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le blood Heaven

布団の中で嗚咽を漏らしていた私の耳に、不意に低く、澄んだ声が聴こえた。


「瞳の奥、映るCrimson Sky――」


……え?


涙で腫れぼったくなった目をぎゅっと閉じたまま、耳だけがその声に集中する。何かを聞き間違えた?いや、そんなはずはない。布団越しに聞こえてくるこの声は、間違いなくキリアンの声だ。彼の歌声はどこか神聖で、それでいて哀切な響きを持っていた。


「鍵を失ったEdenは静かに崩れる――」


次のフレーズが来た瞬間、私は急に現実に引き戻された。確かに今、彼は歌っている。低くて深い、澄んだ声で。だけど、その歌詞……どこかで聞いたような気がする。というか、聞き覚えがある。いや、待って、これって――。


「天使のいのりが滴る夜に

約束の地を探す旅路へ――」


やばい、完全にアウトだ。思い出した。これは紛れもなく、高校時代の私が一生懸命書いた「ブラッド・ヘイヴン」の主題歌だ。あの頃はカッコいいと思い込んでたけど、今聞いたら恥ずかしすぎて死ぬ。しかも、それを本人(?)が熱唱するなんて――。


「ちょっ、待って、待って!」


私は布団をバタバタと揺らしながら、必死で叫ぶ。


「壊れた時間に囚われたWings――」


「うわーっ!キリアン、ストーーップ!」


思わず布団の中から叫ぶけど、声なんて届いてないみたいだった。


「やめて!やめてってば!」


声が上ずる。私はジタバタと暴れるけれど、キリアンの腕の中で全く身動きが取れない。彼の抱擁は強くもなく、弱くもない。ただただ、私が逃げられないように固定しているだけの絶妙な力加減だった。


永遠とわの楽園を守るため――」


ちょっと待って、嘘でしょ!?布団の中で私を抱きしめたまま熱唱を続けるキリアン。いやいやいや、この状況どういうこと!?


「闇と光を超える軌跡――」


「お願いだからやめてえええ!」


「導け、紅き運命のlost Paradise――」


叫びながら布団から顔を出すと、目の前に立つキリアンが少しだけ眉を上げていた。彼は少し驚いたような顔をしている。いや、驚いたというより、不思議そうに私を見ているだけかもしれない。


「どうした?妖狐よ。曲に何か問題があるのか?」


「あるに決まってる!」


私は顔を真っ赤にして叫ぶ。いや、問題しかないでしょ!?


「いやいやいやいや、なんでそれを歌ってるの!?どうして覚えてるの!?いや、覚えてるわけないでしょ!?なんで!?え、嘘でしょ!?」


混乱する私を前に、キリアンは少しだけ首を傾げる。そして、その仕草が妙に優雅なのが余計に腹立たしい。


「お前がこの世界に私を召喚した時、私に与えられた記憶に含まれていた。それゆえ、この曲もまた私の一部と言える。」


「いや、一部にしないで!お願いだから!むしろ忘れて!!!!!」


必死で叫ぶ私を見て、キリアンは再び小さく眉を動かした。その顔は、少しだけ困惑しているようにも見える。


そして――気が付けば、私は笑っていた。


「あはは……なんでこうなるの……!」


涙がこぼれそうだったけど、それはさっきまで流していた涙とは違う。布団を握りしめたまま、笑いながら転がる私の脳内で、あの頃の自分が顔を出す。


馬鹿みたい。でも、懐かしい。


全てが恥ずかしい。でも、全てが愛おしい。


キリアンは黙ったまま不思議そうに私を見下ろしている。その顔を見ていると、また笑いが込み上げてくる。もう、どうにでもなれ。これが私の創作だったのなら、せめてこのくらいは楽しませてもらうべきだ。


布団の上で丸まりながら、私はただ笑い続けた。自分自身の恥ずかしさと、どこか懐かしいあの頃の想いに包まれながら。

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