら、その前に何かを伝えなければいけない。だが、それが何なのか、まだ彼女はわからなかった。



評価お願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ