第十四話 LV上げは一苦労
武器・防具店にある時計を見てみると、今は三時丁度を指していた。おやつの時間と言いたいところだが、あいにく俺はこの世界のお菓子を知らないし、昼食を遅めに食べたので、夕食の為にも今何か食べるのはやめといたほうがいいだろう。
「さてと…暇だし森でLV上げ兼金稼ぎをしてくるとするか」
俺はゲームを何周かするのだが、そのうちの一回は必ずLVをあほみたいに上げて無双するという行動をとっていた。それを今、この世界でもやってやろうと思った。いや、LVを上げる理由の八割は転移の魔法を手に入れるためだ。最近は忘れてしまっているけど……
俺はLVを上げる為に森の中を駆け回った。
常に〈身体強化〉を使い、ミスリルの剣を持ち、魔物を見つけたら有無を言わさず切り、死骸は即座に〈アイテムボックス〉にしまうという作業を夕方になるまで繰り返した。
「こうしてみるとこの森にはスライムが一番多くて次点でレッドゴブリン、森狼といった感じだな…」
と言うかそれ以外の魔物を全く見ない。どうやらポイズン・スネークやキングスライムはかなりレアな魔物のようだ。この森には他の魔物はいないのだろうか……
(そういえば夜になるとやばいってミリが言ってたな…)
初めてミリに会った時にミリが言ってたことを思い出した。
「夜ってこの森に入れるのかな?」
夜になるとやばくなるこの森の門にいる衛兵が入ることを許可してくれるのか疑問に思った。ランクの高い冒険者なら入れるとかがあるかもなので、後で受付嬢に聞いておこう。と言うか今更だが受付にいる人はウォルフさんを除くと全員女性だ。
(何かそういう決まりでもあるのかな?)
そんな疑問を抱きつつ、俺は街へ向かった。
(てか結構魔物倒したんだしLVはかなり上がっていると思うんだけどな……)
正確に数えていたわけではないが、百体くらいは倒した気がする。なので俺はそれなりのLVアップを期待していたのだが……
「えーと…LV31か……全然上がってねえな」
百体倒してこれはかなりしょっぱい結果だが、この世界に来た日にLVはだんだん上がりにくくなるということを理解ししていたので、何も文句は言わず、代わりにため息をついた。
「LV上げしやすい方法とかないのかな?」
受付嬢に聞くことがまた一つ増えた俺は暫く歩いてから日が暮れるギリギリに街に入った。おかげで門にいる衛兵から「遅いぞ~!」と言われてしまった。
軽く怒られながらも街に入った俺は真っ先に冒険者ギルドへ向かった。
「はい。レッドゴブリン五十匹、森狼四十八匹なので、報酬金は十四万六千セルになります」
(九十八体…凄いショックだ……)
ギリギリ百体いかなかったことにその場で膝をついてしまいそうになったが、なんとか持ちこたえて報酬金をもらった。
「あの…一つ聞きたいのですがもしかして近頃話題になっている冒険者のユートさんですか?」
と、受付嬢から突然こんなことを聞かれた。
「ち、近頃話題って何ですか?」
何か話題になるようなことをしたかと言われると……あ、Bランク冒険者三人を大勢の前で殴り飛ばすという中々のことをしでかしたんだった……
「冒険者の間ではそこまで広まってはないのですが、冒険者ギルドの職員の間では凄い話題になっているんですよ。試験では試験官を魔法で倒し、受付で絡んできた冒険者を殴り飛ばし、依頼では大量の魔物を討伐してくるって感じですね。それでまだ十代なので受付嬢の間でも誰が最初に突撃するのかって感じになっているんですよ」
受付嬢は俺が話題になっている要因を熱弁してくれた。突撃にしっかりルビが付いているのが分かったがあえてスルーしておくことにした。
「そ、そうなのか…てかなんか俺のことを疑うやつとかいなかったのか?この前俺に絡んできたBランク冒険者みたいに…」
「魔物の討伐に関しては試験のことを考慮してもみんな半信半疑だったんですよ。ただ、Bランク冒険者フルボッコ事件と支部長の言葉で今では誰も疑ってないので安心してください」
「そうか…まあ、疑われてないならよかった…」
自分の知らないところでそんなことがあったなんてちょっと驚きだ。
あとは俺からも聞きたいことを聞いておこう。
「質問なんだがグランの森って夜はどんな感じなんだ?冒険者から危険って言われたんだが」
「はい。確かにあの森は夜になると夜行性の高ランクの魔物が活動を始めるので凄い危険です。冒険者の場合、パーティーならAランク以上、ソロならSランクでないとそもそも入ることすら許されていません」
危険とは聞いていたがまさかそこまでとは思っていなかった。いったいどんな魔物が出るのだろうか…ちょっと気になるがこっそり出るわけにも行かないし、命の危険を冒してまで知りたいことではないのでその件は頭の片隅にでも置いておくことにした。
「そうなのか…わかった。あと、俺は今LV上げに苦戦しているのだがLVを効率よく上げる方法とかないのか?」
「そうですね…それに関してはランクの高い魔物を討伐するのが普通の方法ですね。レッドゴブリンや森狼を五十体討伐するのとオークを一体討伐する時に上がるLVはほぼ同じと言われていますからね。苦労する気持ちはよく分かります」
(まじかよ……)
確かに俺が今倒している魔物があまり強くないことは分かっていたが、まさかこれほどとは思わなかった。
「というかそもそもこの森には低ランクと高ランクの魔物はそれぞれ昼と夜に出現するのですが中ランクの魔物が全くと言っていいほど出現しませんからLV上げには適していないんですよね」
「そうなのか…そういえばさっき普通の方法とか言ってたけどそれって普通じゃない方法もあるってことなのか?」
普通じゃない方法って聞くと不正のニ文字が頭に浮かんでくるがはたしてどうなのだろうか。
「よ、よく覚えてますね。まあ、それはお金で高ランク冒険者を雇って高ランクの魔物を死ぬ寸前まで攻撃して、最後の一撃だけもらうっていう方法ですね。よく貴族がやっている手段でお金がとんでもなくかかるのでおすすめ出来ないんですよね」
何と言うか…言われてみればなるほどと思える方法だ。まあ、そういう方法はあまり好きにはなれないのでもしお金を大量に持っていたとしてもやらないだろう。
取りあえず分かったことはランク上げと、他の街に行って中ランクの魔物を討伐するといったことだろう。
「分かった。色々ありがとう」
俺は一言礼を言うと、冒険者ギルドを後にした。
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