第二十二話 魔王の正体
俺の目の前にいたのは――
「か、神様!?」
前に会った時のようにニコニコと優しく笑うこの老人は、俺をこの世界に転生させた神様だ。
気が付くと、この場所もダンジョン内ではなく、前に神様と会った真っ白な空間だった。
「久しぶり……というほどでもないが、元気そうで何よりじゃ」
神様はまるで久しぶりに孫に会うおじいちゃんのような言葉を使った。
「それで、異世界ライフは楽しいかの?」
「ま、まあ、楽しいですね。ただ、何か俺って事件に巻き込まれすぎだと思うんですけどその理由って知っていますか?」
俺は神様に聞いてみたかったことを聞いてみた。
すると、神様は視線を横にそらした。
「な、何のことじゃかさっぱりじゃの。というか、神たるわしを疑うとはどういうこのなのじゃ?」
「あのー俺は理由をきいただけなんですけど……それだと神様がまるで干渉していると言っているように聞こえるのですか……」
自分で墓穴を掘った神様に、俺はジト目の視線を向けた。
「ま、まあ、そんなことどうでもいいのじゃ!」
「は、はぁ……取りあえず何で俺をここに呼んだんですか?」
俺はため息をつきつつも、神様に何故ここに呼んだのか聞いた。
「ちょっと話があってな。長話になるからその椅子に座るといい」
俺は「椅子なんてあったっけ?」と思いながら辺りをキョロキョロと見回すと、いつの間にか俺の後ろに真っ白な椅子が一つ置かれてあった。俺はその椅子に座ると、神様を正面から見つめた。
神様は、椅子を作るとそこにゆっくりと座った。
「それで、話というのはお主をこの世界に転生させた理由についてじゃ」
神様は真剣な眼差しを俺に向けた。俺は、急に真剣な顔になった神様に驚きつつも、神様に合わせて真剣に話を聞くことにした。
「まず、お主を転生させたのは、お主に頼みたいことがあるからじゃ。これは世界の存続にかかわるものじゃからちゃんと聞くのじゃよ」
「頼みたいこと?」
「そうじゃ、それは勇者の魔王討伐を手伝ってほしいのじゃ」
そう言うと、神様は深く頭を下げた。その顔には、さっきまでのニコニコと楽しそうな雰囲気は消え、代わりに強い危機感があった。
「え……でも今までの魔王は勇者によって倒されているのでは?」
次に現れる魔王がめちゃくちゃ強いとかなのだろうか?そう疑問に思っていると、神様が口を開いた。
「ふむ……ではお主に聞こう。魔王とは何だと思う?」
「魔王とは……」
ゲームの影響で自然に受け入れていたが、言われてみれば魔王とはいったい何なのだろうか?
俺が言葉に詰まっていると、神様がその答えを教えてくれた。
「ふむ、まあ、分からんのも無理はないじゃろう。魔王というのは堕ちた神族のことじゃからな」
「堕ちた神族……ですか」
言葉の意味がいまいちよく分からず、俺は首を傾げた。
「そうじゃ。一先ずその神族について話をするとしよう」
そう言うと、神様は昔を懐かしむかのような顔になった。
――元々この世界は二人の神族が管理をしていた。片方はわし、もう片方が今魔王と呼ばれし者。
――互いに協力し合いながら世界を管理してきたが、一万年前に事件が起きた。それは、この世界でより強力な魔法を使えるようにするか否かの話し合いで初めて意見が分かれたこと。わしは反対の立場を取り、あやつが賛成の立場を取った。
――その時、ここ、神域で激しい戦闘になった。じゃが、わしが他世界の神族に仲裁を頼み、その神が仲裁に来てくれたおかげで戦闘は終わった。そして、他世界の神との相談の末、わしの意見が通った。
――しかし、それに不満を持ったあやつは勝手に世界の理を変えようとした。流石にまずいと思ったわしはあやつの隙をついてあやつを殺した。
――その後はずっと異変はなかったのじゃが、およそ九百年前に魔王と名乗る者が現れ、世界を破滅へと導こうとした。
――想像以上に強い魔王をどうにかする為に、わしはハラン王国に神託と勇者召喚の宝玉を与えた。そして、そこから召喚された勇者によって魔王は討伐された。
――その後、残留していた魔力を見て、魔王の正体があやつであることに気づいた。わしとしても、魂そのものを破壊したはずの神族が生きていることは未来視でも見ることが出来なかったので驚いた。じゃが、更に解析を進めると、あやつは死ぬ間際に転生の儀式を行っていたことに気が付いた。
――更に、あやつは大体百年周期で復活することも分かった。その為、急遽宝玉を百年に一回再利用できるようにした。
――そして、今に至るまで七回魔王は倒された。
ここで神様の話は一先ず終わった。
俺はその話を聞いて、「その程度のもめごとで激しい戦闘をするなよ!」と突っ込みたくなった。
しかし、神様の言葉には後悔、危機感、反省などの思いが込められていることがひしひしと伝わってくる。そのせいか、俺はツッコミを口にすることは出来なかった。
暫くの間、互いに無言の状態が続いたが、神様が再び俺のことを見つめると、口を開いた。
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