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エクシーズ

「…ジャンルが違うかもだけど……実はね、私、エクシーズが好きだったんだ。」


いつの間にか、言葉がするすると口から出ていた。今まで人に話したことなんてなかったのに。たぶん、私自身がその話をするのをずっと避けてきたからだろう。好きなものを、好きと言うのが少し怖かったから。


目の前のロリータ服の少女が、小さく目を瞬かせている。私の言葉に戸惑っているのか、少し驚いているのか、どちらかはわからない。でも、その反応がどこか新鮮だった。


「私が学生の頃は、あんまり着る機会なかったけど……働き始めてすぐの頃、たまたまお店を見つけてさ。レースとかフリルとか、あと刺繍の感じとか、もうめっちゃ可愛くて!」


少し早口になっているのが自分でもわかる。こういう話をするのは久しぶりだったし、ロリータ服とは違うけれど、少女の好きなものとどこか繋がる気がして、口を閉じることができなかった。


「エクシーズ……私も、好きです。」


その声には、ほんの少しの驚きと、ほんの少しの喜びが混ざっていた。顔を上げた彼女の目が、さっきよりもわずかに光を取り戻しているのがわかる。


「お姉さんもエクシーズ着てたんですか?」


「うん、まぁね。似合ってたかどうかは別だけど。」


私は苦笑いしながら、当時の自分を思い出す。ショッピングモールでエクシーズのセールに駆け込んで、大量に買ったスカートやブラウスを片っ端から鏡の前で合わせた記憶が蘇る。


「いいなぁ……お姉さん、絶対似合ってますよ。」


「いやいや、そんなことないよ。むしろ、君みたいにちゃんと可愛く着こなせる人が似合うんだって。」


「そんなこと……。」


少女が頬を少し赤く染めながら、スカートの端をそっと握る。その仕草がなんだか可愛らしくて、思わず微笑んでしまった。


「エクシーズって、見るだけで気分が上がるよね。あの刺繍とかフリルの感じとか、なんかお嬢様とかお姫様みたいでさ。」


「そうなんです!なんか……あのふわっとしたデザインが、まるでお姫様になれたみたいで。」


少女が少しだけ前のめりになって話してくれる。その声は、これまでとは全然違う。言葉に弾みがあって、生き生きとしている。


「そうそう!あと、あのブラウスに合わせるカーディガンとか、バッグも可愛いよね。」


「はい!私、あのリボン付きのバッグが好きで……!」


「リボンのやつ、わかる!持ってるだけで気分上がるやつでしょ!」


思わず笑い合ってしまう。こんな風に話が弾むなんて思っていなかったけど、少女が楽しそうに話しているのを見ていると、私まで嬉しくなってしまう。


ふと視線を横にやると、母親がその様子を見て小さく笑っている。その笑顔には、娘がこんな風に話している姿を久しぶりに見たという喜びがこもっているようだった。


責任者の男性も微笑みながら、キリアンと目を合わせて小さく頷いている。キリアンも少し目を細め、男性と同じような表情をしていた。いつもより、瞳の奥に柔らかな光が宿っている気がする。


いつだったか、エクシーズのスカートを履いて鏡の前でくるりと回った自分の姿を思い出す。あの時は、可愛い服を手に入れた喜びと、その服を着る自分への微かな期待があった。でも、その期待がいつからか、周りに嘲笑される恐れに変わり、服を着ることさえ億劫になった。


私がかつて失ったもの――「好きなもの」を「好き」と言える気持ちが、この子の中にはまだ生きている。そんな風に思うと、胸が少しだけ温かくなった気がした。

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