第五十四話 幼稚な言い訳
残酷な描写があるので苦手な方は気を付けてください。
「なん……だと……」
俺は取りあえず怯えている様子を演じ続けた。因みにその言葉には内心「だよな」と思っていた。
だってこいつら出会ってからここに来るまでの間ずっと白輝の剣をじっと見つめていたのだ。「この剣を手に入れてやるぜ~」って眼が訴えてるのを見て「マジで隠す気ないなこいつら」と俺は思った。
「じゃ、まずは右腕一本!」
陽気な声で言うと、男は素早い動きで白輝の剣を持つ右腕を肩から切断しようとした。
今の素早い動きは〈結界〉を警戒しての行動だろう。いくら〈結界〉の発動が速いと言っても俺が相手の動きに反応出来なければ意味がない。
確かにこいつの判断はいいのだが、あいにくこいつの動きにはしっかり反応出来たので〈結界〉を張ってもよかったのだが、折角の実践なのでここは剣ののみで相手をするとしよう。
「よっと」
俺は振り下ろされる剣を白輝の剣を斜めに傾けることで受け流した。その後、
「はあっ」
俺は無防備となった男の体に白輝の剣を横なぎに振った。
「ぐはっ……くそが」
男は防具を破壊された上に五メートルほど後ろに飛ばされた。
このまま追撃を仕掛けようかと思ったが、突然後ろから槍の刺突が来た。
「あっぶな」
剣を受け流した時に構えの態勢を取っていたので来るかなとは思っていたが、それでも槍の刺突は男の剣よりも速かったので結構ギリギリだった。
俺はそれを横に軽く跳んで避けた後、魔法師二人を先に狙うことにした。
「〈結界〉、〈風剣〉×四」
まず〈結界〉をドーム状に張り、逃げられなくしてから左右にいる魔法師に〈風剣〉を二つずつ使った。因みにこれは手足を狙って使った為、死んではいない。ただ、身悶えているだけだ。
すると、ここで膠着状態になった。
「お前……何者だ!」
剣士の男は魔法師二人が何も出来ずに負けたことに驚き、戸惑っていた。そして、そこには僅かな恐怖の感情もある。
「俺はな……ただのDランク冒険者だ」
俺はかっこつけると決め台詞を放った。
それに「いやそんなわけないだろ」という顔をしている二人を無視して厄介な槍術士を仕留めるべく剣士の男に〈氷槍〉×二十を撃って、時間を稼ぎをすると、その間に槍術士の方へ向かった。
「な、ガキのくせに!」
焦った女はここで言ってはいけないことを言ってしまった。
俺はここで静かにキレる。
「俺は十八だ。ガキではないんだよ」
その言葉と共に突き出された槍を左に避けると、右手にある白輝の剣で真っ二つにした。
「うそ……」
女は絶望のあまり座り込んだ。
「じゃ、動くな」
その言葉と共に俺は白輝の剣で女の両足を切り落とした。
その後、後ろの叫び声を無視して残った男の方を見た。
剣士の男は予想通り全ての〈氷槍〉を剣で切ったり受け流したりで防ぎ切った。
この辺の技量は俺よりも上だと認めざるを得ない。たとえクソガキと言っていたとしても…
俺は剣士の男を正面から見据えると、
「じゃ、後はお前は一人だな。十八歳の俺にクソガキと言ったこと、後悔するといい」
と、少しかっこつけながら言った。
ここで「俺を襲ったこと、後悔するといい」と言わないのが俺クオリティーだ。
「い、いや……待て。お前には金を……やる。金貨三……いや、好きなだけ持ってっていいぞ。だから……どうか……見逃してください……」
体を震わせながら言うと、俺に背を向け、剣を落とし、両手を上げて降参のポーズをとった。
「ほら、金は俺の腰にある革袋の中に入っている。好きなだけ取ってくれ……」
「……分かった。二度と手出しするんじゃないぞ」
そう言うと俺はこいつのそばに行くと腰をかがめて革袋に手を出した。その瞬間、
「キン」
という音が再び俺の頭上で響いた。
革袋ごと貰ってから振り返ると、男は短剣を俺に突き付けていた。ただ、さっきと同じように〈結界〉に阻まれ、俺に届くことはなかった。
(ま、そりゃそうだよな)
本当に渡す気なら腰についてる革袋を外して投げればいいものを、わざわざ近づかせて取らせようとした時点でこいつの企みには気づいていた。
「じゃ、絶望を知れ!」
既に絶望の顔になっている男にそう吐き捨てると、両足を切断し、武器は取り上げて〈アイテムボックス〉に入れた。
「後は説教だな」
俺は四人を一箇所に集めると、〈回復〉で傷口を塞いでこのまま失血死することを防いだ。
そして、逃げないようにここを囲うようにして張っていた〈結界〉を解除した。
「で、何でこんなことをしたんだ?」
俺は威圧感を出しながら訪ねた。
四人はビクッと震えた後、口を開いた。
「ちょ、ちょっとした出来心だったんです。その剣が欲しくなってつい……」
「つ、つい手が出ちゃったの。もう次は絶対にしないから!」
と、必死に訴えてきた。
ただ、その言葉は大人が言う言い訳にしてはあまりにも幼稚だ。その言い訳が通用するのは小さい子供まで。
そんなことを言うんだったらせめて嘘でもいいから俺の同情を誘える言葉が欲しかった。
それにこいつらの眼には反省というものが一切なかった。あるのはこの場を切り抜けようとする必死さだけだ。
これらを踏まえた上で俺はこいつらに一言告げた。
「死をもって反省しろ」
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