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第四十三話 好戦的なゴリラさん

(でかっ!?このゴリラ…)


 俺は現れたゴリラの大きさに驚いていた。しかも、このゴリラは動物園で見るほのぼのとした顔ではなく、餌を見つけて近づいてくるライオンのような顔をしている。

 ただ、直ぐに冷静になると、〈鑑定〉を使った。

 ー--------------

 名前 森大猿(フォレストコング) LV.40

 体力 5800/6000

 魔力 0/0

 攻撃 7000

 防護 7200

 俊敏性 2000

 弱点

・土属性

 主に四~十の群れで行動する。

 知能がかなり高い。

 強い力で敵を粉砕する。

 ー--------------

(なるほどな…)


 かなり強いが、前に戦ったストーム・キャットよりは弱いので、あれからさらに強くなった今なら数体いても倒すことは出来そうだ。それに、俺以外にも約三十人の冒険者がここにいるので知能の高さから一体と戦ってる間に別の森大猿(フォレストコング)に襲われるといった心配もなさそうだ。

 白輝の剣で切りかかろうと思っているとザクさんが声を上げた。


「ちっ森大猿(フォレストコング)か…おい!こいつと戦えないやつは後ろに下がれ!まずは魔法が使えるやつが魔法で先制攻撃をしてくれ!」


 ザクさんの指示で俺は白輝の剣で切る案を取り消し、即座に〈氷槍(アイスランス)〉×四十を他も魔法師が詠唱している隙に撃った。

 弱点は土属性と書かれていたが、〈土弾(ロックバレット)〉は今となっては高い威力とは言えない為、それよりも〈氷槍(アイスランス)〉を撃った方が体力を削れると思ったからである。

 こうして飛んでった〈氷槍(アイスランス)〉は森大猿(フォレストコング)五体全てに命中したが、頭や魔石といった致命傷になるところは腕で守っていた為、二体しか倒すことは出来なかった。

 ただ、残り三体も致命傷こそは避けているものの、腕や足に沢山刺さっており、満身創痍だ。


「よ、よし!今だ!!」


 俺が魔法を当てた直後に他の冒険者が一斉に森大猿(フォレストコング)に襲いかかった。

 森大猿(フォレストコング)は怪我のせいでほとんど抵抗できずに倒されてしまった。


「ふぅ…そういえばここには化け物がいるんだったな…」


 ザクさんは俺の方を見ながらホッとしていた。


「で、分配はどうするか…ユートが二体とるのは確定として他の三体は…赤き龍、深炎、水の精霊が一体ずつ取るって感じがいいな。それで問題はないか?」


 ザクさんの公平な分配に反対の意見は全くなかった。

 俺は森大猿(フォレストコング)に近づくと、二体を〈アイテムボックス〉に収納し、元いた場所に戻った。


「ん?死骸はどこ行ったんだ?」


 暗いことで収納する瞬間が見えなかったザクさんは、気が付いたら死骸が消えていることに困惑していた。


「あ、〈アイテムボックス〉に入れておきました」


「ん?ああそうか。そう言えばテントの時にそんなこと言ってたな。色々あって忘れてた。ていうか容量ヤバすぎだろ?」


 ザクさんは〈アイテムボックス〉のことを思い出して納得しつつも、容量に驚き、感心していた。


「いえ、もうパンパンでこれ以上は入りませんよ」


 Dランク昇格試験の時にライザに聞かれたことと同じことを聞かれた俺はその時と同じ言い訳をした。


「そうか…それでもスキルLVはかなり高いな。LV7か?いや、8はありそうだ。それにしてもDランク冒険者でそこまでスキルLVを上げてるやつなんて見たことも聞いたこともないぞ」


「まあ、このスキルは便利なので頑張って上げたんですよ」


「まあ、確かに便利だな。ただ、これからオークの討伐をするからスペースは確保しといたほうがいいと思うぞ」


「あはは、まあ、討伐証明部位くらいなら入るので問題はないです」


 と笑いながら言った。


「まあ、お前は強いし、もしかしたら今回でCランク昇格試験を受けられるようになるかもしれないな」


(あ、そう言えばそうだったな…)


 Cランク冒険者になる為の条件の一つがDランクの魔物を百体倒すということをすっかり忘れていた。でも、それならさっきの森大猿(フォレストコング)でも二体分稼げたし、もしかしたら今回のオークで条件を達成出来るかもしれない。そう思っていたら、


「あ、でもお前はまだDランクだから森大猿(フォレストコング)の討伐証明部位を出したら適正ランク外の依頼は受けられない関係上報酬金は受取れないんだよな」


 と、言われてしまった。まあ、言われてみれば「確かに!」と納得できるのだが、それでもやっぱ心の底で「マジかよ~」と落胆する自分がいる。


「まあ、討伐証明部位は大切に保管しておくといい。そいつの討伐証明部位は右手だ。Bランク冒険者になったら出すことが出来るぞ。それと、素材なら売ることが出来るから〈アイテムボックス〉の心配はしなくていい」


 と、しっかり説明してくれた。まあ、容量については心配する必要はないので、この前グランでCランクの魔物を出して疑われたことを考慮して、素材を出すのはBランク冒険者になってからにしよう。


「分かりました。ありがとうございます」


 俺は礼を言った。そして、ザクさんと話し終わったところで丁度他の人たちも森大猿(フォレストコング)から持てる分だけの素材と討伐証明部位を持ってこっちに戻ってきた。


「あれ?ユート。森大猿(フォレストコング)は?」


 シドさんが森大猿(フォレストコング)の死骸が跡形もなく消えていることに疑問を投げかけた。


「ああ、〈アイテムボックス〉に入れたんだ。おかげでもうパンパンだけどな」


森大猿(フォレストコング)が二体も入るなんて中々の容量だな…」


「あはは…確かにそうですね」


「よし。雑談はそこまで!先に進むぞ!」


 こうして森大猿(フォレストコング)を討伐した俺たちは再び暗い森の中を歩き始めた。

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