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私は、また笑われている

「マジやばいんだけど。」

「何が?」

「あいつの顔。」


女子たちの声は軽やかで、どこか無邪気さすら感じさせる響きだった。だが、その無邪気さこそが、私の胸の奥にある古傷をひりひりと痛ませる。


目の前の彼女たちは、目と目を合わせて笑っている。その笑顔が、ただの楽しさから来ているわけではないことがわかるのが、余計につらい。何かを共有し、何かを貶めることで得られる愉快さ――それを彼女たちは確かに楽しんでいるのだ。


「うちら、ババアにウザ絡みされてね?」

「キッモ。」


それがとどめだった。


私の耳が熱くなる。いや、耳だけではない。頬から首、手の先まですべてが火を吹き出すような感覚に包まれる。買い物袋を持つ手の中に感じるレジ袋の冷たさだけが、かろうじて私を現実に留めていた。


――笑われている。私はまた、笑われている。


そう気づいた瞬間、記憶が急激に蘇った。高校時代、教室の隅で聞いたあの声たち。ノートに絵を描く手を止めることができなかった私に、向けられた冷たい視線と小さな囁き。そしてそれらが次第に大きくなり、笑い声に変わったあの日々。


「なんか、あの子いつも独りじゃない?」

「あいつが居るだけでクラスが暗くなる~。」

「ていうか、ノートに変な絵描いてるの見た?」

「やば、キモオタじゃん!!」


あの頃の私も、今の私も、何も変わっていない。ただ「存在しているだけで」、彼女たちのような人間のターゲットになる。変わったのは彼女たちの顔と服装だけだ。声の響きや態度、冷たい目の感じは、まったく同じだった。


私は何も変わらない人間だ。今も昔も、誰かの笑い声に怯え、震えながら自分の心を押し殺して生きている。手の中の袋が、今にも崩れ落ちそうに感じた。自分がここに存在していること自体が間違いだったのではないかとすら思えた。


「なんか見てるよ。こっち。」

「うわ、怖い怖い!」


彼女たちの笑い声が重なる。その音が、私の耳に何度も反響しては深く突き刺さる。顔が熱い。汗がじんわりと額に滲むのを感じる。心臓が早鐘を打ち、息苦しさが襲ってくる。


――負けたくない。


心の中で、わずかな声が上がる。けれど、その声は笑い声にかき消されるように小さくなる。負けたくないという気持ちと、逃げたいという思いがせめぎ合い、私は何もできずに立ち尽くしていた。


その時だった。

――コツコツと高い靴音が響く。


「遅くなって済まなかった。」


その声は、私を縛り付けていたすべてのものを断ち切るようだった。低く、響き渡るようでいて、私の心の中に直接届くような音。


私は目を上げる。そこには、長いプラチナブロンドの髪をなびかせたキリアンが立っていた。その瞳は黒と銀のオッドアイで、鋭い光を放っている。


彼は私の前に立ち、私を包み込むように、そして何もかもを遮断するように、静かにそこにいた。


「……キリアン……。」


その名前が、自然と口から漏れた。


彼の存在が私と彼女たちの間に壁を作り、その壁が私の中の痛みと過去の記憶を少しずつ押し返していくようだった。彼がここにいる――それだけで、私はかろうじてその場に立っていられるのだった。

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