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第十一話 救出成功!

 ――ドゴオオオン……


 思わず耳を塞ぎたくなるほどの大きな破壊音と共に、俺は一つの部屋の中に下り立った。

 その部屋には左側に牢屋があり、その中に三人のエルフが捕らわれていた。そそいて、右側には九人のLV.40代の冒険者らしき男と、一人のLV.52の黒いローブ姿の男がいた。

 冒険者らしき男の中には、女性のエルフに手を出している人もいた。


「死ね。〈重力操作(グラビティ―)〉!」


 俺は突然天井が崩れ落ちたことで、唖然としている十人の男を〈重力操作(グラビティ―)〉で潰した。


「これで制圧完了だな」


 俺はそう呟くと、男が着ていた黒いローブを手に取った。


「このローブ。神の涙の連中が着ていたやつと同じものだな」


 赤い雫のマークが、描かれているのをみて、俺はそう判断した。


「じゃあ……一先ずこれを着てくれ」


 俺は不埒者どもに襲われていた女性に、黒いローブを手渡した。もちろん目を背けながら渡した。


「は、はい……ありがとうございます」


 エルフの女性は、恥ずかしがるような声でお礼を言うと、黒いローブを取った。


「ふぅ……あとはこっちだな」


 俺はそう言うと牢屋の方に向かった。


「今助けるぞ。はあっ!」


 俺は世界樹聖剣を横なぎに振った。すると、目の前にあった三つの牢屋の檻は、根元からぽきっと折れた。


「よし、大丈夫か?」


 俺は三人の元に行くと、彼らを拘束していた縄をほどいた。


「ああ、ありがとう」


「助かったよ」


「ありがとう」


 三人は、礼儀正しくお礼を言った。


「まあ、無事でよかったよ。みんな心配してるし、早く帰るぞ」


 俺は早く帰る為に、〈空間操作(スペーショナル)〉を使うことにした。秘密にしといた方がいい魔法だが、他種族との交流が少ないエルフなら、大丈夫だと思い、使うことにした。


「では、〈空間操作(スペーショナル)〉!」


 俺はみんなを一か所に集めると、まとめてエルフの里の入り口に転移した。


「な!? ここは!?」


「ど、どういうことだ!?」


 みんな、一瞬でエルフの里に戻ってきたことに、戸惑っているようだった。


「今の移動方法は誰にも言わないでくれ。頼むぞ」


 俺は、誰にも言わないよう、忠告をした。


「「「「「分かりました。絶対に言いません」」」」


 四人とも、絶対に言わないと約束してくれた。

 俺の友達とかに、「絶対に言うなよ」と言った次の日には、クラス全員に広まってしまうが、彼らなら大丈夫だろう。彼ら真剣な、嘘偽りのない瞳が、それを証明していた。


(これなら、家族とかの、本当に親しい人にも言わなそうだなぁ……)


 ちゃんと約束を守ってくれる友達が欲しかったなぁ……と思いつつも、俺はエルフの里の方を向いた。


「じゃあ、報告に行くか」


 俺は連れて帰ってきたことを報告する為に、里の中にある屋敷に向かうことにした。





「……ん? 何が起きたんだ!?」


 里の南西部で、激しい戦闘が起きた跡が見えた。そして、そこにはクリス含む、クリスの家族が勢揃いしていた。


「おい! 何があったんだ!」


 俺は〈アイテムボックス〉に世界樹聖剣を入れると、みんなの元に駆け寄った。


「あ、ユート……ごめんなさい……」


 クリスは、俺を見るなり謝った。そして、泣き出してしまった。


「だ、大丈夫か?」


 俺はクリスを落ち着かせる為に、クリスを軽く抱きしめた。俺との身長差がほとんどないせいで、カッコつかないが、まあ、仕方がないだろう。

 そう思っていると、トリエストさんが近づいてきた。


「あ、トリエストさん。攫われていたエルフ四名は無事、救助しました。それで、一体何が起きたのですか? かなりの魔法が放たれたようですけど」


 広範囲にわたって地面はえぐれており、中には五メートルほども、えぐれている場所があった。


「ああ。ついさっきのことだ。この里に、LV.81の人族と、LV.72の人族。そして、LV.40代の人族十人が襲撃してきたんだ。私たちは本気で戦ったのだが、逃げられてしまった」


 トリエストさんはそう言うと、俯いてしまった。


「え? でも追い払うことが出来たのなら、いいんじゃ……あ、もしかして誰かが死んでしまったんですか?」


「いや、怪我人はいるが、みんな〈回復(ヒール)〉で治すことが出来る傷だった」


「それは良かった……でもだとすれば……まさか、また誰かが攫われたんですか?」


 俺がそう聞くと、今度はクリスが涙目になりながら口を開いた。


「あのね……実は、ノアちゃんが連れ去られたの……」

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