第三十八話 ピザパン最高!!
。「ふぁ~…朝か……」
夜中に魔物が来ると思って早めに寝たのに魔物が全く来なかったから無駄に長く寝てしまった。まあ、おかげで昨日の疲れが吹き飛んだから結果オーライってことにしておこう。
テントの外に出た俺は目をこすりながらテントを片付けた。
このテントは元Sランク冒険者のウォルフさんが使っていたものなのでかなり便利なものになっている。その為、片付けるのも凄いラクチンで、テントの上にある黒ボタンを押しながらテントを軽く潰すようにすると、「シュバッ」という音を立ててコンパクトに折りたたまれた。あとはこれを袋の中に入れ、〈アイテムボックス〉に入れれば片付けはお終いだ。
〈土壁〉を横向きに使って作った床は今後ここに来る人の為、残しておくことにした。
「じゃああとは新しく覚えた魔法の試し打ちをするとしますか」
まずは〈火壁〉。試しに使ってみると、任意の場所に三メートルほどの炎の壁が出来上がった。炎なので近づきにくいし、実体ではないので剣では魔力を流さないと切ることは出来なかった。ただ、魔法は威力こそ弱まるものの普通に貫通してしまう。
次に〈氷槍〉。前に神の涙の連中が俺に使ってきた魔法で、個人的に使ってみたいと思っていた魔法だ。氷の槍、と言うよりは大きめのツララみたいな感じだが、それを沢山飛ばす光景はかっこいいなと思った。試しに使ってみると、目の前から氷の槍が一本出て来て、森の方へ木に穴をあけながら一直線に飛んでいった。
次に〈風壁〉。試しに使ってみると、任意の場所に風圧で出来た壁が出来上がった。風の壁は中心に向けて強い風圧がかかっており、石を「ほいっ」と投げてみると、〈風壁〉に当たったとたんに中心に吸い込まれ、粉々になった。ただ、これは〈火球〉でも威力は弱まるが貫通し、〈火矢〉なら五発で破壊出来てしまった。
そして〈地面操作〉。試しに使ってみると、半径二メートルの円の範囲が一メートルほど沈んだ。うっかり道に使ってしまったので、次は上がれと思いながら使ってみると、その場所が一メートル上がって元に戻った。使い道がよく分からないが、魔物と戦っている最中に使って魔物を落としたら面白そうだ。
最後に〈解毒〉。これは毒を消す魔法のようだが今は試しようがないので今後使う機会がない方がいいが、もしあったら使うことにしよう。
「じゃ、朝食を食べてから出発するか~」
俺は〈アイテムボックス〉からオークの串焼きを取り出して食べた。
「流石に飽きてくるな…」
ただ、手軽に買える場所で自分が知っているのはこれしかない。
マリノには何かいい店があるのだろうか?行ったら確認してみよう。
朝食を食べ、水を一杯飲んだ俺は今日中にマリノへ行くべく〈身体強化〉を使って走り出した。
「お、見えてきたな」
前方に街の出入り口である門が見えてきた。俺は冒険者カードを提示してマリノに入った。
「思ったより早く着いたな…」
昼食を食べてから一時間弱で到着した。これは多分朝出発するのが早かったことと、道中魔物と戦わなかったことが原因だろう。
「取りあえず肉以外の飯を調達しないとな…」
この世界で食べてきた料理は大体が肉料理だ。肉は好きなのだが、やはり毎日食べ続けていると流石に飽きてしまう。そこで俺は肉以外のお持ち帰り出来る料理を探す為に街の中を散策した。
十五分ほど歩いたところでパン屋さんを見つけた。パン屋には前の世界ほど種類は多くないが、それでも基本的なものはそろっていた。
その中で俺が買ったのはロールパンに塩、バター、肉の脂で味付けされた塩パンと、トーストに溶けたチーズ、ソーセージ、トマトが乗っているピザパンだ。
このパン屋さんにあるパンの中で、ピザパンは異質な感じがしたので店員さんに聞いてみたら、「二代目勇者様が考案したパンですよ」を言われた。それを聞いた時、「何で丸いピザではなく、トーストを使ったピザパンなんだ?」と思った。もしかしてピザ生地の作り方が分からなかったのだろうか?真相は謎のままである。
あと、俺としてはカレーパンも作ってほしいところだ。しかし、俺は料理が苦手だし、そもそもカレーは色々なスパイスを混ぜて作ると聞いたことがあるから多分料理人でもない限り作るのは無理だと思う。まあ、人生長いし料理人が来てくれたら頼んでみるとしよう。
因みに値段は塩パンが一個百セルで、ピザパンが一個五百セルだ。俺はそれぞれ二十個ずつ買って、〈アイテムボックス〉に入れた。買った後の店員さんが満面の笑みだったのが言うまでもない。
俺は早速ピザパンを食べてみた。
「凄ぇ…まじでピザパンじゃん」
カリカリに焼かれたパンに溶けたチーズ。しかもチーズは焼き立ての為、ちゃんと伸びる。その上に乗るトマトとソーセージもめちゃ美味い。
俺はそれを五分ほどで食べ終わると、取りあえず冒険者ギルドに行ってみることにした。冒険者ギルドはここに来る途中で通ったので場所は分かっている。その為道に迷うことはなかった。
「依頼は…まあ、予想通りだな」
昼過ぎということもあり、よさそうな依頼は既に取られた後だった。
常設の方で、俺の知らない魔物の討伐依頼があった。
「え~と…森猿の討伐、一匹四千五百セル、討伐証明部位しっぽ、Dランク冒険者以上、マリノの森全域…これをやってみるか」
やる依頼を決めた俺は早速冒険者ギルドを出て、マリノの外へ向かった。
マリノは西側が草原、東側は街から百メートルほど離れた場所から森が広がっている。その為、グランのように街と森が隣接しているというわけではない。
森はそこしかないが、念の為、「マリノの森はこの街の東側に広がっている森ですか?」と街の門の門番をしている衛兵に聞いてみたら、「ん?そうだよ~」と気怠げだが答えてくれた。
まあ、門の前でずっといるって見た目に似合わずかなり大変そうなことなので衛兵の気持ちはよく分かる。俺もずっとその場に立ってろと言われても多分一時間くらいしか持たないだろう。
そんなことを思いながら俺はマリノの森へ向かった。
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・僕もじっとしているのは苦手なんですよ…卒業式の時にずっと座っているのとかもう地獄でした。皆さんもそういう経験はありませんか?




