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第十七話 ディンの嘆き

「人の動きをよく見てね……」


 シャオニンはその言葉を残して息絶えた。


「くそみたいな人間だったけど、完全な悪と言う訳でもなさそうだな」


 俺は息絶えたシャオニンを見ながら、そう言った。


「まあ、こいつは神の涙の中でも相当偉い奴みたいだからな。後でウォルフさんに見てもらう為に死体は回収しとくか」


 俺はそう言うと、シャオニンの両断されたところを〈再生(リバース)〉でくっつけてから、〈アイテムボックス〉に入れた。


「で、こいつには悪いがディンは……ちっ 流石に無理か」


 俺は気配を探ったが、ここからではあいつの気配を探ることは出来なかった。更に、どの方向に逃げたのかも分からない為完全にお手上げだ。


「はぁ……シャオニンにしてやられたって訳か」


 俺はまた逃げられたことに落ち込みつつも、残った奴らを〈重力操作(グラビティ―)〉で潰してから、〈空間操作〉でエルフの里に転移した。


「よっと……あ、クリス!」


 俺は屋敷の前に転移した。すると、そこにいたのはノアを抱っこしたクリスと、クリスの家族だった。

 みんなソワソワしながら、俺が走り去った方向を見ていた。

 そんなみんなの前にいきなり俺が現れた為、プチドッキリみたいな感じになった。


「うわっ! びっくりした」


「おお、帰ってきたか」


「え、すごっ」


 いきなり俺が現れたことに、みんな驚いていた。そんなみんなの様子に、俺は笑みを浮かべた。すると、ノアをディーネさんに渡したクリスが、俺に抱き着いた。


「お帰り」


 クリスは一言そう言った。


「ああ、ただいま」


 俺はクリスの言葉にそう返すと、腕をクリスの背中に回した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ディン視点


「……そ、そんな」


 あそこから三キロ走ったところで、俺は思わず足を止めた。

 手元には、砕けた生存確認用に魔道具があった。この魔道具に登録しているのはシャオニン。つまりは――そう言うことだ。


「くっ……だがっ!」


 ここで足を止めてはいけない。走らないと、あいつに追い付かれるかもしれない。そうなったら、あの世でシャオニンに顔向けが出来ない。

 俺は砕けた生存確認用の魔道具をしまうと、再び走り出した。




「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」


 俺は息を切らしながらも、何とか古代遺跡の転移魔法陣に到着した。

 俺はその転移魔法陣の上に乗ると、魔力を流して転移した。


「よし。て、はあっ!」


 転移先の古代遺跡には、すでに異変を察知した王国の騎士どもがいた。相変わらず厄介な連中だ。まあ、先手を取ることが出来たのは運がいい。これなら何とかなりそうだ。


「な!? 侵入者がい――がはっ」


「ちょっと黙れ」


 叫ばれる前に切りたかったが……まあ、仕方ない。

 周囲を見ると、明かりの魔道具を持ったやつらが、俺に剣を向けてきた。


「やるか。〈気配隠蔽〉」


 俺は明かりが届かない遺跡にある建物の陰に隠れると、〈気配隠蔽〉を使って自分の気配を消した。

 夜の闇で姿を消しつつ、スキルで気配を消すことで、奴らは俺を感知することすら出来ていない。

 俺は、この集団を大きく迂回するように移動して、背後を取った。


「そこにいるのは分かっている。さっさと出て――ぐはっ」


「な!? 隊長! 大丈夫で――ぐはっ」


 最初にこの部隊を率いる者を殺して統率を乱すと、残りのやつらに襲い掛かった。。傷も、〈水回復(ヒール)〉と〈回復速度上昇〉を使えば直ぐに治る。


「おい! 隊列を乱すな! 俺に続――がはっ」


 リーダーになりそうな人も、さっさと潰す。


「な、ここか! はあっ!――がはっ」


 勘のいいやつもさっさと潰す。

 ……それにしてもだ。


「ちっ 何故死んだんだ。シャオニン」


 あいつは誰よりも剣の高みにいた。俺の目標の中には、あいつと本気で戦って、勝利するというものもあった。


「死ぬならせめて、俺に負けてからにしろよっ!」


 俺はそう叫ぶと剣を振り下ろして、目の前にいた二人を殺した。

 これで、ここにいた騎士三十人は全滅した。


「……帰るか」


 俺はそう呟くと、トリスの森にある隠れ家に向かって走り出した。

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