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壁を築く

作者: 雉白書屋

 壁を築く、壁を築く。

 天を分けるような大きな壁だ。

 汗水たらし石を積み上げるのは、その壁の片側で暮らす者たち。もう片側は金を積み上げるのにご執心。

 その壁が隔てるのは富者とそうでない者。

 壁は日に日に高く、都市全体を囲うように築かれていった。

 準じて不安も日に日に増していく。陰り陰り、壁の外側で暮らす我々はどうなるのかと先を案じ始める。それでも両手で受け取る賃金を酒に変え、不安を忘れ、また壁を築く。

 

 壁とは何ぞや。何のために壁はある?

 分けるため隔てるため閉じ込めるため心の壁は拒絶の意味。

 我らを拒絶しているのかと上げた建設反対の声は日に日に大きくなる壁に遮られ、都市の中心には届かずか聞こえぬ振りか。

 壁とは何ぞや。障害障壁。壁は打ち破るためにあるともいう。

 起こした行動、それは本能か。


 完成間近。轟音が響き、壁に穴があいた。

 その穴から流れ込むは生ける屍、ゾンビさながら剥き出しの本能。

 怒り、怒り、奪おうと悲憤慷慨の濁流は都市の中心部へと向かった。

 衝突慟哭。鎮圧され、貧者は再び壁の向こうへ追いやられた。

 その怒りが嘆きが天に届いたか。いいや天は天だ。そこに神はおらず雨は雨、風は風。意図はなく慈悲もない。

 大嵐は大波を呼び、都市を襲った。

 あいた穴に付けこむのは残酷か。いいや、ただの結果だ。

 穴は広がり壁に亀裂が入り、ついには跡形もなく崩れ消えた。


 島全体を囲うには費用が足りなかったのだ。

 緊急時には全員、壁の内側に収容するつもりだった。


 今となっては誰に聞かせることもできず残すこともできず。



 これは未来の話。あるいは過去の。

 失われし技術と都市。

 海に浮かび、そして沈みゆくその名はアトランティス…………

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