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【制裁編】死ねよ

「は?…何…これ、……何で?」


声が震えているのが自分でもわかった。でも、どうしようもなかった。


出会い系サイトに表示された「江藤瑠奈」の名前と番号。「♯家出中。神待ちデス(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾」「♯ゴ有ホ別苺」――それを前に、私はまるで文字の読み方を忘れたみたいに固まっていた。


「何で私の番号が載ってんのよ!宏美!!」


隣で瑠奈が声を上げる。その声があまりに刺々しくて、私は思わず顔を背けた。だって、彼女の怒りの矛先がこっちに向いているのは明らかだったから。


「…だから、知らないって!私だって意味わかんない!」


言い訳する声が空回りして、教室中に拡散していくのを感じた。だって、ほんとに知らないんだもん!何かの間違いなんだって!

…でも、その間違いを説明する言葉が見つからない。


「何それ!アンタ、さっき自分で書き込んだって言ってたじゃん!」


瑠奈がスマホを握りしめたまま、私を睨む。その視線に思わず一歩下がる。怖い。こんな瑠奈、見たことない。


「いや、確かに言ったけど、それはブス川のことで――」


「ふざけんな!何で私の番号になってんの!?アンタ、わざとでしょ!?」


「違うって!絶対違うから!」


必死に否定するけど、誰も信じてくれない。教室中が私たちを囲むようにざわついている。その視線が痛い。誰も助けてくれない。ただ、瑠奈の側について、私を悪者にする空気ばかりが広がっていく。


「最低……ほんっと最低!」


瑠奈の取り巻きが声を揃える。普段は笑顔で「宏美~!」なんて寄ってくる子たちが、今はまるで知らない人みたいに冷たい目をしている。


「死ねよ!」


美兎がそう吐き捨てた瞬間、私は胸がズキンと痛むのを感じた。


死ねよ、だって?…違う、私は言われる側じゃなくて、言う側でしょ?本当にそんなつもりで言ったの?みんなひどい、自分たちだって同じことしてたくせに、何で私だけが悪いみたいになってんの?


「……ふざけんなよ」


気づいたら、そう呟いていた。声は小さかった。でも、教室中に響いたみたいに静まり返った。


「何が死ねだよ!アンタらだって同じように笑ってたじゃん!何で私だけ責められんの!」


そう叫ぶと、教室の空気が一気に冷えたのがわかった。みんなの視線が痛いくらいに突き刺さる。瑠奈も、美兎も、真由も、グループ全員が私を見下ろしているように感じる。


「…お前ハブだから」


「…………………………………!」


―― 私 の、学校生 活は、終 わっ   た?


言ったのが誰なのかなんて、どうでもよかった。ただ、その一言で私は完全に孤立した。周りの笑い声が遠ざかっていくような気がしたけど、本当はどんどん近づいてきている気もする。笑われているのは、――私??


「……なんで、なんで、こんなことに……」


声にならない言葉が喉の奥で絡まった。視線を落とすと、手が震えているのがわかる。でも、止められなかった。止める方法なんて知らなかった。


私はただ、一人で立ち尽くすしかなかった。

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