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Phase474(11)

 一年前。何らからの裏口を使い、ドームに自由に出入りしている者がいるという情報を得た漸と羅美は、数ヵ月に及ぶ捜索活動の努力が実り、ロメロを追い詰めることに成功した。

「頼むから大人しく捕まってくんねぇか、オッサン」

「私を捕まえたところでどうする? この国に、私を裁ける法律なんて存在するのか?」

「ねぇよ、そんなの。だから俺の手で裁いてやるって言ってんだ」

「馬鹿。生け捕りにするように言われているの忘れないで」

「あぁ、そういえばそうだったっけな。ま、要は殺さなきゃいいんだろ? じゃぁ」

 腰を落とし柄に手を掛けると、シンクロするように羅美も同様の構えを取る。

「命以外の全てを剥いでやる」

 構えだけではない。踏み込みから、距離を詰めるスピード、刀が振り下ろされるタイミング。神経が繋がっているかの如く合わさった、完璧な攻撃で、夜の空気に二本の残光を描き──が、二つの刃がロメロに触れた瞬間、凄烈な金切り音と共に刃が根元から折れた。

「「⁉」」

 予想だにしなかった展開に二人は、すぐさま態勢を崩し退避を試みる──が、その隙を見逃さんとばかりに放たれ高速の拳が二人の腹部を襲う。

「ぐはっ……!」

 何本かのあばらが折れ、地面へ血を吐き散らした漸は、激痛に耐えながら顔を上げる。その視線の先では、意識を失い髪を掴まれ宙に持ち上げられた羅美と、その首筋に注射針が翳すロメロの姿。

「君は、きっと良い紫血鬼になれる……」

「やめ……ろ……っ」

 決死の思いで絞り出されたその掠れ声は、無情にも羅美の悲鳴に掻き消された。


「で、そのマフィアの組員がなぜ日本に来たの?」

 口を閉ざし、ふつふつと怒りを煮えたぎらせる漸に変わり、ララが問う。

「あいつは得た紫血鬼の力を使って、自分の考えに反対する組員を根こそぎ殺し、組織を崩壊させた。私は、その仲間の仇を取りに来た」

 一切の淀みなく言ってのけたザイラの瞳の中に燃える復讐の焔は、バーの薄暗い照明下ではより強調して見えた。

「なるほどね。だから、あのクラブにいたってわけ」

「あなた達もあのクラブに?」

「えぇ。あなたがやられた直後にね」

 その一言で反撃を喰らったあのときの記憶が蘇ると、瞳の中の焔がより一層強くなる。

「……そう。助けてくれたお礼もある。あなた達の望みはなに?」

「もう一度、あの男に会わせて欲しい。そして、このウイルスの全てを知りたい」

 その要望に二つ返事を返すように深く頷くと、スマートフォンの画面を何度かタップし、一枚の写真を表示させた。

「組員の調査から、決まって一か月に一度のペースで都庁に出入りしていることが確認されている。そして、明日が丁度その日に当たる」

「……好都合。私も連れて行って」

 意識を取り戻した羅美は体を起こし、心を入れ替えるように深呼吸した。

「もし、そこの少女の言うことが正しいなら、私はあの男に怒っている。彼を許すことが、人間に戻れる唯一の方法なら、私も行くしかない。もし怖くないなら、あなたも一緒に来て欲しい」

 そう羅美に向けられた視線を、漸は鼻で笑い返す。

「馬鹿言うな、怖いわけがねぇ。今回は手加減もなしだ。心臓の皮まで剥ぎきってやる」

「決まりね。で、あなた達はどうするの?」

 ザイラの視線と声が、これまで蚊帳の外だった二人へ向く。

「私たちは他にやることが」

「いいや、俺たちも一緒に行く」

 そう被せ気味に発した矢吹の横顔を、ノアは約束を忘れたのかと言わんばかりに見る。

「ルナちゃんも言ってた。やらなきゃならないことが新宿にあるって」

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