第三十九話 煽り猿どもに制裁を
マリノの森はグランの森よりも木が生い茂っており、日があまり地面まで届かない。そんな森の中から「キキキッ」「キャキャ」「グルゥ」という鳴き声が聞こえてくるからかなり不気味だ。
「鳴き声は知らんけど…あ、あいつかな?」
二十メートルほど先にある木の上に三匹の猿がいた。体長百五十センチメートルくらいで、茶色に薄く緑がかった体毛をしている。
一匹は片手で木にぶら下がっており、残り二匹は木の上で追いかけっこをしていた。動物園にいる猿のような仕草でかなり癒される。
「この光景は平和だなぁ…」
出来れば殺したくはないのだが、恐らくこいつが森猿だろう。ただ、万が一ってこともあるので一応〈鑑定〉をしてみた。
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名前 森猿 LV.25
体力 2000/2000
魔力 0/0
攻撃 1800
防護 2300
俊敏性 3000
弱点
・土属性
主に五から十匹の群れで行動する。
知能がかなり高い。
木と木の間を飛び回りながら敵を翻弄する。
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「やっぱり森猿か…」
この光景をぶち壊すのはかなり心苦しいが、覚悟を決めてゆっくりと近づいた。すると…
「キャ?キャキャキャ!」
大体十メートルほどの距離で気づかれてしまった。
俺の接近に気が付いた森猿三匹は逃げたり突っ込んできたりするのではなく、木から木へと跳び移りながら俺の周りをぐるぐると回り始めた。しかも、ちょくちょく止まっては、「キキキ(笑)」て感じで俺のことを煽ってくる。正直言ってめちゃくちゃムカつく。
「ははは…そんな悪い子にはお仕置きしなきゃいけないねぇ……」
さっきまでの心苦しさはすっかりなくなった。今は殺意しか湧いてこない。
俺は額に青筋を浮かべながら言うと、〈アイテムボックス〉から白輝の剣を取り出し、〈身体強化〉、〈風強化〉、〈剣術〉を使うと全速力で煽り猿どものいる木の上へ跳び込んだ。
「後悔しやがれこの野郎!!」
俺は怒りを込めて森猿三匹の首をまとめて切り落とした。森猿は何が起きたのかも分からずに、煽り顔のまま死んでいった。なんというか…凄い哀れだ。
「ここまで怒ることはあんまりないよな~」
怒ったことなら何度もあるが、即殺害なんてのは今までになかった。
「で、こいつらはしっぽだったな」
俺は地面に落っこちた森猿のしっぽを白輝の剣で切り取ると、〈アイテムボックス〉に入れた。ついでに魔石も取り出しておいた。
その後、森猿の死骸を燃やしていると、またもや「キキキッ」という鳴き声がした。振り返ると、二十メートルほどの距離にある木の上から五匹の森猿が敵意を持った目で俺のことを睨みつけてくる。
「さっきのやつらの仲間ってことか?」
〈鑑定〉に「主に五から十匹の群れで行動する」と書かれていたので間違いないだろう。
(それにしても目の前で仲間が焼かれるって最悪の気分だよな…)
煽るよりも酷いことをしている自覚はある。だが、依頼なので仕方ない。それに、依頼に出ているということは、人に対して悪影響をもたらしているということは確定だ。
畑の作物を食い荒らしているのか、あるいは人を煽り散らかしているのか…まあ、多分両方だろう。
「じゃ、こいつらもやるか…」
俺は再度〈身体強化〉と〈剣術〉を使うと、森猿のいる木の上へ跳び込んだ。
「はあああっ」
俺は森猿の群れを横なぎに切ってまとめて葬った…はずなのだが、
「キキャキャ」
手前にいた二匹は反応は出来たようだが、逃げようとした時には時すでに遅し。首を切られていた。ただ、奥の三匹は俺が手前のニ匹を切る僅かな時間で後ろに跳びずさっていた為、軽い切り傷が付いただけだった。
「え!?まじかよ…」
避けられるのは完全に予想外だった。
しかし、慌てて跳びずさった為か、三匹とも木から落ちてしまった。猿も木から落ちるとはまさしくこういうことを言うのだろう。
木から落ちた森猿は一目散に地面の上を走って逃げていく。ただ、木の上ではないので思ったよりも遅い。
(何で木の上に登らないんだ?)
まあ、多分木に登ることを忘れるくらい焦っているのだろう。俺は木から跳び降りると、逃げる森猿に一瞬で近づき、首めがけて白輝の剣を振った。
「キャギャア!!」
という断末魔と共に三匹は首を切られて息絶えた。
「ふぅ…これで終わりかな?」
森猿はいつもグランで倒していた魔物のようにはいかないようだ。強さもそうだが煽られまくったら精神的に結構やばい……
「俺ってここまで煽り耐性低くなかった気がするんだけどなあ…」
自分の煽り耐性の低下に疑問を抱きつつも俺は五匹の森猿からしっぽと魔石を回収し、死骸は燃やし、〈地形操作〉で作った穴に埋めた。この魔法は便利だ。埋めるときに咄嗟に「使えるかな?」と思って使ってみたら一瞬で穴が出来たのだ。
「強さ…と言うよりは厄介さもそうだが時間的にもそんなに沢山は殺れないな……」
ただ、討伐の報酬はグランで討伐してきた魔物と比べると結構高いので稼ぎは普段よりも高くなると思う。
「じゃ、他のやつらは煽る暇もなく、考えさせる暇も与えす、一瞬で殺るとするか…」
これ以上イラつかない為にも俺はそう決意してから森の中を再び走りだした。
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