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第十二話 Dランク冒険者になる為に

 ユートのいる国。その国の王都にある城の最上階の部屋にて……


「……国王陛下。勇者召喚の宝玉の色が黒くなってきました。と言うことは……」


 杖をつく白髪白髭の老人が恐る恐る口を開いた。


「分かった……魔大陸に魔王が現れるのだろう……」


 高級そうな服に身を包んだ金髪の初老の男性が言葉を遮って答えた。


「はい。宝玉の色の濃さを見るにあと一年程の猶予はあります」


「そうか……前回は百十九年前だったな……前回から百年以上たってるから召喚は可能…か……」


「はい。勇者に少しでも強くなってもらう為にも早めの召喚が望ましいです」


「そうだな…至急国内外から優秀な魔法師を集めてくれ。今すぐにでも召喚したい」


「承知いたしました」



















「依頼を終わらせてきました」


 俺は依頼票を手渡しながら言った。


「かしこまりました。では、回復草をこの木箱の中に入れてください」


 俺は〈アイテムボックス〉から回復草を一本ずつ取り出して木箱に入れた。一気にどさっと入れてもいいのだが、そうすると回復草が傷んでしまうかもしれないと思ったからだ。


「はい。全て回復草ですね。では、こちら報酬金も十万セルです」


「ありがとう。ふう、この依頼は大変だったな…」


「でもユートさんは僅か数時間で終わらせているので異常と言ってもいいくらいの速さです」


「ん?そうなのか?」


「はい。回復草はあちこちに散らばっているので探すのがかなり大変なんですよ。だから普通は三日ほどかけて終わらせるような依頼なんですよ」


 よくよく考えてみれば、俺は〈身体強化〉と〈鑑定〉と言う魔法を使って探したが、五十本探すのに二時間もかかった。それをどちらも使わずにやったらかなりの時間がかかるのは理解できた。


「そうなんですか…あと、あと、その依頼をやるついでに常設の依頼もやったのでお願いします」


 そう言うと、俺は〈アイテムボックス〉から森狼(フォレストウルフ)とレッドゴブリンの討伐証明部位を取り出し、受付に並べた。


「え~と……レッドゴブリンが……二十五匹……森狼(フォレストウルフ)が十頭なので報酬金は四万五千セルになります」


「ああ、ありがとう」


「あと、これでDランク冒険者になる為の条件の一つ、依頼を百回完了させるというのが達成されました。それにしてもこんな短期間で依頼百回を完了させる人は中々いませんよ」


「ん?このペースで終わらせた人もいるってことなのか?」


 俺は自分でもかなりの速さで終わらせたと思っているのでちょっと意外だった。


「はい。とはいっても強い騎士が冒険者になった時に何度かあったくらいですね」


 なるほど…元々強い人が冒険者になったら早いのも頷ける。


「…分かった。これで俺は試験を受けることが出来るってことだな」


「はい。Dランク冒険者になる為の試験は商人の護衛ですね」


 俺はてっきり試験官と戦うとか、ランク相応の魔物を倒してこいとか言われるのかと思っていたから完全に予想外だ。


「護衛か…そんな依頼もあるのか」


「はい。護衛の依頼はかなり多い依頼の一つなんですよ。それをやるにはただ強いというだけではだめなので注意が必要です」


「なるほどな……分かった。ところでその試験はいつできるんだ?」


「はい。試験としてやる護衛の依頼はこれです」


 そう言うと、受付嬢は手元にある書類から一枚の紙を取り出して、俺の前に広げた。


「え~と…グランからカルトリまでの護衛、人数五人、Dランク冒険者以上、(サラン商会)か…俺ってEランクだけどいいのか?」


 これは商人の命がかかっているものなので、Eランク冒険者で、護衛の経験ゼロの俺が参加するなんて言ったら依頼主の方が断ってきそうだ…


「それに関しては大丈夫です。今回は元Aランク冒険者の試験官が一人つきますからね。あとは、ユートさん以外にも三人が試験を受けます」


 元Aランク冒険者というとシンさんを思い浮かべる。シンさんとは冒険者登録の試験の時に戦ったがあの時は手加減をしてくれていたことと、不意をつけてようやく魔法を一発あてられただけなので、普通に考えれば今の俺ではどう足掻こうと勝つことが出来ない相手だ。


「そうか…それなら大丈夫そうだな。それで、その試験はいつやるのですか?」


「この試験は明後日やる予定になっているので準備しておいてください」


 俺はその言葉に頷くと冒険者カードを受取って、冒険者ギルドの外に出た。


「さてと…もう昼過ぎだしお腹がすいてきたな」


 何か食べたいなと思っていると、近くから焼いた肉のいい匂いがしてきた。

 匂いがする方に視線を向けてみると、一台の屋台があった。


「お、ちょうどいい所にあるな。これは食べるしかないだろ」


 俺は屋台に近づいた。すると、屋台の店主のおじさんが、


「ん?客か。オークの串焼き買ってくか?一本二百セルだ」


 と、親しげに話しかけてくれた。


「じゃあ、四本ください」


 と言うと、〈アイテムボックス〉から銅貨八枚を取り出して、おじさんに手渡した。


「まいど」


 おじさんは串焼き四本を俺に手渡してくれた。


「ありがとうございます」


 俺は礼を言うと、さっそく一口食べた。


「お、結構美味いな…」


 タレと肉がマッチしていて、かなり美味しい。更に、屋台なのでかなり手軽に買えるので今後も屋台は活用していこう。


「は~食った食った…」


 俺はあっという間に四本を平らげた。


「あとは魔石を売ってくるか…あとポイズン・スネークについても聞いてこよう」


 俺はそうつぶやくと、冒険者ギルドの隣にある素材解体所へ向かった。

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