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怖すぎるほど頼もしい

パンッ――!


乾いた音が耳を打った瞬間、空気が凍りついた。


破裂したスマホの破片が小さな音を立てて床に散らばる。静寂が広がる中で、私は硬直したまま目の前の光景を見つめることしかできなかった。手に残ったスマホの下半分を握りしめた女子が、震える声で呟いた。


「……な、なにこれ……?」


その震えた声が、この場にいた全員の感情を代弁していた。


私も、彼女たちも、この状況を理解するには程遠かった。ただひとつ言えるのは、この場で唯一動じていない人物が目の前にいるということ――そう、キリアンだ。


彼の背中が、私の視界をほとんど覆っている。その堂々とした佇まいが私を守っているようであり、同時にこの異常事態を作り出している張本人であることを否応なく思い出させる。


――え、何が起きたの?キリアン、まさか……。


その時、心の中に突然響いた声が私の思考を遮った。低く、冷たく、そして紛れもなく彼の声だった。


《心配するな、妖狐。下衆共の口も同じようにすれば、すぐに静かになるだろう。》


――待って待って待って!?


私は慌てて心の中で叫ぶ。いや、叫ばずにはいられなかった。


――スマホが破裂しただけでも大問題なのに、口なんてそんな……!お願いだからそれはやめて!本当にやめて!


必死に心の中で念じる。キリアンの心の声が届いたのなら、私の声もきっと届いているはず。いや、そう思わなければ正気でいられない。


彼は無言のまま、ただ私を庇うように立ち続けている。何も言わない。それが逆に、――彼女たちの恐怖を増幅させる。


スマホが破裂した女子が震えた手を前に出し、声を上げる。


「……う、うそ……なにこれ……どうなってんの……?」


他の女子たちもその様子を見て動揺している。彼女たちの間に広がっていた余裕や笑いは、どこにも見当たらない。ただ、不安と恐怖に染まった顔がそこにあるだけだった。


――キリアン、これ以上は力を使わないで…!


私は内心で呟きながら、買い物袋を握る手に力を込めた。どうにかしてこの場を収めたい。でも、どうすることもできない無力感が私を苛む。


その時、女子グループの一人が叫んだ。


「キャー!助けてくださーい!!殺されるーーーー!!!!」


その甲高い声が空気を切り裂き、店内全体に響き渡る。周囲の人々が一斉に振り向き、数分もしないうちに、店員と警備員が駆けつけてきた。制服を着た中年の男性が先頭で駆け寄り、女子たちの方を見て慌てたように声をかける。


「どうかしましたか?お客様!」


――違うんです、彼女たちが原因なんです!


思わずそう言いそうになったが、声にならなかった。混乱する女子たち、その中で震えるスマホの持ち主、そして堂々と立つキリアン。その二つの存在が、この場をさらに異様なものにしているのだ。


――ねえ、キリアン、どうするつもりなの……?


私は心の中でそう問いかけるが、彼は何も答えない。ただ、彼の背中はいつも通り堂々としていて、異様なまでに頼もしい――いや、怖すぎるほどに頼もしいのだ。

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