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第十五話 空を飛べた!

「お、LV上がってる」


 五十一階層に下りたところでふとステータスを見てみると、LVが74になっていた。

 つまり、また新しい魔法を覚えたということだ。


「〈水剣(ウォーターソード)〉、〈風飛行(フライ)〉、〈創造土人形(クリエイトゴーレム)〉、〈光白剣(ホーリーソード)〉の四つだったな」


 どのような魔法かは分かっているので、早速使ってみよう。タイミングよくストーム・キャットが来てくれたのだから。


「よし、まずは……〈水剣(ウォーターソード)〉!」


 俺はストーム・キャットとの距離を三メートルほどまで詰めると〈水剣(ウォーターソード)〉を左の脇腹めがけて使った。


「!? シャア!」


 ストーム・キャットは反応すると、即座に〈風壁(ウインドウォール)〉で防ごうとした。

 しかし、強度が足りず、一秒ほどで破壊してしまった。

 だが、その一秒で右に跳んだ為、切られはしたが、死ぬことはなかった。


「シャ……ア……」


 ストーム・キャットはふらつきながらも鋭い目つきで俺のことを睨みつけてくる。

 だが、俺はそんなのお構いなしとばかりに次の魔法の実験をした。


「次は……〈光白剣(ホーリーソード)〉!」


 すると、俺が持つ白輝の剣が白く光り輝いた。


「では、はあっ」


 俺はストーム・キャットと四メートルほどの距離の所で白輝の剣を振り下ろした。

 すると、白輝の剣の斬撃が光となって飛び、ストーム・キャットに飛んだ。

 そして、ストームキャットを真っ二つに切り裂いた。


「ギャ……」


 ストーム・キャットは死に、ダンジョンに吸収された。


「ん、この魔法は便利だな」


 〈光白剣(ホーリーソード)〉は剣を持たないと使うことが出来ないかなり特殊な魔法だ。

 そして、〈光白剣(ホーリーソード)〉は切れ味の強化と斬撃を飛ばすという二つの効果がある。

 切れ味の強化は純粋に強い。また、斬撃を飛ばすというのも、例えばただ振り下ろすだけでは後ろに避けられてしまう状況でも、この魔法を使えば対処することが出来る。

 ただ、〈光白剣(ホーリーソード)〉によって出来る斬撃は、五メートルまでしか飛ばすことが出来ない為、遠距離攻撃として使うのには適さない。


「ん~と……では、〈創造土人形(クリエイトゴーレム)〉!」


 すると、目の前に直径五メートルほどの魔法陣のようなものが現れた。

 そして、そこから身長三メートルほどの岩でできた騎士のようなゴーレムがせり上がってきた。

 右手には岩の大剣を、左手には岩の盾を持っている。


「お~かっこいいな」


 〈創造土人形(クリエイトゴーレム)〉はイメージがとても重要な魔法だと本に書かれてあった。

 イメージがあやふやだと、込めた魔力以下のゴーレムが出来てしまうとのことだ。


「こいつはめちゃくちゃ魔力を込めたからな」


 この騎士型ゴーレムは18000もの魔力を込めて作られたものだ。

 これならこの階層の魔物とも互角かそれ以上に戦えると思っている。


「グル……」


 ちょうどブラック・タイガーが俺を見つけて近づいてきた。

 俺は「ちょうどいい」とニヤリと笑いながら言った。


命令(オーダー)、そいつを殺せ」


 俺は騎士型ゴーレムにそう命令した。


「ゴゴゴ……」


 騎士型ゴーレムはゆっくりと動き出した。


「グルゥ!!」


 ブラック・タイガーは騎士型ゴーレムを敵だと認定すると、素早い動きで騎士型ゴーレムに襲いかかった。

 一方、騎士型ゴーレムは機械的な動きで盾を構えると、ブラック・タイガーの突進を容易く受け止めた。

 そして、盾にぶつかってひるんでいる隙に、騎士型ゴーレムは大剣をブラック・タイガーに振り下ろした。


「グルガ……」


 ブラック・タイガーは抵抗することも出来ずに首を落とされて死んだ。


「ん~こいつって魔物相手なら結構戦えるけど人が相手になるとちょっとなあ……」


 騎士型ゴーレムが勝てたのはブラック・タイガーが考えなしに突進してきたからだ。

 もし、騎士型ゴーレムの背後を取るように立ち回っていたら負けていたのは騎士型ゴーレムの方だろう。

 つまり、知能がある相手。例えば人が相手の場合は確実にそういう立ち回り方をされてしまい、実力差がそれなりにない限り、勝つことは出来ないだろう。


「てか、こいつと魔石を回収するゴーレムを森に放置しとけば何もしなくても金稼げるよな?」


 我ながらナイスアイデアだと思った。

 まあ、そこまでして金が欲しいわけではないので今のところはやるつもりはない。


「じゃ、ゴーレムは消しとくか。命令(オーダー)、任務完了」


 俺はゴーレムに命令した。

 すると、ゴーレムは砂のように崩れて消えた。


「ふぅ……最後は、〈風飛行(フライ)


 すると、〈風強化(ブースト)〉のように風を纏うことが出来た。そして、


「お、浮いた!」


 俺は五メートルほど上に飛ぶことが出来た。

 更に、自分の生きたい方向に体を傾ければその方向に移動することも出来る。


「んーと……これって最高速度はどれくらいなんだろ?」


 と、疑問を持った俺は魔力を出来るだけ込めてみた。すると、


「う、うわあ!」


 思ったよりも速度が速くて、凄い慌ててしまった。

 体感としては時速二百キロメートルはあると思う。

 そんな速度をいきなり出した為、俺は制御を失って地面に激突しそうになった。

 だが、ギリギリのところで上に飛ぶことで何とか助かった。


「はぁ~調子に乗るんじゃなかった……」


 俺はため息をつきながら〈風飛行(フライ)〉を解除して地面に下り立った。


「ま、これでグランに帰る時間がだいぶ短縮できるな」


 空を飛べば最短経路でいくことが出来る。

 最近移動時間の長さを気にしている俺にとって、移動時間を短く出来ることは嬉しく感じた。


「じゃ、先に進むか」


 そう呟くと、再び前に向けて走り出した。

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