第二十五話 陰の支配者
「はぁ……やっと二十万だ……」
あれから何日経過したのだろうか……二十日か?それとも三十日か?――もう分からなくなってしまった。
そんな状態になるまで俺はひたすらLV上げというものを続けたのだ。
こういう単純作業はやればやるほど、次第に最適化されるものである。
最初は〈身体強化〉〈雷強化〉〈風強化〉でエンシェントドラゴンの首元に近づき、剣を振って倒すというものだった。だが、エンシェントドラゴンとの距離がそれなりにあるので、最初の一撃はどうしても反応されてしまい、首の鱗を破壊するのが精一杯だった。〈空間操作〉を使うのが一番効率が良いのだが、それだと魔力の自動回復が間に合わなくなってしまう。
だが、色々と試行錯誤をした結果、一番効率が良かったのは〈身体強化〉〈雷強化〉を使った状態で〈重力操作〉を使うことだ。〈重力操作〉では俺の重力の向きをエンシェントドラゴンの首元にした。それにより、魔力の回復がギリ間に合う最高の状態で、エンシェントドラゴンもギリ反応できないという速度を維持できたのだ。
「じゃ、じっくり見るか」
俺のステータスは誰が相手であろうともまともな戦いにならないのではないかと疑いたくなるぐらいには強くなった。
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名前 ユート・アラキ 不老人族 LV.130
体力 139100/177800
魔力 209000/209000
攻撃 171200
防護 152000
俊敏性 181000
・鑑定LV.MAX
・言語翻訳LV.MAX
・身体強化LV.MAX
・剣術LV.MAX
・アイテムボックスLV.MAX
・気配隠蔽LV.MAX
・気配察知LV.MAX
・魔法合成LV.MAX
魔法
・火属性
・水属性
・風属性
・土属性
・光属性
・闇属性
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「これなら魔王もサクッと倒せるかもな」
だが、油断は禁物だろう。そして、力に溺れてしまわないように、今後はより一層力の使い方には気を付けようと決めた。
「では、ここから出るか。〈空間操作〉!」
俺は〈空間操作〉で地上に転移した。
この魔法は神様から他人にはあまり見せない方がいいと言われているので、転移場所は人目のつかない路地裏にした。
「よっと……あ」
転移した先には、ボロボロの服を着て、鉄の首輪をつけたコバルトブルーの髪を持つ五歳ほどの女の子がいた。
そして、その女の子を担ぐ一人の黒いローブの男もいる。
「な、まさか衛兵か!? いや、こんなガキが衛兵なわけがないか。まあ、見たからには死ね……と言いたいところだが大人しく捕まってくれるなら殺さないでや――」
「黙れよ」
俺はこいつのくそ発言に静かにキレると極小の〈雷速砲〉でこいつの心臓を消し飛ばした。そして、素早く女の子を回収した。
「ひ、ひぇ……」
女の子は目の前で人が死んだせいか、怯えてしまった。
「あ、僕は怖くないよ。怖くな~い。怖くな~い。ほら、これ食べる?」
俺はしゃがみ込むと、〈アイテムボックス〉から串焼きを取り出し、女の子に差し出した。
「!? はむっ」
女の子は俺の手元にある串焼きに目を輝かせると、その串焼きを頬張った。
その様子がめちゃくちゃ可愛くて癒される。
「……それにしてもこの子はもしかして誘拐されたのか?」
さっきの様子からして、恐らくそういうことだろう。
「う~ん……取りあえず衛兵に渡すか。だが、流石にボロボロの服を着た女の子を連れて街を歩くのは視線がなあ……と言う訳で〈空間操作〉!」
俺は〈空間操作〉で衛兵の詰所がある街の入り口から一番近い路地裏に女の子と共に転移した。
「よっと。じゃあ行くか」
そう呟くと、俺は女の子を抱っこしながら衛兵の詰所に向かった。
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「――ということがありました」
俺は衛兵の詰所で何があったのかを話した。さっきの女の子は衛兵に渡し、今は身元の確認をしているとのことだ。
「……なるほどな……どうやらやつらと関係がありそうだな……」
衛兵は腕を組みながらため息をついた。
「ん? やつらとは誰のことなんですか?」
「ああ、実はこの街には影の支配者という違法奴隷組織があるんだ。それで、その男の発言から考えるに、そいつらで間違いないはずだ。それに、女の子に首輪が付いていたからあの子は奴隷で確定。そして、その男がコソコソ隠れていたんだから合法の奴隷でもないと言う訳だ」
「……そうか」
奴隷に合法も違法も関係ないと叫びたくなったが、ここは異世界なので、前の世界の常識は通用しない。
そのことを思い出した俺は衛兵の言葉に落ち着いた態度で頷いた。
「では、これで話は終わりだ。女の子を助けてくれたこと、感謝する。あの組織は元々明日作戦会議をして、その後直ぐに滅ぼすつもりだったから安心してくれ」
そう言うと、衛兵は頭を下げた。
「いえ、まあ、たまたま遭遇しただけですからね。では、さようなら」
俺は手を振るとドアへ向かった。そして、ドアノブに手をかけ、そのまま外に出ようとした時、そのドアから
ドアから一人の衛兵が入ってきた。その後ろには清潔な服に着替え、首輪も外されたさっきの女の子がいた。
「あれ? どうした?」
俺と話をしていた衛兵が気づいて、近づいてくる。
そこに、今入ってきた衛兵は困ったような顔を浮かべながら後ろにいる女の子を俺の前に立たせた。
俺が訝しんでいると、女の子が金色の眼で俺のことを見つめながら小さな口を開いた。
「お兄ちゃんについていきたい!」
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インフレしたステータスを書いた時のドキドキがたまらねえ……




