サイド神原光輝 3
このまま探索を続けていけば、出口も見つかるだろう。
「あ、こうちゃん!私こっちの道行きたい!」
「うん、そうしようか」
ももちゃんが行きたい場所ならそこが地獄でも俺は幸せでいられる自信あるな。
未踏破な所なら、どこに行っても同じだし。
そのまま進んでいくと、シンプルな下に行く階段が見つかった。
迷宮探索スキルのおかげか、この下がボス部屋だとなんとなくわかる。
ファンタジーゲームなどのお約束だと、そいつを倒せばここから出られるんだが、ここでも同じなのだろうか?
迷宮探索スキルに意識を集中すると、下のフロアの脅威度が感覚的に分かるようだ。
うん、勝てるな。
もう一度ステータスを確認しておこう。
神原光輝 レベル6 職業 勇者・英雄・探索士
種族 人間
強さ 600 物理的攻撃力
器用 600 命中率
素早さ600 回避率、移動速度
知性 600 魔法的攻撃力
耐久力600 HP基準値
賢さ 600 MP基準値
HP 600
MP 600
スキル 勇者の紋章
派生スキル:勇者の光
英雄のカリスマ
派生スキル:昂る心
迷宮探索 レベル4
派生スキル:オートマッピング
剣技 レベル1
スキル変換値 3
新規修得スキルリスト ▼
勇者と英雄に関連していそうな物で、1番安いスキルを取ってみる事にした。
修得ポイントがどちらも5ポイントだ。
他ににも2つ5ポイントで取れる物があったが
不撓不屈は熟語の意味から類推すると、こちらが何かしらの不利な状況でないと発動しない可能性がある。
士気昂揚は同じく類推すると、自分ではなく周りに影響するタイプの可能性がある。
なので、今は修得を見送った。
修得すれば概要が掴めるのもスキルの特徴だ。
勇者の光は相手を弱体化させる系統のようだ。
昂る心は逆に自分を強化する系統らしい。
職種的な特徴として、勇者は守り、英雄は攻撃に偏っているのではないだろうか?
決めつけは危険だが考察の余地はある。
「ももちゃん、この階段降りようか?」
「うん、こうちゃんについて行く!」
可愛い、僕の天使だ。
「じゃあ、降りるね」
階段を降りるとそこは、10人程度が休憩できるくらいのスペースと赤い扉があるだけの部屋だった。
おそらく、この扉を開ければボス戦なんだろう。
探索士のスキルを信じれば、それほど脅威ではないらしい。
どこまで精度が高いか不明だから完全に信じるわけにもいかないけど、ここで迷っても仕方がない。
「ももちゃん行くよ」
「うん!」
中に入ると、今までのゴブリンより2回りほど大きなゴブリンに出会った。
ホブゴブリンっていう奴だろうか?
手には、ここまでのゴブリンが持っていた小剣よりもひとまわり大きな剣を持っている。
結局は今までと同じ、相手の剣を奪い、そのまま突き刺す。
これだけであっさり勝ててしまった。
その後、やはり今まで通り、相手の装備品は消えてしまう。
今までと違うのは、相手が消えた後に残る黒い石が今までよりかなり大きいってことくらいか。
安全性を考えて、これも放置していくつもりだ。
光の扉と表現するのが適当なものが正面に現れた。
ここを通り抜けろという事なんだろう。
通り抜ければ、案の定地上に出ることが出来た。
後ろには、このダンジョンの入り口らしきものがある。
驚くほどに周辺には被害がないようだ。
ダンジョンの入り口も道路にポンと地下通路への入り口ができたような形であるだけで、何かを壊したという事はないようだ。
まぁ、自動車の通行の妨げにはなるだろうけど。
周りは閉鎖されているようだ。
元々、それほど人通りの多い場所ではないし、通学路としても僕たち以外見た記憶がない。
ここが使えなくなっても、そこまで困る人はいないだろうと思う。
「今度から学校行くの少し遠回りしないとならないね」
ももちゃんがちょっと困った顔でいう。
困った顔も可愛い。
「そうだね」
僕はももちゃんと一緒の時間が増えるから、全然構わないけどね。
人目につかないうちに、僕たちは帰る事にした。
帰途中に気づいたのだが、今まであった全能感のようなものが消えている。
「ステータスオープン」
ステータスが現れない。
ダンジョン内と外ではどうも我々に対する影響が違うようだ。
留意する点として、気にしておこう。
帰宅してからネット上で調べると、このダンジョンが現れたという現象は各地で起きているようだ。
特徴として、どこもかなり狭い範囲で5〜8個程度現れているらしい。
このダンジョン群に何か法則性のようなものがあるのかもしれない。
一応どこも立ち入り禁止にしているようだけど、政府から具体的なことは何も発表されていない。
まだ、進入調査もされていないようだ。
これはチャンスかもしれない。
おそらく、僕の予想ではダンジョンの出現によって世の情勢が変わる。
そして僕は偶然にもいち早く、中の状況を知ることが出来た。
幸い学校は明日から夏季休暇だ。
早速、ももちゃんに通信アプリでダンジョンに潜る事を連絡した。
すぐに一緒に行くと返事が帰ってくる。
もちろん一緒に行く事を了承する。
ダンジョンでレベルアップ。
これは今後の社会で重要なファクターになる。
そう僕は確信している。
翌日
朝早くから、僕は物置から少々古びた剣先スコップを取り出した。
台所から最近使っていなさそうな、砥石も持ち出している。
「こうちゃんスコップは何に使うの?」
可愛い声でももちゃんが聞いてくる。
「武器として使うんだよ」
「スコップで戦えるの?」
「実際、自衛隊には円匙術っていう、スコップで戦う戦闘術もあるし、他の国でも結構採用されているよ」
「へー、さすがこうちゃん物知りだね」
「持ち歩いて何も言われなくて、僕の剣術スキルで使えそうな物としては最適だと思うんだ」
「こうちゃんすごーい」
ももちゃんの称賛の声が耳と心に心地いい。
早速2人で前回のダンジョンに向かう。
予想通り、立ち入り禁止のテープが張られているだけで、特に誰かが見張っているわけでもなかった。
世の中ではあまり関心を持たれていないようだ。
野次馬も見当たらない。
今のうちに、手早く中に入る。
予想通りスコップは剣術で使用できた。
特に困った障害もなく進んでいける。
だいたいだけど、このダンジョンの仕様が推察出来た。
出現数は1〜フロアの階層+2体、多い出現数はフロアの階層と同じ数。
このダンジョンに限って言えば、ゴブリンしかでない。
さて、ここまでで、何故複数のダンジョンが密集しているかを考えてみる事にする。
これは他のダンジョンにも行けという事ではないだろうか。
では、何故他のダンジョンに行かねばならないか。
複数のダンジョン攻略が、何かしらのキーとなっている。
ダンジョンに何かしらの上限がある。(予想としてはレベルアップ)
ただの偶然。
今考えられるのはこの辺だな。
検証の意味でも他のダンジョンにも行くべきだな。
幸いネット上でこの周辺のダンジョンのある場所も把握している。
2回目のボス撃破を終えて、僕はこのまま次のダンジョンに向かう事にした。
神原光輝 レベル8 職業 勇者・英雄・探索士
種族 人間
強さ 800 物理的攻撃力
器用 800 命中率
素早さ800 回避率、移動速度
知性 800 魔法的攻撃力
耐久力800 HP基準値
賢さ 800 MP基準値
HP 800
MP 800
スキル 勇者の紋章
派生スキル:勇者の光
英雄のカリスマ
派生スキル:昂る心
迷宮探索 レベル4
派生スキル:オートマッピング
剣技 レベル1
スキル変換値 18
新規修得スキルリスト ▼
これが今のステータス。
現状困っていないので何か困る事が起きるまでは、スキル変換のポイントを温存しておこうと思う。
上のスキルになるほど、要求されるポイントも増えるだろうし、レベルも上がりにくくなっているだろうし。