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決意

「…笑ったら、何だかお腹空いた。ご飯食べようかな。」


ゆっくりベッドから立ち上がりながら、そう言った。先ほどまでの涙と動揺が嘘のように消えたとは言えないけど、少なくとも笑うことができていた。それが少し不思議だった。キリアンが歌い切ったあの主題歌のせいなのか、自分でもよくわからないけど。


キリアンは私を見つめて、静かに頷いた。その仕草が妙に堂々としているせいか、私の「ご飯を食べる」という軽い発言が、まるで重大な宣誓のように聞こえる。


「あ、これ……まだ開けてない。」


机の上に置かれたコーヒーゼリーを見て、私は少し照れくさくなりながら声をかけた。さっき買ってきたものだ。キリアンの分と思って渡したのに、手をつけていない。


「食べなかったの?」


「いや、食べなかったのではなく、食べるべき刻ではないと判断した。」


真顔でそんな説明をされても困るんだけど。でも、キリアンの性格ならこう答えるのも納得がいく。つまり、なんとなく気を使ってくれていたってことだろう。いや、気を使うというより、礼儀だと考えたのかもしれない。どちらにせよ、ちょっとだけ胸が温かくなった。


「……ありがとう。」


私はそう言って、少しだけ目を伏せた。なんとなく恥ずかしかった。それから顔を上げて、真正面からキリアンの顔を見てみる。


「キリアン。」


彼の鋭い目が、まっすぐにこちらを向く。その視線に一瞬だけ飲み込まれそうになったけど、今日は言いたいことがあったから、逃げなかった。


「……ごめん、なんかいろいろごめん。泣いたり、怒ったり、叫んだり。」


「私、もっと強くなるよ。もっと自分を好きになれるように頑張る。」


声が震えなかったのが、少しだけ驚きだった。言葉にした瞬間、自分の中で何かが動き出すのを感じた。これはきっと、ただの自己満足かもしれない。けど、今の私にはそれが必要だった。


キリアンは、少しだけ表情を緩めたように見えた。そうしてから、いつもより少しだけ柔らかい口調でこう言った。


「それでこそ、俺の妖狐だ。」


心臓が跳ねる音が聞こえた。いやいや、これってただの設定なんだよね?「妖狐」って呼ばれるたびに変な感情が湧くの、やめてほしいんだけど。だけど、今のこの瞬間は――ちょっとだけ、素直に嬉しかった。


「ふふ、ありがと。」


笑いながらそう答えるのがやっとだった。気を抜けばまた何かに飲み込まれそうだったから、笑顔を保つことで自分を支えた。だけど、その笑顔を返せたことが少しだけ誇らしかった。


「じゃ、一緒に食べよっか。」


私はそう言ってキッチンに向かって歩き始める。


まだ自分の中の弱さは消えていないけど、少しずつ、ほんの少しずつ変われている気がした。それはきっと、あの頃の私が聞いたら笑いそうなほど小さな一歩だろうけど、今の私にとっては十分大きな一歩だった。

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