第七話 ダンジョン攻略に向けて
「はぁ~出てきた~」
俺たちはようやくダンジョンの外に出た。
あれから俺たちは朝起きて、準備をするとフロアボスのいる部屋の横にある通路を通った。
しかし、直ぐに行き止まりになってしまい、「あれ?」と困惑した。すると、その直後に目の前の壁が下にスライドした。そして、そこから出た先はフロアボスのいる部屋の入口だった。因みにさっきスライドした壁は俺たち全員が出ると再びスライドして元に戻った。
その後は普通に一階層まで上がって出たという感じだ。
「ああ、ユートのおかげでスムーズに攻略するとこが出来た。ありがとな」
予定では午後六時ぐらいにダンジョンから出るつもりだったのだが、それよりも三時間早い午後三時に出ることが出来たのだ。
「じゃ、今回はありがとな」
俺たちはここで別れた。
「じゃ、俺は変装するか~」
そう言うと俺は気配や視線を警戒してから路地裏に行くと、〈アイテムボックス〉から変装用のネックレス型魔道具を取り出し、首に着けた。
「あーうん。変わったな」
俺は声の変化と、髪の色と長さから女性の顔になったことを確認すると、フードを取って路地裏から出た。
「では、冒険者ギルドに行って魔石を売るとしますか~」
ティリアンではダンジョンの性質上魔物の討伐証明部位が取れず、唯一取れる素材は魔石だけだ。
その為、ティリアンでは素材解体所だけでなく、冒険者ギルドの受付でも魔石を売ることが出来るとライザから教えてもらっている。
「え~と……グリーンゴブリンの魔石が百五十個、岩狼の魔石が百十八個、スケルトンの魔石が十三個なので買取金額は計二十七万五百セルになります」
金額はまあまあだが、量だけなら過去一番の量だ。それなのに驚くことなく冷静に対応する受付嬢を見て「あれ?」と思ったが、他の受付でも普通に二百個超えがあったので、「俺も所詮は井の中の蛙か……」と少し落ち込んでしまった。ただ、その気持ちが顔に出ないようにしながら礼を言うと、金を受け取って〈アイテムボックス〉に入れた。
「さてと……明日から本格的にダンジョンの攻略を進めるから食料を確保しておかないとな……あ、あと布団と枕も欲しいなぁ……」
グランで買い忘れていたものを思い出しつつ、俺は冒険者ギルドの外に出た。
「ふ~いい買い物だった……」
布団、枕、食料の全てを買い揃えた俺は満足気な顔をしながら昨日泊まった宿へ向かっているところだ。
「この布団と枕……高級品なんだよな~」
俺はティリアンで家具を売っている場所を突き止めるとそこへ向かい、ふかふかの羽毛布団一つとタオルケットのような薄めの布団一つを買った。
この世界に季節というのがあるのかは分からないが、最近寝る時にローブを脱ぐと、この世界に来た日の夜とよりも若干熱くなっているような気がする。その為、一応夏用、冬用でそれぞれ買ったと言うわけだ。あと、布団にこだわりすぎたせいでほぼ直感で選んだ枕も買った。
その後、俺は屋台の串焼きを買い占めるかのような勢いで買いまくった。魔道具で女性の顔になっているのが理由なのかは分からないが、屋台のおじさんに凄いドン引きされた。「お嬢さん。君、こんなに食べるのかい?」て感じの視線は意外ときつかった。ただ、俺はさりげなく「ダンジョンに行くんだったらこれくらい必要なのよね~」と言いながら〈アイテムボックス〉に入れると、みんな納得したような、ほっとしたような顔になった。
俺はこれを数ヵ所で行い、結果オークの串焼き二百本を追加で仕入れることが出来た。
そして、今に至ると言う訳だ。
「んーもう夜になったから夕食にしないとな~」
夕食を食べるべく俺は一昨日の夜に行った魚料理の店に行った。
そして、そこで氷魚の刺身と米を食べた。
氷魚の刺身はカルトリの宿で食べたことがあり、マグロのような赤身の魚で、とてもおいしかったことを思い出した俺はまた食べたいと思い、これにしたのだ。
「あー美味かった」
俺は千セルを支払うと満足げな表情で店から出た。
その後、俺は一昨日泊まった風月亭へ行き、そこで一泊することにした。
「あ~疲れた~」
俺部屋に入ると、直ぐにベッド仰向けに寝転がった。
疲れたといっても別に体力は全く問題ない。今のはただの気疲れだ。
「う~ん……LVは上がってないか…」
ステータスを見たが、特に変わったところはなかった。
「ま、今までの感じからしてそりゃそうか…」
Dランクの魔物を百体以上倒してようやくLVが上がったのだ。今日俺が倒したのは全てEとFランクの魔物だけだ。その為、LVが上がらなくても仕方のないことだと思いながらステータスを閉じた。
「ふぁ~……」
俺はあくびをするとローブと靴を脱ぎ、変装用の魔道具を取り外すとシャワーを浴びた。
そして、シャワーを浴び終わると直ぐにベッドに寝転がった。




