第五十七話 Cランク昇格試験
「森猪十三体なので報酬金は報酬金は七万八千セルになります」
「ありがとう」
俺は報酬金を受け取ると、〈アイテムボックス〉に入れた。
「これでDランク以上の魔物を百体討伐したことになるのでCランク昇格試験を受けることが出来ます。今からやりますか?」
「試験内容ってなんだ?」
Dランク昇格試験の時はグランからカルトリまでの護衛だった。もし、今回もそんな感じのやつで、ここからグラン方面へ行かなくてはならない試験だったら今は断ろうかと思っている
「はい。Cランク昇格試験は試験官と戦うだけなので直ぐに終わりますよ」
「そうか。なら今からやるよ」
俺は試験内容に安堵すると、今すぐやることにした。
「では、この紙をもって訓練場に行き、その入り口にいるカルダンさんに渡せばいいですよ」
そう言われながら渡されたのはCランク昇格試験承認書と書かれた紙で、俺の名前が右下に書かれていた。
「分かった。では言ってくる」
俺はそう言うと訓練場へと向かった。冒険者ギルドの内部の作りは他の街とほぼ一緒なので迷うことなく行くことが出来た。
「え~と……あの人かな?」
入口にある椅子に座り、模擬戦を眺めている男性がいた。
俺はその男性に近づくと、
「あの…こんにちわ。試験をしに来ました」
と言いながら紙を渡した。
男性は俺を見て一瞬眉をひそめたが、紙を三秒ほどまじまじと見つめると立ち上がった。
「貴様のような子供が試験とは何かの冗談かと思ったが、紙は本物みたいだし子供にしてはそれなりの戦いはしてきたようだしな。よし、面白そうだから俺が直々に相手をしよう。俺の名はカルダン。元Aランク冒険者だ」
カルダンさんは黒色のオールバックの髪に金色の眼をした身長百八十センチメートルほどの強面の男性だ。革の防具を着ており、筋肉はそれなりにある。
「分かりました。ではやりましょう」
「そうだな。そこから武器を取ったらさっさとやるぞ」
カルダンさんはそう言うと、足元にあった木剣を拾い、手前から二番目のスペースに向かった。
俺も壁に立てかけてあった木剣を手に取るとカルダンさんの所へ小走りで向かった。
「じゃ、先手は譲ってやる。かかってこい」
「分かりました」
試験不合格は絶対に嫌なので全力でいかせてもらおう。俺は〈身体強化〉と〈剣術〉を使うと一瞬で距離を詰めて、カルダンさんの木剣を横から叩き折ろうとした。
「!?はあっ」
しかし、カルダンさんの反応も早く、剣の向きを俺の木剣に合わせると、見事に受け止めてきた。
「今の速度。Aランク冒険者でも対処できねえやつはいると思うぞ」
カルダンさんは驚きつつも、表情は崩さずに言った。
「そうですか?俺は試験不合格には絶対になりたくないのでねっ」
俺はそう言うとさらに力を込めてカルダンさんを後ろにぶっ飛ばそうとした。
「へっ強いな。ただ俺も試験官としてそう易々と負けざまをさらすわけにはいかねぇんだよ!〈限界突破〉!」
すると、カルダンさんの体の周りにうっすらと白い光が見えるようになった。その直後、カルダンさんは俺の木剣を押し返した。
「はあっ」
「!?まじかよっ」
俺は三メートルほど飛ばされたが態勢は崩れなかった。
「ここからは全力でいかせてもらうぞ」
そう言うと、カルダンさんはさっきの二倍ほどの速さで俺の前に来ると、木剣を振り下ろしてきた。
「くっ危ねぇ……」
ギリギリ避けたが、その後の追撃もあり、完全に防戦になってしまった。
(あ、魔法使うの忘れてたな……〈風強化〉)
俺は〈風強化〉も使うとカルダンさんを上回る速度で剣を振った。
「はあっ」
「な……」
カルダンさんはいきなり速度が上がったことで対処が出来ず、木剣が真っ二つに折れてしまった。
「はあっ」
だが、カルダンさんは諦めることなく折れた木剣を振り下ろした。だが、その木剣は俺の木剣に当たる前に〈結界〉によって防ぐことが出来た。
この〈結界〉では一秒も持たないが、それで十分だ。
「はあっ」
俺は左手でカルダンさんの右手首をつかむと地面にたたきつけた。
「がはっ」
カルダンさんはそのままうつぶせに倒れ、勝負がついた。
「危なかったな……」
〈限界突破〉というスキルを使われた時は本当にやばかった。速度でも技量でも負けるという、とんでもない状況だったが、〈風強化〉を使うことで何とか勝つことが出来た。
カルダンさんはゆっくりと起き上がると、俺を正面から見つめた。
「ははは……強ぇな貴様は……〈限界突破〉を使っている状態ならSランク冒険者と同格と言われてたんだけどな……」
「そ、そうなんですか?」
「ああ、とはいっても〈限界突破〉は一日三十分使うのが限界だし使った後は一定時間大幅に弱体化するからな。このスキルにこのデメリットがなければ俺はSランク冒険者になれたんだがな。ま、そんな俺に勝ったんだからもうSランクにしてやりたいな」
カルダンさんは悔しそうにしながらも満足気な表情をしていた。
「じゃ、この紙を持って受付に行くといい。この戦いはここにいるみんなが見てたんだからさっきの俺みたいに疑ってきても問題ないぞ」
(ここにいるみんな?)
俺はその言葉を聞いて、あたりを見回してみた。すると、他の所で模擬戦をしていた人たちが俺たちのことを見ていた。更に、訓練場の入り口からも何人かが覗き見していた。
ここで話題になって神の涙に居場所を特定されたくなかった俺はちょっと威圧感を出しながら「あ、このことは秘密にしておいてくださいね」と念を押した。そしたらみんな頭を上下にぶんぶんと振って頷いていたので大丈夫だろう。
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