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クソステージだこれ

 第3階層で狩りをすること数時間。蜘蛛のドロップアイテムを集めるだけ集めた秋良は、転がる魔結晶と素材を拾い集めつめながら「飽きた……」とぼやいた。


 思っていた以上に、蜘蛛狩りが順調――否、楽勝だったからだ。


「今日の稼ぎはかなりいいな」


 魔石だけでも、ざっと目算して30000円はかたいはずだ。

 ともなれば、あとは撤退して良いのだが、ここで秋良は欲を出した。


「4階層、行ってみるか」


 もちろん下見程度である。ダンジョンでは1階層上がると、難易度が3倍違うと言われている。

 剣道三倍段と同じようには語れないが、階層を上がったばかりの探索者にとってはそれくらいの力量差があるのだ。


――攻略不可能レベルなら一度、引き返して対策を練ればいい。


 事実、秋良は2階層『小鬼の巡回地』でコブリン複数を相手に全力で逃げた。そして2階層攻略のためだけに一週間を費やしたのだ。


 今回も攻略できるまで同じことをするだけだ。


 その気になった秋良は、新宿ダンジョン攻略WIKKIで4階層ルートを調べた。


☆★☆


新宿ダンジョン 4階層 『悪食あくじき氷原ひょうげん


「さっむ!」


 そこは一面の銀景色だ。張り詰めるような冷気が肌を刺す。前階層の熱帯ステージとの寒暖差で風を引きそうだ。


 一歩踏み出してみると雪に足が沈み込み、足が取られる。敵はモンスターではなく、環境だと実感する。


 防寒のためにスキーウェアとスノーブーツを着ているが、これも歩きにくさに拍車をかけていた。


「突破するのも容易じゃないね、これは……」


 自然環境だけでこの有様だ。この階層の主たちに見つかったらひとたまりもない。


 新宿ダンジョンWIKKIによれば、ここのモンスターは何でも食べてしまうらしい。そして、凄まじい巨体であるとのこと。


 明良はそいつの写真や映像をみたことがあるが、ひと目見ただけでバケモノだと思ったものだ。


 パワーアップした今の状態でも、できれば闘いたくはない。少なくとも一人では。


 そんなことを考えながら吹雪く世界を見つめていると――


 もぞっ。


「ん?」


――……視界の端で何か動いたような。


 秋良は目を凝らしてもう一度よく見てみる。


 もぞっ。


 積雪がこんもりと持ち上がり、そいつは動き始めた。どんどん、どんどん、明良のほうに影が伸びる。


「雪に擬態している、の…………か…………」


 地鳴りとともに白亜の巨体が持ち上がる。体表は削られた大理石のようにゴツゴツとしていた。


「き、」


 正面と思しきところに目はなかった。代わりに見えたのは真っ赤な口内。ヤツメウナギのような口である。円形に並んだ牙が喉から筒状の胴体の奥まで連なっている。


「きんもーーーーっ!?」


 不快感MAXの見た目により、ついつい漏れ出す罵倒。


 その外見と生態から探索者からぶっちぎりで3K(きもい

・くさい・きつい)モンスターランキング堂々の1位を獲得したヤベー奴。


 悪食あくじきの異名を持つ者。


 ――ウェアイーター


「ボ、ボ、ボ」


 数回、短い汽笛が鳴る。いやこれは鳴き声だ。

 上を向いていた悪食が秋良の方を向く。目がないはずなのに、目があったような気がした。


 嫌な予感が脳裏を駆ける。


 雪の塊が弾け飛んだ。それは、悪食がボッと小さく吠えて突撃してきた余波だった。


「ウッソだろお前!」


 口の奥で歯がぐるぐると回転している。まるで破砕機かシュレッダーのようだ。


 人間などミンチにされるだろうことは必至――だと思うだろう。


 悪食の名前は、()()()イーター。

 実のところ、あのたいそうご立派な牙は、服だけを引き裂くというご都合主義の権化(シロモノ)なのである。


 喰われた探索者曰く、「(見た目が)きもい」「(口の中が)くさい」「(喰われた後が)きつい」とのこと。


 ――うん、逃げよう。


 速攻で撤退の判断を下して、明良はダンジョン上層への階段がある壁に駆け込むのだった。


 その後、逃げたは良いが悪食が壁に衝突した。そのせいで雪が階段に押し寄せて、体中が雪まみれになったとか、ならなかったとか。



第3階層 『毒蜘蛛の狩場』


 ほうぼうの体で3層に帰還した明良は、肩に乗った雪を払いながら、階段の段差に座った。


「……あんなんどうしろってんだ」


 やや愚痴りながら攻略WIKKIを開く。


―――――――――――――――――――――――――――――――




『悪食の氷原』



その名の通り氷原が広がるステージ。遮蔽物となるものはない。このステージは基本的に非戦闘推奨。


 このステージから登場するウェアイーター(通称:悪食)はまごうことなきクソである。


※ここから女性探索者閲覧注意!!


 悪食の口内は、衣服のみを溶かす唾液が分泌されており、牙は衣類のみを引き裂く特別製である(それどこのエ○ゲ生物)


 なぜ癒やし系スライムさんではなくウェアイーターなどというクソにこの機能がついているのかダンジョンに問いただしたい(訴訟案件である)


 まともに闘うと高確率で衣類及び装備を喰われる。そのため見つかったら撤退するか速攻で次の階層に行くかを決めておくと良い(ただし、上位探索者はこの限りではない)


 万が一捕食された場合、極寒の中、素っ裸で放り出されるためソロ攻略は非常に危険を伴う。


※この階層では可能なら耐寒ポーションを持っていきましょう。凍え死にます。


※この階層では可能ならパーティーを組みましょう。救助要員必須。




『悪食の氷原』攻略ページは››こちら


『耐寒ポーション』の購入ページは››こちら


『耐寒ポーション』の調薬ページは››こちら


パーティー(おともだち)』の作り方ページはありません。


―――――――――――――――――――――――――――――――




 再読した感想を一言。


「クソステージだこれ」

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